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「プロセス・セントリック」がこれからのシステムのカギ

「企業がプロセス・セントリックになっているにもかかわらず、その変化にシステムは追いていない」。米アクセンチュアで全世界のシステム構築や技術、品質管理などの責任者を務めるカールハインツ・フルーター システム・インテグレーション/テクノロジー&デリバリーのグループ・チーフ・エグゼクティブはこう指摘する。経営とシステムのかい離を埋めるには「ITはもっと柔軟になるべきだ」と同氏は提案する。

「システムが経営に貢献できていない」と考えるユーザー企業が多く存在します。どうしてこういう事態が起こってしまうのでしょうか。

 企業経営の今の主流はプロセス・セントリックという考え方です。にもかかわらず、ITは経営の変化に追いつけない。これが問題だと考えています。経営や組織を考える際に業務プロセスを中心に考えるのがプロセス・セントリックです。最近、多くの企業が業務プロセスを重視するようになりました。

 ところがITはプロセス・セントリックになっていない。企業内には20年以上、稼働し続けているシステムがあります。業務が変わって業務プロセスも変わっているのに、システムに組み込まれた業務プロセスは変更できません。

新しい業務プロセスに追いつけないシステムは、刷新するしかないのでしょうか。

 20年以上、利用してきたシステムを簡単に捨てられません。そこで既存のシステムを生かすために、我々はSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づいたシステム構築を提案しています。レガシー・システムには、業務を遂行するために欠かせない様々な機能がある。必要な機能を生かしながら、プロセス・セントリックの考え方を取り入れたシステムに、円滑に移行するためにはSOAが欠かせません。

 SOAに基づいたシステムでは、米オラクルや独SAP、米マイクロソフトのパッケージ・ソフトやスクラッチ(手作り)のアプリケーションを連携して利用できます。Webサービスとして扱えるようにすれば、アセンブラで書かれたアプリケーションの機能もサービスとして利用可能です。

バズワードの裏を見抜く

SOAは「バスワードだ」という懐疑的な意見もあります。

カールハインツ・フルーター氏
写真:山田慎二

 重要なのは言葉の後ろに「何があるか」を考えることです。SOA、クラウド・コンピューティングなど、バズワードだと言う人が多いことは分かっています。IT業界には新しい言葉はよく出てくるから仕方がないでしょう。

 例えばSOAを「古いシステムを再利用しながら、新しいシステムを構築していく考え方である」ととらえることができます。ですが、こう考える10年以上前からある考え方と同じになってしまう。

 では10年前と今は何が違うのか、といえばテクノロジです。WebサービスやXMLといった、異なるベンダー間の製品を連携する標準ができました。そして、様々なベンダーが標準をサポートしています。

 もう1つ大きく変わったのが、パフォーマンスの問題が解消されたことです。10年前はパフォーマンスが出ずにあきらめていたシステムを、今は簡単に構築できます。

 我々はSOAの研究にもっとも力を入れているんです。社員教育や方法論の確立、研究調査などを行っています。社員教育では80%の社員がSOAの方法論の教育を終えました。研究調査では、SOAに基づいたシステムのパフォーマンスの研究や、システムを構築する際に利用するミドルウエアの製品間の違いなどをテーマにしています。

HP・EDS合併の影響はなし、日本はSIの拡大目指す

話は変わりますが、米ヒューレット・パッカードが、大手ITサービス・ベンダーのEDSの買収を発表しました。アクセンチュアへの影響は。

 大きな影響があるとは考えていません。両社が目指しているのは、米IBMであり、当社が得意としている業務の領域ではありません。得意分野の異なる2社同士の単純な合併であり、脅威となるような影響力はないと考えています。

 我々に強みは、ITとビジネスの中間にいること。業界ごとの細かい業務の違いも知っているし、最新のテクノロジも研究しています。同様の話をする企業が、ほかにもあるかもしれません。口で言うのは簡単ですが、実現するのは難しいんですよ(笑)。

 もう1つの我々の強みは、世界各国で均一のサービスを提供できること。企業経営はグローバル化しています。顧客よりも一歩先に海外拠点を作り、サービスを提供することが欠かせません。アクセンチュアは巨大な組織ですが、全世界で同じガバナンスの仕組みの下、動いています。社員教育のメニューも全世界共通です。

日本独自の戦略としてITベンダーのソピアを買収しました。今後も買収は続けますか。

 続けるつもりはありません。買収して企業規模を拡大する戦略はとらない。ただし、まったく買収をしないかというと、そうではありません。

 日本ではSI(システム構築)ビジネスをもっと拡大していきたい。日本はコンサルティング・サービスがメインなので、SIビジネスを拡大する余地があると考えています。特定領域に強みがある企業であれば、買収する可能性があります。ソピアを買収したのは社風が合い、合併しやすいと考えたから。当社は社員を大切にしています。ですから社風が合うかは重要な要因です。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年5月27日)

米アクセンチュア
システム・インテグレーション/テクノロジー&デリバリー
グループ・チーフ・エグゼクティブ

カールハインツ・フルーター氏
1979年アクセンチュア入社、1990年パートナーに。ハンブルク大学でMBA(経営学修士)を取得。職務経歴の大半を金融サービス・グループで過ごし、大規模で複雑な業務変革およびSIプロジェクトを数多く手掛ける。1999年2月に金融サービス・グループのチーフ・エグゼクティブ、2005年5月から現職。アバナード社の役員会メンバーでもある。