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将来への投資であるR&Dは重要,プラットフォームを提供していく

4月下旬に発表した2008年3月期の決算は連結売上高で前年同期比6.1%増の3422億8900万円、営業利益は同20%増の526億 6400万円と好調を維持した。今後は、複数の企業が使うことを前提とした「新世代ビジネスプラットフォーム」の開発に注力し、「単なるSIerでもコンサルティング会社でもないユニークな会社」の成長を推し進める。

2007年度の業績をどうみていますか。

 80点ぐらいでしょうか。売り上げ、利益とも少し伸び悩みましたが、増収増益ですし営業利益率は3期連続で十数%を超えています。

決算以外で評価していることがありますか。

 前期で良かったのは、予期しなかった赤字プロジェクトがほとんどなくなったことです。3年前には10億円を超していました。追い風の影響もありますが、プロジェクト管理を徹底しているのが効いている。

 最近は、トラブル件数も減っています。当社が開発・運用しているシステムに関するトラブルの数が2007年度には2年前と比べて半減しました。

赤字プロジェクトやトラブルが減ることの意味は大きいと?

 予期せぬ赤字プロジェクトやトラブルが起きると、その対処が最優先の課題になってしまう。トラブルが減ると、落ち着いて新しいことができるようになります。そうすると、新たに手掛けた仕事の品質が向上して、さらにトラブルが減るという好循環が起きてくるんです。

今期についてはどうですか。

 主力の証券分野などで不透明な部分はありますが、流通や製造などの分野で急速に需要が落ちるとは判断していません。

 業績については、連結の売上高で5.2%増の3600億円、営業利益で0.6%増の530億円を予想しています。売上原価は4.8%増です。社員を増やしていることもあり労務費が7.9%増、データセンター向けなどでハードやソフトにいろいろと投資したので減価償却費が31.4%増と大きくなってきます。

 将来のことを考えて、R&D(研究開発)への積極投資は継続しますので販売管理費は増えます。こう考えた結果です。

将来の話と言えば、4月の決算発表と同時に、野村総合研究所(NRI)としての将来戦略「ビジョン2015」を発表されました。

 まだ明確に予算化したわけではありませんが、これも将来を見据えた取り組みです。

 目玉の一つは、業界横断的、市場横断的な「新世代ビジネスプラットフォーム」を提供できる会社になろうということです。受託型開発が中心だったビジネスモデルを、提案型に変えていこうということで、4月から使い始めました。

ビジネスプラットフォームとは、あまり聞き慣れない言葉です。

 これまでの当社の事業でいうと、証券システムの「THE STAR」や投信口座管理システムの「BESTWAY」などを考えてもらうと分かりやすいかと思います。ありがたいことに、証券業界の投信窓販の分野では、大半の企業にBESTWAYをお使いいただいています。プラットフォームというか、業界の事実上の標準のようになっているわけです。

 こういったビジネスを、ほかの業界にも広げていこうということです。

コスト削減などのメリットは分かっていても、共同利用を前提にしたシステムは、導入が思ったほど広がらないこともあります。

藤沼 彰久(ふじぬま・あきひさ)氏
撮影:柳生 貴也

 もちろん、すべてがデファクトになるとは限らないでしょうが、同じ業界であればどの企業でも使えるような、共通部分を提供するやり方もあります。その上に、個別の企業が必要なプログラムを追加して使えるようにすればよいのです。

 普通の企業のシステムの7~8割は共通化できるものです。使い勝手の面で少し我慢すれば、半額で開発することが可能になります。これを認識してもらいたいです。

 国としての標準になればよいのでしょうが、これはなかなか難しい。業界の主要な企業と緊密にやり取りするところから始める方法もあるでしょう。それに、新世代ビジネスプラットフォームの提供は短期的な目標ではありません。2015年にある程度まで実現したいと思います。

ビジョン2015では、中国を含むアジアを中心としたグローバル展開にも注力するとしています。

 開発拠点という面でいえば今、中国のオフショアで4000人、国内で7000人の技術者を使っています。この割合をできれば1対1くらいにしたいと考えています。

 それ以外にも、トライアルで始めたフィリピンとベトナムでもオフショア開発を進めているところです。一方でインドは難しい。当社は日本語が完全にビジネスの基本ですから。

 市場としてとらえた場合には、中国に“もう一つのNRI”を作るのが目標です。早くても10~15年はかかるでしょうね。

日本並みの売り上げを実現するために、時間が必要だということですか。

 規模よりも質です。人を育てるのに時間がかかる。今の中国市場というのは、規模だけを追えば何とかなる可能性はあるんです。

 ですが、そんな会社を作ってもあまり意味がない。単なるコンサルティング会社でもSIerでもなくて、両方の能力を兼ね備えた企業にしなければなりません。

 そのために必要なのは自前のコンサルタントやSEの集団を育てることです。

中長期的にも、高い成長率を維持していくお考えですか。

 ビジョン2015では、平均すると毎年、5%の増員、売り上げと利益は7%の成長を目指しています。そして、生産性と付加価値を2%ずつ向上させる。

 売上高が7%成長すれば、利益がもっと増加してもおかしくないんですが、R&Dを増やすことを前提にしているのでこういった数字になります。

成長し続ける上では、営業力が重要です。御社に限りませんが、営業力強化はSIerにとって長年の課題です。

 単純な販売力ではないのですが、影響力というか提案力を含めた営業力は是非、強化したいと思っています。これができれば、自ずと仕事はついてきます。

 ビジネスプラットフォームのような事業を展開していく上で、お客様のマーケットや社内を知ることは非常に重要です。提案力の強化には、情報収集力の強化も欠かせないでしょう。

ソリューションの提案力を高めるためは、全社的な仕組みが必要だと思います。

 当社はコンサルティング業務を手掛けてきましたから、システム開発の部隊とコンサルタントが一緒になって、ビジネスに取り組むことができるのです。業界の分析や顧客への提案をもっと増やしていきます。

 既に、経営ITイノベーションセンターや、流通分野のサービス・産業システム事業本部などがこういった活動を手掛けています。サービス・産業システム事業本部にはコンサルタントとして育った人材が多数いる。

 ここでは、生産・物流・販売のすべての分野の革新をいかにソリューションとして実現するかに取り組んでいます。流通分野は実証実験のようなものを含めて既に5年以上の経験があります。まだ規模は小さいのですが、最近ではヘルスケアの分野にも取り組み始めました。

4月から会長を兼務されています。

 世代交代を進めようという意図はあります。例えば、副会長の鳴沢(隆)さんと私は昭和47年(1972年)の入社なんです。50年以降に入社した世代へのバトンタッチは意識しています。

野村総合研究所 代表取締役会長兼社長
藤沼 彰久(ふじぬま・あきひさ)氏
1950年生まれ。74年東京工業大学大学院卒業、同年に野村コンピュータシステム(現・野村総合研究所)に入社。94年に取締役情報技術本部副本部長。常務取締役情報技術本部長兼システムコンサルティング部担当、専務取締役証券・保険ソリューション部門長などを経て、2002年4月に代表取締役社長に就任。08年4月から会長を兼任

(聞き手は,中村 建助=日経ソリューションビジネス編集長,取材日:2008年4月30日)