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付加価値を与えていく会社に変わる,訴求のカギは「シンプル化」にあり

デル日本法人のジム・メリット社長は今年度(09年1月期)の目標として、「デルが提供するものを今までのローコストから付加価値に変えていく」と話す。昨年度に打ち出した「ITのシンプル化(Simplify IT)」を旗印に、企業向け・コンシューマ向けのそれぞれで注力分野を設ける。仮想化サーバーやノート・パソコン、中堅中小市場だ。その背景には、全従業員の10%のレイオフを進めたり、代理店販売を解禁したりするなど、デル全体の変化がある。08年度の事業戦略説明会(関連記事)で「日本市場の競争は激しくなっている」との見解を示したメリット社長に、シンプル化の具体策などを聞いた。

「ITのシンプル化」が必要な理由を教えてください。

 各ベンダーのプロプライエタリな技術は、お客様がコストに合う価値を提供していないと考えています。プロプライエタリな技術はベンダーにとっての「シェルター」です。お客様自身でなかなか実装できず、ベンダーのヘルプが必要になります。

 より収益性を上げるために、あえて複雑にしているような傾向もあるんじゃないでしょうか。私自身、米IBMでかなり長いキャリアを費やしてきましたので、あえて申し上げます。

デルはそれを切り崩すと?

 はい。独自技術でお客様を囲うやり方はしません。当社はIT業界で唯一、プロプライエタリな技術を提供しない会社と自負しています。日本でもNEC、富士通、日本IBM、日本HP(ヒューレット・パッカード)といった競合はすべて、プロプライエタリの技術を使っています。

具体的に「ITのシンプル化」で何を進めますか?

 5つの方法で実現します。

 まず、当社製品をすぐに利用できるように設定作業をシンプル化します。例えば当社の工場内で仮想化サーバーなどのセッティングを済ませて出荷することです。

 次に製品のデザインのシンプル化を図っていきます。当社のブレード・サーバーを購入してお客様が受け取るのは3つの梱包物です。競合他社は60~90のボックスが届きます。

買収でシンプル化戦略を強化

 3つめはITインフラの当社のサービスを集中させること。お客様の業務のアウトソースなどには手を広げません。ITインフラに特化して取り組んでいきます。

 4つめはお客様にサービスを遠隔利用できる体制を整えます。イコールロジックやエバードリーム、シルバーバックといった企業買収で得た技術を応用していきます。イコールロジックを買収したことでiSCSI技術を手に入れ、これでストレージの接続は以前よりずっと「シンプル」になりました。エバードリームの技術でサービスの遠隔操作もできるようになっています。

 最後が、中堅中小企業のお客様にインフラ維持のシンプル化を提供します。例えばインフラのキャパシティ・プランニングや管理をリモートでご提供します。

シェアは追わない

サーバーの販売台数、金額のシェアをどうみますか

ジム・メリット氏
写真:柳生 貴也

 シェアは重要な目安ではありますが単なる指標の1つです。当社は単にシェアを追い求めるのではなく、収益性を重視していきます。既に製品出荷は収益性の高い構成比になっています。具体的にはタワー型、1Uや2Uなどのラック型、ブレード・サーバーなどが適切な構成比になっているということです。台数だけをあえて追いません。あくまでお客様にきちんと価値を提供していくという観点で、サーバーの売り上げを見ていきたいと思っています。

 日本では特にローエンドのサーバーの市場が大きいので、それによってベースのシェアは大きく左右されます。競合他社のように「2万5000円のサーバー」をけん伝するのではなく、「付加価値」という点で当社をアピールしていきます。

現在の日本のマーケットをどう認識していますか。PCメーカーだけで10社以上がひしめいているます。

 ノート・パソコンの売り上げの伸びは前年比で47%です。デスクトップとノートブックの売り上げ構成は、2年前は66:33でしたが、いまは50:50にまでバランスをとっています。

 ただ市場全体の競争は非常に激化して、統合の流れが強まってきています。生き残っていくためには、グローバルなプレーヤーでなければならない。新興市場など急成長を遂げている市場でちゃんと恩恵を受けられるようなメーカーでなくては、今後生き残れません。

統合が進む中で、デルはどうしますか。日本ヒューレット・パッカードは日立製作所にPCをOEM供給してますが。

 OEMは絶対にないということはありません。顧客基盤の拡大できるとか、何らかのメリットが見られましたら、我々も収益性、成長、どんどん拡大していきたいので、そういうことについては検討してまいります。ただ、製造部門で協業していく面で何かやるということでしたら、おそらくグローバルな規模でやると思います。

シンプル化でコストも見えやすく

日本法人の社長に就任し、2年が経ちました。

 評価できると思える点と今一歩のところがあります。

 評価できるのはお客様の我々のサービスに対する認識が前進したことです。非常に喜ばしく思ってます。テクニカル・サポート、お客様のリテンション、eサーベイの結果などについて、満足度を週次、月次、四半期ごとに測定しています。お客様の満足度が向上し、転換期を迎えていると確信しています。

 テクニカル・サポートのセンターの拠点を中国・大連から宮崎に移したことで、日本特有のニーズの理解や日本語によるコミュニケーションが向上したと考えています。サービスも改善しています。以前は障害分析が遅いという指摘が多く、お客様の満足度が低い一因になっていました。そこで本社のあるテキサスからエンジニアを日本に移しました。これが迅速な障害の分析にもつながっています。

 一方、まだ改善の余地があるのはソリューションです。ITのシンプル化でもより多くのパートナー企業と展開していく必要があると認識しています。ただ、最終的にはお客様が製品をそのままデルからお買い上げいただくのか、システム・インテグレータからお買い上げいただくのかをご判断いただきます。我々は製品のシンプル化を進めることで、その投資対効果をお客様がより判断しやすくなるようにしていきます。

デル日本法人 代表取締役社長 兼 米デル 北アジア地域担当副社長
ジム・メリット氏
1981年に米フロリダ大学で機械工学の学士号を取得後、82年に米IBMに入社。製品開発、セールス、マーケティングの管理職を経て、サーバー・グループの副社長を務める。99年に米デルに入社。グローバル・セールス担当副社長などを経て、2006年4月から現職。米国フロリダ州出身。57年10月生まれの50歳。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年3月5日)