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【前編】もはやバグをゼロにはできない,システムは止まる前提でBCPを

「就業者が84万人の一大産業にもかかわらず、産業になりきっていない。だから学生の人気も落ちている」。JISAの浜口友一会長は危機感を抱く。業界最大手のNTTデータがJISA会長を輩出するのは初めてであり、浜口氏への期待は大きい。2007年は大規模なシステム障害が相次いだが、「バグをゼロにするのはもはや不可能。BCP対応が重要」と訴える。

情報サービス産業が現状抱えている課題をどう認識されていますか。

 ITシステムはもはや社会インフラになっており、それを支えているのが情報サービス産業です。経済産業省の特サビ(特定サービス産業実態調査)によると84万人が就業する大きな産業になっています。にもかかわらず、例えば鉄鋼や電力などと比べて、産業になりきっていない点が大きな問題だと思っています。グローバルにも活躍できていません。

 事業構造が、エンジニアリングという形にも、映画や音楽のようなクリエイティブの形にもなっていなくて、やや中途半端なのが要因かもしれません。

 製造業で立国してきた日本では、製造業的な考え方が染みついています。IT業界は最初ハードの製造から始まって、ソフトウエアは付属品という位置づけだった。その後、ソフトの価値が次第に認められるようになってきたものの、まだ価値が低く見られています。その理由は形が見えないところにある。ソフトは融通が利いて、簡単に変えられると勘違いされているところが依然としてあります。

過剰なテストはコスト増になる

確かに、社会インフラを支える重要な仕事にもかかわらず、見合う価値を認められていない面があります。一方で、システムダウンがあると、真っ先に責任を追及されます。

浜口 友一(はまぐち・ともかず)氏
写真:佐々木 辰夫

 業界がユーザーのリテラシーを高めるための活動を怠り、その結果として、システムの信頼性確保の難しさを理解してもらえていないことがあると思います。私がこう言うと誤解を招くかもしれませんが、今のシステムというのは、大規模になり過ぎていて、バグをゼロにするのは不可能です。

 だからこそ品質管理を徹底してテストを重ねることで、できるだけ信頼性を上げていくわけですが、テストを増やせばそれだけコストは高くなります。過剰なまでにテストを増やすよりは、システムの性格によって分類し、それに対応して信頼性を保証するようなやり方に変えていく必要があるでしょう。


システムの信頼性に対する要求が日本は厳しすぎるのでしょうか。

 それは言えるでしょうね。欧米では、システムは止まるものだということが常識になっています。止まるものという前提に立てば、次に打つ手立ては、BCP(事業継続計画)をしっかりやろうということになります。システムを2重化するなど、何かが起きたときにできるだけ被害を最小限にとどめるように設計しておく。それでも止まることがあるので、事業をどう継続していくのかを決めておく。例えば、全銀協のバックアップ・プランには電話やファクシミリなどの手段も入っています。

 最近のシステムは、データベースを統合し、効率化しているが、これは非常に怖い面があります。例えば、予約と料金計算、設備管理、運行管理が全部つながっていると便利ですが、どこかが止まると全体に影響が波及します。だから、通常は連動していますが、どこかが止まれば、連鎖を断ち切るような設計を考えておかなければなりません。必ず止まるという前提で考えれば、そうした対策が打てるはずです。

ブラックボックス化が進んでいる

ECサイトやネット予約のシステムは負荷の予測が難しくなっています。今年、小誌の「動かないコンピュータ」で取り上げた事例でも、過負荷によってダウンしたケースがいくつかありました。

 インターネットを利用するシステムでは、処理量が設計値を超えてしまうようなことが起こりやすくなっています。また、オープン化によって、大規模なシステムになると、トランザクション処理やフロー制御、データベースなどのパッケージ・ソフトを10種類くらい使うこともざらです。それぞれのソフト・ベンダーが違うし、中身がますますブラックボックス化しています。何か起きたときに、システム・インテグレータとしても原因を特定して対応することが難しくなっているのは事実です。

 こうなってくると、システム障害を避けるにはテストを入念にやるしかないのでしょうけど、先ほどお話ししたようにそれはコストとして跳ね返ってきます。だからこそ、BCPが重要だということを、JISAとしてユーザーにもっと訴えかけていく必要があると考えています。

>>後編 

情報サービス産業協会(JISA)会長 NTTデータ 取締役相談役
浜口 友一(はまぐち・ともかず)氏
1967年3月京都大学工学部卒業、同年4月に日本電信電話公社入社。88年にNTTデータ通信(現NTTデータ)に移る。購買部長、取締役・経営企画部長、公共システム事業本部長、常務取締役、副社長を経て、2003年6月に社長に就任。07年5月に情報サービス産業協会(JISA)会長。同年6月からNTTデータ取締役相談役。1944年生まれの63歳。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2007年12月7日)