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第3の解への関心が高まる,オープンソースやSaaSを使う

発注者の業務を代行するコンサルティング会社を設立、2007年度には年商20 億円近くにまで育てた。発注者の動きを肌で感じる漆原社長が注目するのが、既存の業務パッケージでも手作りでもない「第3 のソリューション」である。オープンソース・ソフトやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などを活用し、長く使うほどメリットが拡大するのが特徴だという。

発注者向けのコンサルティングを中心に手掛けていらっしゃいます。

 本当にお客様の立場で考えた最適なITソリューションを、中立で提供するのが当社の中核業務です。CIO(最高情報責任者)の発注力を高めることを支援していると言えるかもしれません。

 全社の売上高の9割くらいがコンサルティングからのものです。2008年3月期で20億円弱になるでしょうか。

 どのベンダーか、どの製品や技術を選ぶかだけでなく、そもそもどうしたらいいのというところからかかわっていく企業だと思われることを目指してきました。発注側に立った業務なので、プロジェクトに何百人がかかわるといったことは必要ありません。

 数人でもいいんです。ただ、業務とITの双方が理解した上で、顧客企業と同じ価値観で行動することが求められます。

発注力についてもう少し説明してください。

 いくつかの内容に分かれます。受注側の業務と似ている面もあります。

 まずは要件定義をどうきっちりまとめるか。合意を取れば良いのかというと、それだけではない。設計をどうするか、実際のITに落とし込むときのプロジェクトマネジメントやアーキテクチャ、様々な技術の選択にも関係します。

発注者の近くで仕事をされた結果、発注者が求めるソリューションを提供しきれてないとの持論に達されました。

 実は、今の日本には、営業管理などの簡単な業務に使うものに向いたソリューションがほとんどないのです。定型化したものでいいから、早くアプリケーションを動かしたいというお客様のニーズが、市場のかなりの部分を占めているのではないかということです。

 その一方で、2~3年ぐらい前からですかね、ふと世間を見渡すと、日本では知られていないけれども、世界では新しいソリューションがどんどん生まれてきている。これまでとは違うサービスモデルが成立する機会が出てきたわけです。

それでオープンソース・ソフトやSaaSに注目したわけですか。

漆原 茂(うるしばら・しげる)氏
写真・山田 愼二

 オープンソースやSaaSは、まず使ってみることができる。カスタマイズ性も高いし、運用コストも合理的なものに落ち着きます。

 利用範囲を拡大させながら顧客に根付かせていくことが可能な方法です。それにオープンソースを使えば、特定の技術によって企業が囲い込まれることもなくなります。

 これまでのシステム開発は、業務パッケージと手作りと二つの方法が中心でした。

 パッケージを使って大きなシステムを開発する場合には、膨大なカスタマイズが発生して、巨額の初期投資をお客様に強いることが少なくありません。10億円を超すことだってあります。

 にもかかわらず結局、使っているのはパッケージのごく一部の機能だという企業も存在するのが現実です。

 かといってすべて手作りでシステムを開発しようとすると、大変な手間がかかります。

 すべて手作りで開発したほうがいいシステムもあります。こういった場合は、今まで通りの方法で開発すれば良いのです。

これまでIT業界の企業は大型の開発案件に依存することで成長してきました。第3の道を取ることは可能ですか。

 この道を取らなかったとしても、ほかにどんな道があるというのでしょうか。少なくとも当社では、お客様と長く付き合うほど利益が増えているモデルを考えるつもりです。

 ソフトのライセンス販売やSIは、いわば売り切りのビジネスモデルです。利益のことだけを考えれば、売った後は手間を掛けない方がいいわけです。売った後は、できるだけローコストで運用することを考えなければならなくなります。

 そうではなくて、最初は軽く使ってもらって、手応えがあれば機能を強化したり利用部門を増やしたりする。こうやって付加価値を向上させた結果、お客様の満足度が高まるビジネスモデルの方が絶対にいいです。

 今後、5年から10年の間には、大きく状況が変わってくるのではないですか。

2007年12月に、商用オープンソースの「SugarCRM」の導入、販売で実績のあるケアブレインズを子会社化しました。

 第3のソリューションを手掛ける会社が見つからなかったので子会社化して、いわば仲間内の別事業体として実現させることにしたわけです。

 ケアブレインズに関していえば、内部の人材が素晴らしかったこともあります。SugarCRMの開発者のコミュニティで高く評価を受けている人物がいるんですよ。

 もっともSugarCRMだけにこだわるつもりはありません。お客様が必要としているのはソリューションであって、別に「物」ではないのです。

 営業担当者の行動管理システム、あるいはSFA(セールス・フォース・オートメーション)などで、オープンソースのソフトをエンジンにしたソリューションを提供していくつもりです。

 SugarCRMはCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に特化したオープンソースですが、ほかにも業務利用を前提にした商用オープンソースはいくつもあります。

 ERP(統合基幹業務システム)パッケージの「Compiere」とか、BI(ビジネス・インテリジェンス)関連の「Jasper」などが代表的なものでしょう。

オープンソースに関しては、基幹系システムで利用することに不安を持つ企業が少なくありません。最近では、オープンソースを中心に手掛ける企業の経営破綻がニュースになりました。

 オープンソースだからサポートできないのではありません。担当している事業体が責任を持てるかどうかの話です。

 それにすべてを当社だけでやるつもりはありません。パートナーを含めた体制でソリューションを提供するつもりです。

 経営が成立するかどうかも同じです。オープンソースではなく、個別の企業体質の問題でしょう。

なぜ日本では第3のソリューションがあまり広がってないのでしょうか。

 国内の企業だけをビジネスの対象にしていたことが理由でしょう。その上、業務ソフトは多くの輸入に頼ってきました。輸出しようと考えた瞬間に状況が大きく変わります。

 オープンソースの開発コミュニティに参加することで、日本のソフト開発が世界で通用するかどうかを試すこともできます。取り組む意義はありますよ。

 お客様も技術者もこういった場を求めているはずです。日本企業の特徴である品質の面で貢献できるところがいろいろとあるのではないでしょうか。

 日本発で世界にフィードバックできるわけです。気概を感じる人間も大勢いるでしょう。

新たなソリューションを広げるのは簡単ではないでしょう。

 当社はITベンチャーです。これまでなかった技術を提供するのが使命です。日本の事情に合った革新的なソリューションを、我々のような企業が提供しないで、どこがやるんですか。

ウルシステムズ 代表取締役社長
漆原 茂(うるしばら・しげる)氏
1987年に東京大学工学部卒業。同年、沖電気工業入社。同社在籍中の1989年から2年間、スタンフォード大学コンピュータシステム研究所客員研究員。2000年7月、ウルシステムズを起業し、代表取締役社長に就任。趣味は家族旅行、音楽

(聞き手は,中村 建助=日経ソリューションビジネス編集長,取材日:2008年1月18日)