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【後編】PCでも携帯でもない端末とともに,WiMAX市場を切り開く

>>前編 

サービス開始時の料金は。

 平均して月額3200円で常時接続環境を提供する。この料金は,ADSLの月額料金や携帯電話のパソコン向け定額プランなどを参考にしながら,値段ありきで決めた。

 もっとも料金プランは多くのバリエーションを用意する。例えば組み込み用途のように,通信量は少ないが多くの端末がつながるといったケースでは,もっと料金を安くする。MVNO(仮想移動体通信事業者)への提供も前提に,様々なスキームを用意したい。

当面のライバルは,データ通信の市場に強いウィルコムとイー・モバイルになると考える。これらの事業者に対する強みは。

 我々は後発なので既存のサービスと比べて圧倒的に伝送速度が速いのが強みだ。同じ程度の値段だったら,ユーザーは速い方を選ぶだろう。

2.5GHz帯はなかなか屋内に浸透しづらい周波数帯と考える。この周波数帯の難しさをどのようにとらえているのか。

 屋内のカバーは確かに難しいと考えている。基地局の近くでは部屋の奥まで浸透するが,セルの周辺では窓際までしか入らないケースが多い。それを見越した上で基地局を設計している。

 具体的には,30MHz幅の帯域を10MHzずつ三つに分け,一番低い周波数の10MHzを屋内対策専用の帯域として利用する計画だ。こうすることで,屋内に小型基地局を設置しても屋外の基地局からの電波と干渉しない環境を作れる。

 さらに一般家庭向けには,モバイルWiMAXの電波を受信し,屋内に向けて無線LANを送信するコンバータの導入も検討している。

第3世代携帯電話は将来的にはLTE(long term evolution)へと進化し,モバイルWiMAX並みの速度を実現する。この点からモバイルWiMAXの市場性に疑問の声が聞こえているが。

田中 孝司(たなか・たかし) 氏
写真:吉田 明弘

 LTEはあくまで携帯電話の延長だ。単に速度が速くなっただけでは,今の携帯電話とアプリケーションは変わらないだろう。今の端末では,これ以上速くしても仕方がないのではないか。

 モバイル・ブロードバンドのビジネスを考えた場合,鍵を握るのは組み込み用途だと思う。様々なデバイスに対して数十Mビット/秒の通信速度を常時接続環境で提供できれば,世界は大きく変わっていく。

 例えば家電機器が棚に陳列されている段階で,はじめからネットワークにつながっているような利用シーンだ。ユーザーはその可能性を感じられるだろう。固定通信はネットワークの開通まで,工事や設定などに時間がかかる。こうした面倒をユーザーに感じさせないサービスが可能になる。

 我々はそういった世界がちょうど開くタイミングに,LTEよりも先にサービスを出していける。その点でモバイルWiMAXは有利だと考えている。

2.5GHz帯はMVNOが義務化されている。MVNOに対するスタンスは。

 我々がMVNOを差別して,自分たちだけが有利に事業を展開するのではとよく言われるが,そんなことは全くない。心配しているのは,エリアが不十分な時に勇気をもって参入してくれるMVNOがいるかどうかだ。サービス開始時に一緒にやってくれるMVNOがいれば,とてもありがたい話だ。

 単独で事業を展開しようとすると,端末が高価になり,月額料金を引き上げる必要が生じる。モバイルWiMAXはせっかく端末とネットワークがオープンに分かれているのに,これでは意味が無い。MVNOと一緒に様々な市場の可能性を探っていきたい。

UQコミュニケーションズという企業が最終的に目指すところは何か。

 最大の目標はモバイルWiMAXのネットワークを日本の隅々まで広げることだ。ADSLなどの固定系通信サービスと異なり,モバイルのサービスはつながらないエリアがあるだけで,すべてが無になってしまう。我々は約束したエリアを頑張って作るつもりだ。その上で,自らリスクをとってモバイルWiMAXの利用シーンを描き,市場を立ち上げていきたい。

 将来的にパソコンでも携帯でもない端末がモバイルWiMAXのネットワークを通して利用される市場が生まれれば,事業は成功したといえるだろう。

 我々のビジネスが既存市場の代替でしかないのであれば意味がない。新たなユーザーを開拓し,これまでにない機器に無線機能が入るようになって初めて,事業としての存在価値が生まれる。

UQコミュニケーションズ 代表取締役社長
田中 孝司(たなか・たかし) 氏
京都大学大学院工学研究科電気工学第2専攻修了。米スタンフォード大学大学院電子工学専攻修了。1981年に国際電信電話入社。2001年6月にKDDIのIP事業本部eビジネスシステム部長。2003年4月に同執行役員ソリューション事業本部ソリューション商品開発本部長。2007年6月に同取締役執行役員常務ソリューション事業統轄本部長に就任。2007年8月からワイヤレスブロードバンド企画(2008年3月からUQコミュニケーションズ)代表取締役社長を兼務。趣味は読書。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年3月19日)