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■ソフト的に歌声を作り出す「バーチャルシンガー」を発売した理由は。

 グランドピアノやドラムなどの楽器、さらにはオーケストラは、持ちたくても持てない人が大半です。でも、それをソフトで実現できれば、自分のものになると考えたのが、そもそものきっかけです。楽器をパソコンで再現するバーチャルインストゥルメントなら、圧倒的にコストは安く、限りなく生の音源に近いものを作れます。

 そして、この分野で一番難しいのが歌声なのです。人間は人の声を聞き分けたり、識別したりする能力に長けています。このため、機械で声を作り出す試みは古くから続けられていますが、機械くささがなかなか取り除かれなかったのです。一方で、僕が販売していたパーツ(音源)の中で圧倒的に人気だったのは声です。例えば、黒人がシャウトする声が売れるのです。この経験から、声を使ったバーチャルインストゥルメントを出せれば売れるだろうな、となんとなく考えていました。

 そんな折、ヤマハがバーチャルな歌声を作り出すソフトを開発したことを知ったのです。そして、2004年11月にヤマハの歌声制作ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」を使った「MEIKO」というソフトを出しました。初めての「バーチャルシンガー」です。このソフトは初年度で 3000本を売り上げ、デスクトップミュージック(DTM)ソフトとしては異例のヒットを記録しました。

 当然、業界内には「機械くさくて使えない」などの批判的な意見が多くありました。ただ、批判がある中でも売れている。この状況は、いったい何なのかと考えました。経験的に、DTMソフトは成功すれば1000本くらい売れる製品です。つまり、MEIKOはもともとのDTM市場以外で売れたのではないか、と考えたのです。音に関する会社である以上、DTMの市場を狙うのは大切です。ただ、DTMソフトが限られたユーザーのためだけの製品ではなく、多くの人が興味を示す可能性があるのなら、より興味を示してもらいやすい方向に製品を持っていった方がよいのではと思いました。声を楽器として音源にし、シンガーのキャラクターを設定することで、新しい試みを打ち出していけると感じたのです。