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 米Microsoftが2008年下期にリリースする予定の「SQL Server 2008」は,データベース・エンジン部分には大きく手を加えない,現実的なアップデートである。同社でSQL Serverのプロダクト・マネジメントを担当するDirectorであるFrancois Ajenstat氏は,SQL Server 2008の特徴を「パフォーマンスと使い勝手の向上に注力したこと」と語る(聞き手は中田 敦=ITpro)。



まずは,SQL Server 2008の開発状況について教えてください。

 SQL Server 2008は,2008年2月にリリースされたCTP(Community Technology Preview)で,すべての新機能が追加されました(関連記事:マイクロソフトがSQL Server 2008日本語プレビュー版を公開)。これからは新機能を開発するのではなく,ユーザーからのフィードバックを受けるだけの期間になります。

Francois Ajenstat氏
Francois Ajenstat氏

SQL Server 2008は,どのような位置付けの新バージョンになりますか?

 SQL Server 2008は,顧客のことを最優先に考え,顧客にとって便利な機能だけを追加した新バージョンになります。顧客の悩みを軽減することに主眼が置かれています。

 例として,データ・ベースの圧縮機能や新しいデータ型への対応などが挙げられるでしょう。またコンプライアンスが重要になってきたことから,業務アプリケーションに手を加えずにデータだけを暗号化できる「透過的暗号化機能」も追加されています。

 もちろん,パフォーマンスも上がっています。今回,Windows Server 2008とSQL Server 2008,Visual Studio 2008のローンチ・イベントに合わせて,NECや米IBMが「TPC-Eベンチマーク」(オンライン・トランザクション処理(OLTP)性能を比較するためのベンチマーク。従来のTPC-Cよりも現実的なベンチマークを目指して2007年3月に基準がリリースされた)を発表しており,記録的な結果を出しました(関連サイト:TPC-Eのランキング)。

 今回,Windows Server 2008とSQL Server 2008の組み合わせによって行われた,「TPC-Hベンチマーク」(データウエアハウスとしての性能を比較するためのベンチマーク)の「10Tバイト」のベンチマークが公開されました(関連サイト:TPC-Hのランキング)。SQL Serverで10Tバイトのベンチマークが行われたのは,これが初めてです。

 また,米UnisysとMicrosoftが共同で実施したETL(Extract/Transform/Load)ベンチマークでは,1TバイトのデータをETL処理(実行,変換,ロード)するのに30分未満で済むという結果が出ました。これはETLベンチマークの新記録であり,米Oracleや米Informaticaより優れていると考えています。

 われわれは現在,ビジネス・インテリジェンス(BI)機能を重要視しています。これらのベンチマーク結果は,SQL Server 2008が,BIを実現するために必要なデータウエアハウスとして高い性能を有していることを示しています。

 われわれの目標は,BIをあらゆる組織,ユーザーに提供するということです。そのためわれわれは,SQL ServerではBI機能を追加費用なしに導入できるようにしています。競合の中には,BI機能を有料のオプションとしているところが珍しくありません。例えばOracleでBI機能を使う場合は,およそ25万ドルが必要とされます。SQL Serverの場合は,SQL ServerのライセンスだけでBI機能が利用できます。

現在のSQL Server 2005が開発段階にあった2003年ごろ,Microsoftには「SQL ServerをWindowsプラットフォームのストレージ・システムにする」というプランがありました。Longhornの幻の機能である「WinFS」や,Exchange Serverなどが,SQL Server 2005をベースに開発されるとされていました。これらのプランは潰えましたが,「SQL Serverをストレージ・システムにする」という考え方自体も無くなったのでしょうか?

 そうではありません。SQL Serverは今後「ユーザーがどこからでもデータにアクセスできる」というビジョンを実現するための,重要なプラットフォームになります。既にSQL Serverはリレーショナル・データだけではなく,非構造データや文書,動画,XMLなど様々なデータ型をサポートしています。また,ユーザーがデータにアクセスするためのシステムであるSharePoint Serverなどを支える,データ・ストレージになっています。

 パソコン用にはSQL Server Expressを,モバイル・デバイスにはSQL Server Compact Editionを提供しており,SQL Serverは,データ・センターからラップトップ・パソコン,モバイル・デバイスに至るまで,ありとあらゆる場所に存在しています。SQL Serverが「データ・エブリウエア」を実現するプラットフォームになっていることが分かるでしょう。