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【前編】メタル回線でサービス展開に限界,光と一体だから可能性が広がる

NGN(次世代ネットワーク)の商用化を目前に控えたNTT。ただ,既存サービスとの違いや今後の展開など,NGNにはまだ不透明な部分が多い。今後どのような点をアピールしてユーザーの獲得を進めていくのだろうか。2007年11月に光回線の契約目標を下方修正した意図,2010年に向けたグループの在り方を含め,今後の戦略を三浦社長に聞いた。

NTTにとって2008年はどのような年になるのか。

 現在抱えている様々な課題を解決していくことが重要になる。まずはNTTドコモの問題がある。携帯電話の番号ポータビリティが始まり,この1年間は厳しい状況が続いた。その対策として2007年11月末から905iシリーズと新しい料金体系を投入し,手応えを感じている。これを契機に伸ばしていきたい。

  2006年10月24日に携帯電話の番号ポータビリティが始まって以来,NTTドコモは苦戦を強いられている。開始直後の2006年11月には同社初となる契約者数の純減を記録。毎月の純増数は2008年3月を除き,大手3社の中で最下位が続いている。MNPも転出が転入を上回る「転出超」が大手3社の中で唯一続いており,一人負けの状況である(数字はいずれも2007年11月末時点)。

 もう一つはやはりNGNだ。当初はスモール・スタートとなるが,新しいサービスをいかに提供して花を開かせるか。サービスは我々だけでなく,パートナーにも提供してもらう。パートナーを支援する「次世代サービス共創フォーラム」も立ち上げ,共同で新サービスの開発に取り組んでいく。

 柱はこの二つになるが,国際事業にも力を入れていく。グループ全体がまとまって海外展開を図り,一つの大きな柱に育てていきたい。

国際事業は具体的にどのような展開を考えているのか。

 他の通信事業者に比べた我々の一番の強みは,ネットワークだけでなくデータセンターを含め,システム・インテグレーション(SI)事業を併せ持っていること。これまではネットワークとSIで個別に契約することが多かったが,今後は両方をワンストップで提供して顧客のニーズに応えていく。

 手応えも出てきた。これまではグループ各社が別々に海外に進出していたが,NTTコミュニケーションズとNTTデータが共同で拠点を構えるなど,グループ内の協業が少しずつ形になってきた。海外企業のM&A(買収・合併)も含め,幅広く取り組んでいきたい。

2007年11月に光回線の契約目標を2000万に修正した。この真意を知りたい。

 光3000万はもともと電話換算で出てきた数字。当時は光のユーザーが100万もなかったし,CATV事業者も通信の分野にそれほど進出していなかった。将来の需要予測が難しい状況で,一つのイメージとして「2010年度に光3000万」を掲げた。当時,約6000万人いた加入電話ユーザーの半分に使ってもらおうというものだ。

  NTT持ち株会社は2004年11月の中期経営戦略で「2010年度に光3000万」とする構想を打ち出したが,2007年11月に「2010年度に光2000万」に修正した。三浦社長は2007年6月の社長就任会見で「非常に厳しい数字だが,(達成は)必ずしも不可能ではない」としていた。

三浦 惺(みうら・さとし)氏
写真:佐々木 辰夫

 それから3年が経過し,2010年まで残り3年となった。「NGN」と「光3000万」という中期経営戦略の2本柱のうち,NGNはトライアルをほぼ終えて商用化を迎える。具体的なサービス展開も見えてきたのに,もう一つの柱である光がいつまでもイメージというわけにはいかない。残り3年という状況になって光についても現実的な数字を出すべきと考えた。

 2000万という数字に対しては「随分と低くした」「需要予測を考えるとまだ厳しい」など,いろいろな意見がある。ただ,我々が過去3年間提供してきた経験からマクロ的に展望すると,2000万が現実的な目標と考えている。

NTTはどうして2010年度に光2000万を達成しなければならないのか。なぜ急ぐのか。

 今や事業者間の競争は完全にブロードバンド市場に移っている。「光を売らなければいい」という人もいるが,光を売ってブロードバンドのシェアを一定数確保していかなければ事業者として成り立たなくなる。昔の独占的な状況とは違い,売らなければ他の事業者に取られるだけ。こういう競争環境にある。ブロードバンド市場を積極的に取っていくという意気込みで光2000万という目標を掲げている。

「NGN」と「光」という2本柱の関係が分かりにくい。NGNの展開と光の敷設は独立したものなのか,あるいはある程度一体化したものなのか。

 英BTのNGNと比較すれば分かりやすいかもしれない。英BTのNGNはメタルのアクセス回線でオールIP化を図っており,構築の狙いはコスト削減が中心になる。

 これに対して我々は単なるコスト削減だけでなく,NGNと光をリンクさせることで新しいサービスの可能性を広げることに重点を置いている。メタル回線では新しいサービスの展開に限界がある。ADSLは下りの速度はある程度あるが,上りの速度が遅い。映像中心の双方向通信が今後普及していくことを考えると厳しい。NGNというコア・ネットワークの高度化はもちろん重要だが,光と一体で提供するからこそサービスの充実を図れる。

現行の電話やIP網との関係はどうなる。

 両方の“いいとこ取り”をしたものがNGNになる。電話はセキュリティをはじめ,非常に堅固で多くの機能がある。その良さをそのままNGNに引き継ぐ。一方,IP網は管理性の高いネットワークを低コストで構築できるメリットがある。現行のままではオールIP化したときに限界があるが,既存のIP網を高度化することで信頼性を強化し,帯域確保(QoS)のサービスも提供できるようになる。

NGNは持ち株会社が設計して各事業会社が展開する。サービスの提供主体が分かりにくい。

 NGNの発想が持ち株から出たのは事実だが,サービスの開発はNTT東西やNTTコミュニケーションズを中心に進めている。ただ,それぞれの事業会社間でサービスの連続性は確保しなければならない。少なくともNTT東西でサービスの本質が異なるのは良くない。基本となる技術の研究開発は持ち株が中心に進め,各事業会社が実際にビルトインするときに問題点があれば調整するようにしている。

>>後編 

NTT社長
三浦 惺(みうら・さとし)氏
1944年生まれ。広島県出身。67年に東京大学法学部を卒業し,日本電信電話公社(現NTT)に入社。96年に取締役人事労働部長,99年に常務取締役東日本会社移行本部副本部長などを経て,99年7月に東日本電信電話(NTT東日本)の代表取締役副社長に就任。2002年6月にNTT東日本の代表取締役社長。2005年6月にNTT代表取締役副社長中期経営戦略推進室長,2007年6月に現職のNTT代表取締役社長に就任した。趣味は旅行,ウォーキング,山登り。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年12月14日)