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【後編】変わり行く通信環境を意識,新型のモデルを踏まえフェアな競争を演出

>>前編 

総務省の幹部から国際競争力という言葉を最近よく聞くが,その意味は。

 国際競争力という言葉のコンセプトはまだまとまっていない。ただ私は国内市場で足腰が強いプレーヤが出てくれば,自ずと海外進出のバネになっていくと考えているし,そのバネをなるべく生かせるように行政がサポートする必要がある。

 今,日本の通信環境は3G(第3世代携帯電話)の普及率が7割で固定系のブロードバンドも普及している。このブロードバンド・インフラをテストベッドとして使って新しいビジネスモデルを作り,これを外に持っていく案が考えられる。欧州の携帯電話事業者を見ても,進出先の国でインフラを打っていない。

 その場合,現地法人と利益を分け合うなどのモデルを作って,それを輸出するべき。世界にないビジネスモデルを先んじて作ることが大事になる。

 海外に出て行くのは通信事業者に限らない。例えば日本発のコンテンツに通信サービスが付いていくなどいろいろなビジネスモデルがある。どのモデルが成功していくかは分からないからこそ,様々な企業が試行錯誤をしていくしかないだろう。

「YouTube」は法律的には放送ではないが,テレビのように使うユーザーもいる。このように従来のモデルを壊すものをどう見るか。

谷脇 康彦(たにわき・やすひこ)氏
写真:的野 弘路

 従来の競争モデルでは放送だ通信だというカテゴリの中でやってきた。市場の統合によって,ユーザーから見ると同じものが違うカテゴリに入っているということがさらに増えてくる。

 同じことをやっているのに規制レベルが違うというのは不公平だ。だからフェアにするのだが,規制は低い方にそろえていくのが基本だ。つまり,基本的に融合法制は規制のレベルを下げ,かつサプライサイドをフェアに規制する運用環境を作り,市場が伸びる方向に持っていくべきだ。

通信事業が成り立たなくなる中で,ユーザーが安くサービスを利用できればすべて良いのか。

 そこは難しい。2008年にはネット中立性と競争モデルの研究会を開催する予定だが,ここで広告モデルなど新しいモデルを議論する。

 新しい事業モデルが出てきたときに今の法律を見ると,従来型のビジネスモデルには規制をかけやすい。しかし新しいモデルは想定外になっている。ここも,サプライヤ間の公平性をどうするかという問題が出ている。

 これは今までになかった問題だ。こうした問題も常に議論のテーブルに載せておくべきだろう。

今後の通信産業の成長をどう見る。

 通信産業は今後,基本的に定額制の世界に入っていくためパイは広がらないと思う。今後は上のレイヤーを伸ばしていくためのプラットフォームが重要になる。プラットフォームの議論は,他業態からの参入を促すという意味でも避けて通れない。このテーマは2008年に研究会を作って議論するつもりだ。

 2008年には,消費者政策の研究会も作る。これらにネット中立性のパート2に当たる研究会を合わせた三つの研究会を,2月ころに立ち上げる。どれも年内いっぱいでまとめる予定だ。

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課長
谷脇 康彦(たにわき・やすひこ)氏
1984年郵政省(現・総務省)入省。OECD事務局ICCP(情報・コンピュータ・通信政策)課勤務等の後,郵政省電気通信事業部事業政策課課長補佐,郵政大臣秘書官,電気通信事業部調査官を歴任。2005年から総合通信基盤局料金サービス課長として,「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」,「ネットワークの中立性に関する懇談会」,「モバイルビジネス研究会」の事務局を担当。2007年7月から現職。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年12月11日)