PR
米Accentureのステファン・ナン氏(グリーンITサービス グローバル統括パートナー)
米Accentureのステファン・ナン氏(グリーンITサービス グローバル統括パートナー)
[画像のクリックで拡大表示]
アクセンチュアの森 泰成氏(システムインテグレーション&テクノロジ本部インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー)
アクセンチュアの森 泰成氏(システムインテグレーション&テクノロジ本部インフラストラクチャコンサルティング統括パートナー)
[画像のクリックで拡大表示]


情報漏洩対策や法対応といった社会的な要請によって,IT部門が業務プロセスの見直しや情報システムの改良などを迫られるケースが増えている。IT部門にとってこれらの業務は,本来推進すべき業務の効率化や企業戦略の後押しといったミッションより優先せざるを得ず,大きな負担になることが多い。グリーンITもその一つなのか。「IT部門にとってのグリーンIT」とは何かを,アクセンチュアに聞いた。

(聞き手は福田 崇男=日経コンピュータ
撮影は山西 英二)

企業のIT部門は,グリーンITをどのように捉えればよいのでしょうか。

ナン氏 欧米企業では,ITの省電力化や,ITを利用した環境配慮はトップダウンで進んでいます。経営層はグリーンITを推進しています。環境対策は企業の社会的責任だと捉えているためです。日本企業もそのような意識を持つ必要があるでしょう。CIO(最高情報責任者)がIT戦略を練るうえでの大きな要因になりつつあります。

森氏 グリーンITは,IT部門がこれまで求められてきたセキュリティやコンプライアンスなどとは全く異なる,新しい価値基準です。法対応とは異なり,今のところは取り組まなくても特に罰則を受けることはありません。

 IT部門としては業務効率化やコスト削減といった目の前の課題があります。環境対策自体が経営層にとっての課題という位置付けであるため,IT部門にまで浸透していないのが実態です。今後は,グリーンITを意識して情報システムを構築・運用することを求められていくでしょう。その意味ではグリーン ITを,どのようにIT部門の具体的なアクティビティに落とし込んでいくかが課題になると思います。

IT部門にとって,環境分野はなじみがありません。主体的にグリーンITに取り組むのは難しいのではないでしょうか。

森氏 環境を担当する部門を置いている企業が増えています。そういった部署とIT部門が連携してグリーンITを進めていくことになるでしょう。意識の高いIT部門なら自身でグリーンITに取り組むでしょう。ただ,環境対策が経営課題と捉えられている現状では,実行体制や具体的な手法に関する議論にまで至っていないと見ています。

ナン氏 欧州や北米の企業でも同様です。CIOがグリーンITをうまく利用して,経営層にIT戦略を納得させることが求められています。

グリーンITの効果を測って企業価値を向上させる

グリーンITが注目を集める前から,IT機器の省電力化やサーバー統合を推進してきたIT部門もあります。

森氏 たしかにその通りです。ただ環境対策は経営課題。これまでの取り組みが環境の側面でどの程度の効果があったかを,キチンと測って経営層に伝えているかどうかが重要です。企業価値につなげなければならないのです。

ナン氏 これまでグリーンITに取り組んできたIT部門でも,データセンターやIT機器の省電力化がその中心です。業務プロセスを変え,ITを使って企業活動における二酸化炭素(CO2)の排出量削減を進める取り組みはこれからです。その意味では,自社の成熟度を測り,推進計画を練る必要があるのではないでしょうか。アクセンチュアはGMM(Green Maturity Model)という,企業のグリーンITへの取り組みを評価し,具体的なアクションにつなげていく手法を提案しています。

グリーンITを進めるにはコストがかかります。経営層にグリーンITの取り組みを納得させることは,現状では難しいのではないでしょうか。

ナン氏 今や環境対策は,それが金銭的なプラスにつながる時代です。CO2排出量を削減するといえば,経営層も注目します。グリーンITはテクノロジの話だと思われがちですが,業務プロセスや社内体制など,もう1つ高いレベルの議論をしていく必要があります。

森氏 日本の場合,電力を削減することは電力料金を削減することにつながります。こうしたコスト削減効果と,グリーンITを進めることで環境対策としての効果があることを,IT部門が経営層に対してしっかり主張していくべきです。

ナン氏 システムを構築・運用していくうえで,グリーンITの側面でしか効果が見込めない施策を推進するのは難しいでしょう。ROI(投資効果)は必要です。ただ数字には表れないメリットもあることを踏まえた経営判断がCIOに求められます。

IT部門は,考え方を変えなくてはならないのでしょうか。

森氏 IT部門の立ち位置は,企業によって異なります。要件を聞いてシステムを企画・構築するスタンスのIT部門もあれば,企業価値を積極的に高めることに主眼を置くIT部門もあります。グリーンITに関しても同じです。リーダーにもなれれば,受け身にもなれます。その意味ではIT部門にとって,社内で存在感を発揮するためのチャンスなのです。

ナン氏 IT部門にとってグリーンITは,社内の業務を変える大きな契機になり得ます。サーバー統合や仮想化技術などには対応していく必要性があるでしょう。