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【後編】IBMは最後の“システム会社”,CPUの開発にはこだわり続ける

>>前編 

サーバー・ビジネス全体を見ると、HPが好調です。2月に発表された米ガートナーの調査では、金額ベースの全世界シェアで31.1%と、トップのIBMに2.8ポイント差まで詰め寄ってきました。伸び率では、IBMの0.8%に対して、HPは8.8%と高成長を記録しています。

 HPが好調なのは承知しています。しかし、大規模トランザクション、大規模データベース、大規模SMP(対称型マルチプロセシング)サーバーなど、大規模市場において、IBMの優位はいささかも揺るぎません。

 私の記憶では、価格が2万5000ドル以上の高機能システムが全体の48%を占めており、その50%が我が社のシェアです。この分野でHPは20%ほどだったはずです。逆に2万5000ドル未満のシステムでは、HPが33%、IBMが17%でした。

 HPが強みを持っているのはローエンドのところなのです。HPが「小さいサーバーで十分」だとして、小さいサーバーを寄せ集めたブレード・サーバーを提案するのはそのためです。

 もちろんIBMもブレードには力を入れています。パートナーと顧客の素晴らしいコミュニティに恵まれて、インテルだけでなく、AMDや、POWER6、Cellといったさまざまなアーキテクチャーのブレードを導入していこうとしています。

 ブレードが今後、ローエンドの部分で主要な地位を占めていくというのは、まったく疑いがありません。経済性に優れて、また環境適応性も大変よく、さらに柔軟性も優れているからです。我が社もローエンド、ブレードには真剣に取り組んではいます。

 ただ、我々がすでに強みを持っていることもあって、やはりビジネス・チャンスとして大きいのは、ハイエンドのシステムだと考えています。

とはいえ、サーバー市場におけるメインフレームの冷え込みは増す一方です。欧米ではメインフレームの比率は1割を切っています。比較的メインフレーム比率の多い日本でも現在の約25%から急速に縮小する見込みです。

 私も面白いデータを持っています。zシリーズの新規顧客の獲得数などを見ていくと、昨年得た新規顧客数が、記憶にある限り過去最高だったのです。メインフレームを必要とする新しい顧客が増えているのです。

過去最高の新規顧客数を獲得

ビル・ザイトラー氏
写真:中島 正之

 理由はいろいろ考えられます。新興国市場において、新規のシステム構築が進んでいることもあるでしょう。日本や欧米でシステムの重要性が増し、高可用性が求められる需要が出てきたということもあるでしょう。歴史的にみて、UNIXサーバーやIAサーバーでも代替可能な処理しか実行していなかったような、ローエンドのメインフレーム・ユーザーはすでにほかのプラットフォームに移行してしまっている、ということもあるかもしれません。

 その結果、ここ数年来で初めて、これほどの新規顧客を獲得できた。戦略的には、かなり理にかなったことだと考えています。メインフレームはなくなるだろうと、何度となく言われてきました。ですが投資を続けてきました。それは正解だったと思います。

 我々は最高のメインフレームを提供したいのです。同じく最高のUNIXサーバー、あるいは最高のIAサーバーを作りたいのです。

 メインフレームの特性であった高信頼性、高可用性、I/O性能をUNIX環境で実現したり、スケーリング技術をIAサーバー環境に転用したりしています。そのような努力の結果、UNIXサーバーでも成長を続け、大変強いポジションを得たわけです。

IBMは今後も自社CPUを作り続けていくのでしょうか。

 CPUを作ることは、戦略的なメリットを我々が享受するために必要不可欠だと思っています。言うなれば、“最後のシステム企業”としての仕事です。独自の半導体を持ち、半導体の開発プロセスと統合した形でシステム開発を進める。そうして、半導体とシステムの最適化を図るのです。

 他社は外部から調達している汎用品のCPUにシステムのほうを合わせる。だから真の最適以下のところでしか合わせられないわけです。

 CPUを作り続けるという命題は、かなり慎重に考えだした結論です。それゆえに、継続できているのです。

 なぜ他社はこのようなやり方を採らないのか、やめたかというと、やはり製造コストがかなり高いからでしょう。次世代のプロセスを開発するには膨大なコストがかかります。65ナノメートル、45ナノ、32ナノと微細化が進む。コア、チップ自体の開発費用も莫大な金額になってしまうわけです。

 製造コストの問題に対し、私たちが打ち出した戦略は2つあります。まずは業界各社と提携して、開発にかかる費用を分担するというものです。ソニー、東芝、韓国のサムスン電子、シンガポールのチャータード・セミコンダクター・マニュファクチャリング、独インフィニオンテクノロジーズ、米AMD、スイスのSTマイクロエレクトロニクス、米フリースケール・セミコンダクタなどです。

 2つ目の要素はチップ開発のコストですが、コアコンポーネントの共有化によって軽減しています。社内でもそうですし、他社とも共有可能にしています。

 例えばマイクロソフトのゲーム機「Xbox360」とか、ソニーの「プレイステーション」とか、任天堂の「Wii」向けのCPU、米シスコの製品などです。IBM製品と他社製品の間でコンポーネントの再利用を可能にして、よりスケール・メリットを出そうとしています。これは他社には不可能でした。

 さらに我々は、チップ上でさまざまなコンポーネントを統合していく際、どの機能によってどういう負荷がかかるのか、そのためにどういうアクセラレータを載せればいいのかを検証しています。ですから、最適な動作をするような開発ができるのです。

 これは大きなメリットです。私たちはずっとこれをやり続けた、投資を続けたのです。その結果が、z10のようなハイパフォーマンスなハイエンド・システムを実現できている事実に表れているということなのです。

 こうした戦略によって、IBM製品は他社製品とは違うと言えるわけです。10年後にはおそらく、IBMは賢い戦略を採ったと評価してもらえるものと思います。

米IBM IBMシステムズ&テクノロジー・グループ担当 シニア・バイス・プレジデント
ビル・ザイトラー氏
1969年、IBM入社。営業・サービス部門やソフトウエア・マーケティング部門でマネジメント職を歴任し、オフコンの「AS/400」、およびエンタープライズ・サーバーのゼネラル・マネージャーを務めた。2000年9月、IBMサーバー・グループのシニア・バイス・プレジデント兼グループ・エグゼクティブに就任。マイクロエレクトロニクス事業部をはじめ、すべてのハードウエアに対する責任を負う。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年2月26日)