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米GEの前CEOであるジャック・ウェルチ氏が次期CEOとして候補者を3人まで絞り込み、ジェフリー・イメルト氏を後継者に指名、残りの2人は米3Mと米ホーム・デポのCEOとしてヘッドハントされたことが、2000年ころに大きな話題となりました。日本でもGEジャパンの出身者が経営者としてヘッドハントされる例が近年着実に増えています。GE出身者はどんな能力を特に高く評価されているのでしょうか。
「オペレーショナル・エクセレンス」の卓越性でしょう。日本語にはしっくり来る言葉がないのですが、強いて訳せば「実行能力」です。「やる」と発言したことをきちんとやり遂げる能力のことです。
GEの経営幹部やマネジャーの大半は、プレイングマネジャーです。チームビルディングやコミュニケーションなどの力に長けており、自ら率先して行動する。また、そうなるように(研修や実務を通じて)訓練を受けています。
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2007年10月に日本GEの社長兼CEO(最高経営責任者)を退任した伊藤伸彦氏。外資系化学メーカーを経て、1989年にGEグループに転職した。1999年からGE横河メディカルシステムやGEエジソン生命保険、GEキャピタルリーシングといった事業子会社の社長を歴任した後、2005年1月に日本GEの社長兼CEOに就いた |
GEといえば、1990年代半ばに採り入れて自社流にアレンジした、業務改善や事業戦略実践のための手法「シックスシグマ」も有名です。米国ではGEのシックスシグマ導入による事業面での成果を見て、1990年代後半に同手法の導入ブームが起こり、現在では重厚長大の製造業はもちろん銀行、保険会社、IT企業、ホテルチェーン、ファストフード、飲料メーカーなど業種を問わず、多数の米国企業がシックスシグマを活用しています。日本では90年代の終わりにソニーや東芝を筆頭に火が着きましたが、いったん沈静化。ところがここ2~3年、ダスキンや東レなど導入企業が再び増えていることをどう見ていますか。
シックスシグマという手法はもともと、1980年代に日本企業のものづくりの現場を米国の企業や大学が研究して誕生したものです。でも単に「ものづくり」という点では、現在も日本企業が世界一だと思います。日本の自動車メーカーも家電メーカーも圧倒的に高い品質の製品を作っています。
しかし、GEが自社流にアレンジして採り入れたシックスシグマは製造現場だけに適用する手法ではないのです。GE社内では「ウィング・トゥ・ウィング」という言い方をしますが、営業部門による顧客との交渉に始まり、契約、製造、納品といった全体の流れを1つのプロセスとして見て、どこのポイントが改善の必要性が高いのかを見るのです。ひょっとしたらまず、経理などのバックオフィスのオペレーションを改善しなければならないかもしれません。
シックスシグマ導入企業が後を絶たないのは、こうしたプロセス重視の考え方が重要だということに、多くの企業が気づいたのだと思います。
また、多くの日本企業が実践しているTQC(トータル・クオリティ・コントロール)やTQM(トータル・クオリティ・マネジメント)といった製品や業務や経営の質を向上させる活動は、現場からのボトムアップで実践されているのが一般的です。でもGE流のシックスシグマは、ボトムアップだけでなく、トップが新年度の挑戦的な目標を決めてプロジェクトチームに短期間で成果を出してもらう時にも使う手法なのです。
シックスシグマによる業務改善や戦略実践の活動では、必ず社内外のVOC(顧客の声)を様々な形で集めていろんな統計的手法で処理します。だから、古い業務プロセスが新しい業務プロセスになることによってどれだけの財務効果が生まれるかを判定しやすいという良さもあります。
GEでは、顧客企業と一緒にシックスシグマ活動をすることによって、その企業のお客様の満足度まで向上させる、という取り組みを頻繁に実践しています。例えば、日本でもGEのエンジン事業部門が日本の航空会社と一緒にシックスシグマ活動をしています。