
>>前編
昨秋から取り組んでいる製品やサポートの品質改善は、成果が上がっていますか。
製品全般の品質については、かなり改善したと自負しています。何と言っても日本のお客様の品質に対する要求は、世界の中でも非常に高い。日本のお客様の要求にきちんとお応えすることで、ワールドクラスの品質を確保できるはずです。
この半年、品質に関しては本社にかなり訴えてきました。おかげで日本から報告したバグへの対応は、ずいぶん早くなりました。
お客様固有のシステムやサポート・サービスの品質に関しては、「チーフ・クオリティ・オフィサー(CQO)」を昨年9月に任命しました。CQOは正式なトラブル報告経路に関係なく、組織横断的に品質関連の問題に対処してもらっています。本社との間を解決に向けて行ったり来たりしています。おかげで問題の解決にかかる時間を大幅に短縮できました。
技術文書の整備が急務
ただし技術情報をまとめたドキュメントに関しては、これからもっと力を入れて整備しなければいけないと思っています。
確かにパートナー企業からは、ドキュメントの不備に関する不満をよく聞きます。新旧バージョンの差分が分かりづらいとか、新機能ばかりで現場でよく使う機能の説明がないといったものです。
残念ながらご指摘の通りです。製品を買っていただく前に必要な技術情報はあるのですが、買っていただいた後のシステム構築や運用のノウハウ、トラブル対応に関する情報をより充実させ整理しなければいけません。こうした技術情報が充実しているかどうかで、我々の製品や技術を担いでいただけるかが決まります。
先日発表した施策は、まさにそういったフィードバックを受けてのものです。英語の技術情報の翻訳作業をこれからどんどん進めますし、Webサイトも一新します。
本誌注:マイクロソフトは3月5日、ITエンジニア向けの技術支援を強化すると発表した
「ソフトウエア+サービス」という新戦略を打ち出していますが、日本での展開は。
ソフトウエア+サービスは米国でも始めたばかりの構想です。日本で本格的に展開するのは1年以上先になるでしょう。現段階では具体的な話はまだできません。
ただ、すべてがサービスに移るのではなく、ソフトウエアのほかにお客様の選択肢が1つ加わることになるわけで、当社としてそんなに大きな意識の変化は想定していません。もちろんネット経由のサービスなので、ダウンは許されません。厳密な運用が必要という意味で、気を引き締めなければいけないとは思っています。
COO時代は担当でなかったオンラインサービス事業はどう進めますか。
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写真:小久保 松直 |
MSNなどのコンテンツ系のビジネスと法人向けのビジネスでは、求められるプロセスや文化が違います。これらを同じ会社の中で両立させなければいけません。当然、相乗効果を生み出すための議論も進めています。
オンラインサービスは規模の経済が働く事業で、激しい競争があります。マイクロソフトはグローバル企業ですが、日本人に合うコンテンツをタイムリーに提供しなければなりません。グローバルの規模とローカルのニーズの両方を満たすためには、まだまだやるべきことがたくさんあります。
欧米や新興国と比べると、日本のIT市場は伸び悩みが目立ちます。どうすれば日本企業のIT活用が進むでしょうか。
ダイエー社長時代の経験を基に言えば、ユーザー企業が主導するようになれば状況は変化すると思います。現状はITベンダーへの依存度が高いので、簡単なことではありませんが。
私がダイエーの社長を2年間務めてIT業界に戻ってくると、CIOのステータスはかなり上がっていました。CIO(最高情報責任者)出身の社長が登場し、CIOそのものの数も増えていました。それでもIT活用の面で、まだ欧米企業に比べて進んでいるとは言えません。
とにかくユーザー企業との接点を増やして、IT活用の効果や意義を理解していただく。その上でユーザー企業の方にIT活用のリーダーシップを発揮していただけるようにしていきたい。時間はかかるかもしれませんが、日本企業全体の競争力強化に少しでも貢献したいと考えています。
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(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年3月26日)