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【後編】SOAを「絵に描いた餅」から「食べられる餅」に変える

>>前編 

 (システム導入作業を担当する)システム・インテグレータの意識も変わってきました。大型システムを独自に開発するとなると、人員を確保するのも容易ではない。後工程で要件が変わって工数が膨れあがった分をすべてお客様に転嫁できるとも限りません。大変な努力をするけれど、最終的には収支とんとんか赤字になる案件が少なくないわけです。

 それに比べれば、標準的なパッケージ・ソフトを活用する方がよっぽどリスクが少ない。手組みに比べて大幅に工数が縮まるわけではありませんが、当初の見積もりとはまったく異なるものになる可能性は少ないはずです。

パートナーとは本音で会話

八剱体制になって、パートナー企業との関係は変わりますか。

 一昨年から「ジョイント・ビジネス・プラン(JBP)」という仕組みを導入しました。有力パートナーと製品や商談に関する情報交換を密にして販売促進につなげる仕組みです。

 日本のビジネス習慣にはあまりなじまないとの指摘もありましたが、昨年半ばぐらいからだいぶ定着してきました。

 でも「よかったですね」「そうですね」と表面的な話で終始しても仕方がない。今後はビジネス上の要求について、より本音をぶつけ合う場にできればと考えています。「この案件でこうしたトラブルが起きた」とか「もうちょっと協力してもらわないと困る」といった具合に丁々発止のやりとりをすることがお互いのためになるはずです。

 最近もコンサルタントの育成体制を強化してほしいとの要望があがってきました。そのパートナーはSAP製品に精通したコンサルタントを拡充しようしていたのですが、当社が提供している通常の教育メニューでは計画に間に合わないというものでした。

 当社の教育部門にも人材がおりますので、なんとか対応させていただきました。こういう要望があるというのは、外部から言っていただけなければ気づかないものです。

SOAの成功例を作る

ERPの各機能をサービス部品として提供する構想「Enterprise SOA(ESOA)」を提唱していますが、あまり浸透していません。

八剱 洋一郎(やつるぎ・よういちろう)氏
写真:室川 イサオ

 パートナー企業はともかく、お客様へはまだまだです。SOA(サービス指向アーキテクチャ)自体がかなり前から唱えられてきた概念で、何となく「絵に描いた餅」との印象がお客様にはあるのではないでしょうか。

 当社はSOAに沿って動く部品を世界で一番多く持っているソフト会社です。すでにERPが提供する1000以上の機能をサービス部品として扱える環境を提供していますが、そのイメージがなかなか浸透していない。

 突破口はとにかく成功例を作ることでしょう。今年はSOAを「絵に描いた餅」から実際に食べられるものに変え、その成果を具体的に発信していきます。

もう1つの重点分野である中堅・中小市場も苦戦が続いています。

 実は2007年は市場の動向を見誤りました。年初は大企業向けの市場が伸び悩む半面、中堅企業向けが大きく伸びると予想していた。ところがふたを開けると逆で大企業向けのほうが成長率が高かった。しかも大企業の半分は新規のお客様ですよ。これは全く予想できなかった。

 その結果どうなったかというと、大手のお客様への対応に追われ中堅にきちんとアクセスできなかった。これは2007年の大きな反省点です。

 今、当社のソフトウエアのライセンス販売に占める中堅・中小の比率は2~3割です。3、4年先までなら、ここが大きく伸びなくても、大企業向けだけで成長は維持できる。ただ、5年先、10年先を考えると、中堅・中小市場は避けて通れません。「SAPは大企業向け」というイメージを一刻も早く払拭しなければとあせっています。

中堅企業向けSaaSである「SAP Business ByDesign」は起爆剤になりますか。

 いや(早くても年末とみられる)ByDesignの開始を待っていては遅すぎる。今ある製品群だけでイメージを変え始めないと、いつまでたっても中堅・中小市場の開拓は進みません。

 一口に中堅・中小市場といっても幅は広い。売上高でいうと数百億円規模の企業には「SAP Business All-in-One」が、数十億円規模なら「SAP Business One」があります。ByDesignは売上高100億~300億円程度の企業を狙った、両製品の間を埋めるものです。

目指すは3倍成長

国内総生産(GDP)で世界の10%を占める日本ですが、SAPジャパンの売上げはSAP全体の5%弱しかありません。

 確かに10%は1つの目標です。SAPは急速に成長していますから、単純に日本法人の売り上げ(2007年12月期で4億4700万ユーロ=約715億円)を2倍にしても10%は難しい。たぶん3倍にしないとだめでしょう。

 中国やインドならともかく、成熟市場の日本で売り上げを3倍にするのは簡単ではない。でも、初手からあきらめていたら、いつまでたって達成できない。いきなり10%は難しいにしても、5%、6%、7%と一歩ずつSAP全体の売り上げに占める日本法人の比率を高めていこうと考えています。

 幸い日本法人の業績は絶好調です。ソフトウエアの売り上げに限ると2007年12月期は3割ほど伸びた。今年からは(本社が買収した)ビジネスオブジェクツ製品の取り扱いも始まります。このペースで成長を続けられれば、早晩目標を達成できるはずです。

SAPジャパン 代表取締役社長 兼 CEO
八剱 洋一郎(やつるぎ・よういちろう)氏
1978年、日本IBMに入社。主に通信ネットワーク畑を歩む。99年、IBMのデータ通信事業売却に伴ってAT&Tグローバル・ネットワーク・サービス・ジャパンの社長に就任。05年DDIポケット(現ウィルコム)社長に転じPHS事業の立て直しに注力。07年4月上級副社長としてSAPジャパンに入社。同年9月社長。08年1月からCEO(最高経営責任者)も兼務。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年1月24日)