Windowsのデスクトップ環境をデータセンターのXen仮想マシン上に構築し,シンクライアントから遠隔操作できるようにするミドルウエアが「XenDesktop」である。米Citrix Systemsは,そのベータ版を2008年2月27日に公開した。同社プロダクト・マネジメント担当ディレクタを務めるAaron Cockerill氏に,XenDesktopが実現する次世代クライアントの特徴を聞いた。
![]() 米Citrix SystemsでDirector of Product Managementを務めるAaron Cockerill氏 [画像のクリックで拡大表示] |
XenDesktopの概要をまとめてほしい。
XenDesktopを設計する際に重要視したポイントは,ローカルにOSをインストールした一般的なクライアント・パソコンと比べて,より性能の高いエクスペリエンス(体験)を提供するということだ。もしXenDesktopが提供する“仮想デスクトップ”の操作感が一般的なパソコンのデスクトップ環境に劣るのであれば,エンドユーザーに受け入れられるはずがない。
一方で,クライアントのデスクトップ環境を運用管理するIT部門に対しては,費用対効果を上げることが重要と考えた。そこで,よりコスト効果の高いデスクトップ環境として,「プロビジョニング・サーバー技術」と「Xen仮想マシン技術」を組み合わせた。さらに,サーバー・ベースでアプリケーションを実行するXenApp(旧称はPresentation Server)との組み合わせも提唱している。
プロビジョニング・サーバー技術によって,単一のOSイメージを複数のエンドユーザーで共有できるようにした。エンドユーザーが100人いるなら100個の仮想マシンが必要になるが,それらすべての仮想マシンが単一のOSイメージを共有するというものだ。これにより,仮想マシンのOSイメージを格納するストレージ領域を抑えられるだけでなく,OSの設定やパッチの適用といったOSの維持管理にかかるコストを削減できる。
さらに,XenAppと組み合わせることで,OSと業務アプリケーションを切り離して運用できる。OSはXenDesktopの仮想マシン上で動かし,デスクトップ・アプリケーションはXenAppサーバー上で動かすのだ。こうすれば,OSだけでなく,デスクトップ・アプリケーションも複数のエンドユーザーで共有できるようになり,デスクトップ管理のコストを劇的に低減できる。
ローカルOSと比べて優れているのは,具体的にどういう点か。
例えばインスタント・オン機能が挙げられる。これは,エンドユーザーがデスクトップ環境を使いたいと思ったときに,すぐに使えるようになるという機能だ。例えば,社員が100人いる会社で,勤務時間中,ずっと100個の仮想マシンにWindowsをロードさせておく。100人の社員は誰でも,XenDesktopに接続するだけで,すぐさま自分のデスクトップ環境を使い始められる。電源の投入やOSのブートといった余計な時間をカットできるのだ。
運用管理上の設定により,夜間などデスクトップ環境を使わない時間帯はサスペンド・モードに移行することもできる。ディスクにメモリー内容を書き出して,電力を落とすことが可能だ。
XenAppによってアプリケーションをOSから分離すると,新しいパソコンで感じる動作の軽快感を,いつまでも持続できるようになる。私たちは経験的に,アプリケーションをインストールしていくたびにOSが重くなっていくことを知っているだろう。買ったばかりのまっさらなOSは速くキビキビ動くのに,使い続けてアプリケーションを大量にインストールしたOSはノロノロと遅くなるはずだ。XenAppを併用すれば,こうした現象に悩まされずにすむ。