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京都大学ベンチャー ロボ・ガレージの高橋智隆氏は,世界的に注目されている若手ロボット制作者だ。たった一人で,ユニークなオリジナル・ロボットを作っている。電磁吸着2足歩行というあっと驚く発想や,キュートでかつクールなデザインを備えたロボットを次々と生み出す秘訣は何なのか。

<高橋氏は,ITpro EXPO 2008の「XDev in ITpro EXPO」で,まつもとゆきひろ氏と対談します。
詳細はこちら。>

ロボットクリエイター 高橋智隆氏
ロボットクリエイター 高橋智隆氏

子供のころから絵やデザインは得意でしたか?

 絵は得意だったと思います。学校で表彰があるときは,たいてい上位三作ぐらいには入っていました。だからといって,マンガ家やデザイナになろうと思ったことはありません。というか,職業のことを真剣に考えたことは,あまりありませんでした。

 どの時点かわからないのですが,モノ・フェチになりました。もののデザインなどに強く興味を持つようになったのです。でも,それについて特別な勉強をしたわけではありません。

ロボットを作りたいと思うようになったのはいつ頃から?

 大学を卒業し,再度大学を受け直そうと思ったとき,自分が好きなのは自動車かロボットかなと考えました(編集部注:高橋氏は立命館大学を卒業後,受験勉強をして京都大学物理工学科に入学した)。ただ当時,自動車は,すでに斜陽産業だと言われていました。それに対して,ロボットはまだ誰も注目していなけれど,自分の中ではおもしろうそうだと考えていました。

 紆余曲折を経て,大学をもう一度受け直そうと思ったとき,つまり,人生のリセットボタンを押したときに,ロボット博士になりたいという幼少時の原点まで戻ったわけです。

最終的に,就職ではなく起業することになった理由は?

 就職しようと思えば,どこかに入ることはできたでしょう。京大に入ったのも,そういうことに有利だろうと考えたからです。仮に起業して失敗しても,その後,就職できるだろうと思ったので,少しふらふらしてみようかと思ったのです。

 もう一つ,大学に二度入ったこともあり,そのぶん歳をくっているので,普通に新卒で入ると同期より早く定年が来てしまうのも損だなと。自分で何かやってみて,その後,中途で入ったほうがまだいいんじゃないかとも考えました。

 たまたまロボットをやったら,世間でロボットが注目され始めたり,大学の独立行政法人化や産学連携などの気運が盛り上がりだして,いろんなサポートを受けられるようになったので,こんなにお膳立てが整っているんだから,じゃあやってみようかなと,それぐらいの気持ちで始めました。

失敗することは怖くなかったのですか?

 うーん,失敗と言っても,元手がかかるようなことではないので,借金して会社を興したわけではありません。時々ベンチャー・ファンドなどから連絡を受けて,お会いすることもありますが,正直,お金をもらっても使い道はあまりありません。

 作るものは小さいし,開発の場所はずっと自宅ですから。何千万円もするような工作機械を使うわけでもありません。自分が持っている機械では,おそらく一番高いものでも20万円しないくらいです。

 仕事とは違う方向になら,いくらでもお金を使えるタイプなんですが(笑)。今の仕事は,自分でコツコツ作ったり,アイディアを考えたりといった部分が多く,そこはあまり投資のしようがないと思います。

起業したとき,将来の目標やビジョンはありましたか?

 いいえ,ありませんでした。現在もないです(笑) 事業を大きくしたいともあまり思いません。ただ今は,工房を建てたいと思っているので,そうなると多少まとまったお金が必要になるなので,どうしようかなと少し悩んでいます。

 工房は住宅兼用にして,作ったロボットを飾るスペースなども設けたいです。仕事に関係ない,趣味の車を並べたりとか,欲を言い出すときりがないのですが。

鉄腕アトムの誕生日(2003/04/07)を記念して作った「ネオン」
鉄腕アトムの誕生日(2003/04/07)を記念して作った「ネオン」

至近な目標は?

 ロボットについては,常に新しい技術やコンセプトを考えて,それに向かって仕事をすることが第一です。そしてロボット業界が盛り上がって,近い将来に“一家に一台”という時代が来て欲しいと願っています。自分の会社(ロボ・ガレージ)がどうのこうのではなく,業界全体を自分が思っている方向に引き寄せたいという思いはあります。

 好きなことをやりつつ,それを発表したり,商品化するなどの方法で,ロボットを通じて未来に何かインパクトを与えたいと思います。だから,一人でコツコツ作って,できあがったものを眺めていれば幸せ,というのとは少し違います。作ったものは,見せびらかしたい(笑)。それによって何かが動いていくのを実感できるのが幸せです。

十年後の自分を思い描いていますか?

 うーん,どうなっているのでしょうか。起業する人には,いろんなタイプがあります。自分の会社がどこまでも成長していくという楽天的なプランを立てられる人もいれば,明日にはつぶれんじゃないかと不安に思いながら続けている人もいます。自分は,どちらかと言えば,後者のタイプ。

 あまり先のことを考えていないみたいなことを言っていますが,そんなに楽天的ではありません。自分の中で,最悪でもこれぐらいのところで収まるだろうといった予測はしています。十年先までのプランはないのですが,十年後に最悪の方向に進んだとしても,そんなにひどいことにはならないと思っています。

それは自信があるということですか?

 自信なのかな? もちろん,自分が得意な部分の技術とかセンスには,多少自信はあります。他の人には簡単にマネできないだろう,と。ただ,自分が必要とされるかどうかは,ロボット産業がどうなるかといったマクロな動きに左右されます。やっぱりロボット産業はダメだったということもありうるわけですし。そうなった場合,大きな会社でロボットに取り組んでいる人達は大変かもしれませんが,自分は5年先延ばしになっても,さほど影響はありません。

 ロボットは,どこかで間違いなく来るということは確信を持って言えるのですが,それがいつとは言えません。自分はそれが来るのをある程度待つことができますが,企業によっては待てないところもあります。そのタイミングを見切るのは難しいです。

自分がロボットで成功できた理由は何だと思いますか

 なんなんでしょう(笑) 一つは運,もしくはタイミングでしょう。もう一つは,しょうもないことですが,「ロボットクリエイター」と名乗ったことが良かったなとしみじみ思います。

 以前は,自分で言うのも恥ずかしい肩書きだったのですが,ロボットクリエイターというのは,自分の立ち位置や,どうありたいかということをうまく表現できていると思います。例えば「自分はロボ・ガレージの社長です」と言ったところで,超中小企業の社長でしかないわけで。四年経ってもまだ一人の会社なんて経営者としては失格でしょう。

 でも,ロボットクリエイターという肩書きで,マスコミから注目されたりした部分はあったと思います。そういうことを狙って付けたわけではないのですが。一種のセルフ・プロデュース力みたいなもので,自分をどう見せていくことでどんな仕事が入るか,といったことを考えるのは大事だと思います。

良いもの,優れたものを作るために,何か注意していることはありますか?

 基本的ですが,ていねいに作ることがとても大切です。ロボットは,ラフに作りようがないもの。最初の一個目の部品からちゃんと作っていないと,あとでボロがでます。いいかげんさや粗雑さはどんどん蓄積されていって,最終的にはガラクタになってしまう。

 ロボットは,ノリや勢いだけで作ってもいいことはなく,ていねいに,かつ論理的にこつこつと作っていかなければなりません。だから試作はしません。いつもぶっつけ本番です。試作だと思うと,絶対に手を抜いてしまうから。