PR
米CodeGearのデビッド・インターシモーネ副社長
米CodeGearのデビッド・インターシモーネ副社長
[画像のクリックで拡大表示]
 米Borland Softwareの開発ツール部門であるCodeGearで,デベロッパ・リレーションズ担当副社長兼チーフエヴァンジェリストを務めるデビッド・インターシモーネ(David Intersimone)氏は,日本法人のボーランドCodeGear事業本部が開催した「CodeGearデベロッパーズキャンプ」などのために来日し,日経ソフトウエアの取材に応じた。「現在もソフト開発の90%はデスクトップとクライアント/サーバーだ」など,興味深い発言もあった。

――CodeGearのビジネスはどんな調子か。

 利益が出るかたちでビジネスをドライブしている。Borland本体はアプリケーション・ライフサイクル管理(Application Lifecycle Management,ALM)にフォーカスして,大企業のオペレーション,アーキテクチャ開発,マネジメントなどを担当する人にソフトウエアを提供している。CodeGearはデベロッパにフォーカスした開発ツールの改良を続けている。PHP,Rubyの開発環境「3rd Rail」といった新言語も始めたが,従来からあるDelphi,C++ Builder,JBuilder,データベース管理システムInterBaseなどは,すべてアクティブな製品だ。開発を続けており,今年も新版を出すので期待してほしい。

――マイクロソフトのExpressionやVisual StudioでWindows Presentation Foundation(WPF)を使って作った新しいアプリケーションの画面を見ると,Delphiが時代遅れではないかと心配になる。

 Delphi .NETではWPFを使った開発ができる。VCL(Visual Component Library)を使った開発ほどビジュアルで簡単にはできないが,API(Application Programming Interface)やクラスを使った開発は可能だ。Vistaのグラフィックス機能「Aero」やデスクトップの新機能にも対応している。その対応はVisual Studioよりも当社のほうが早かった。

 AdobeのDreamweaverなどを使ってデザインを重視したWebアプリケーションが作られるようになってきたことは認識しているが,今の形ではデベロッパが使いやすいものではない。VCL for the Webを改良するなどして,もっと良い方法を探したい。

 Webアプリケーションも増えてはいるが,まだビジネス・アプリケーションの多くはWindowsアプリケーションだ。90%は,トラディショナルなデスクトップまたはクライアント/サーバー・タイプのアプリケーションである。DelphiやC++ Builderが時代に追い付いていないとは思わない。

――今年リリースを予定しているDelphiの新版「Tiburon」(コード名)の目玉はDelphi for Win32のUnicode化だと聞く。手を打つのが遅かったのではないか。

 DelphiにはUnicode文字列を扱うデータ型「WideString」が既にあるし,Unicodeで動くデータベース管理システムへのアクセスでも問題が生じないようにしてある。ただ,そのことと,Delphiの内部をすべてUnicodeベースにすることとは別だ。コンパイラだけでなく,画面表示のコンポーネントを含むVCL,IDE(統合開発環境)ももすべてUnicodeベースにしようとしている。Unicodeベース既存のアプリケーションが,最小の手間でUnicodeベースに再ビルドできるようにすることも必要だ。Unicode化は,Delphiの奥深くにもぐっていくような作業であり,十分な開発期間を取る必要があった。今がその時だと判断した。C言語の多くは今でもANSI文字列をベースにしている。Delphi for Win32の対応が遅かったということはない。

――来年リリースを予定しているDelphiの新版「Commodore」(コード名)に進むために,Tiburonで布石を打つことになる。

 Commodoreの最大の特徴は64ビット・ネイティブのWindowsアプリケーションを作れるようになることだ。64ビットのクライアント/サーバー・システムを構築する,理想的な手段になる。Commodoreに盛り込めるかどうかはわからないが,普及してきたマルチコア,マルチプロセサのシステムへの対応も研究している。コンパイラの最適化でできるのか,Delphiのライブラリを変える必要があるのか,FORTRANのように並列化を指示する記述方法を追加するのがよいのか,できることを探していく。私たちが追求しているのは「どうやってよりシンプルにするか」だ。

――2007年9月にRubyの開発環境「3rdRail」を投入した。デモンストレーションを見る限りでは,Ruby on Railsのコード生成をベースにしていると思われ,コードを生成したあとの変更が難しいのではないかと心配だ。

 3rdRailでは,ウィザードの質問に答えて設定を行うことでリソースを生成できる。ただ,ビジネス・ロジックはコードで記述する必要がある。そのあとで変更を加えたいなら,3rdRailのリファクタリング機能がオススメだ。3rdRailでの開発では,生成したコードに変更を加える必要があるかどうかをよく考えることだ。モデルを変更して解決できるなら,それを行って再生成したほうがよい。

 3rdRailを使うことによって,Rubyでの開発生産性を高められる。プロジェクト全体のナビゲーションができ,コード補完でキー入力を減らせる。2008年第1四半期にはバージョン1.1を投入する。Railsの1.2.3,1.2.6,2.0.2に対応し,そのプロジェクトを読み込んで開発できる。高速なデバッガを搭載する,Mac OS X 10.5,Ubuntu(Linuxの一種)のサポートも追加する。

 3rdRailはまだ日本語版がないが,その開発も進めている。近いうちにフィールドテスト版を作り,秘密保持契約を結んでもらったデベロッパに使ってもらえるようにする予定だ。3rdRailはEclipseをベースにしており,Eclipseの国際化(Eclipse Babel Project)がどう進むかによって,変化する部分もあるだろう。

――Java開発ツールのJBuilderで,注目すべき新機能は何か。

 次に出る「Bonanza」(コード名)では新しいSwing UIデザイナーを含む多くの改良をしているが,目玉と言えるのは「Application Factories」だろう。アプリケーションのメタデータを作り,それにスクリプトとツールを組み合わせて,アプリケーションの開発過程を追跡(トラック)できるようにする。アーキテクトが持つイメージをすべての開発者が共有できるようになる。これを使うことで,Javaシステムを作った場合に,その成果を別プロジェクトで再利用することが可能になるといいと思う。担当者が変わる際の引き継ぎも円滑にできるようになるだろう。ちょっと,口頭で説明するのが難しい面もある。実際の動作を見る機会を作ってくれるとありがたい。