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【後編】ネットワークは企業の神経系,高い保守力がいっそう重要に

>>前編 

海外での事業はどうか。

 現在22カ国52拠点に現地法人や事務所を持っている。ここでは法人系のビジネスが中心だ。

 日本企業はどんどん海外へ出ているし,工場もあちこちに作っている。我々も日本企業が出ているところへ出て行こうという考えだ。ただし,日本企業だけが顧客というわけではなく,日本の企業が半分,海外資本の企業が半分といった割合だ。

 海外での売り上げは成長しており,1000億円を超えようとしている。NTT持ち株会社が2010年度の海外売り上げの目標を4000億円としているが,NTTコムはそのうちの半分くらいを達成したいと思っている。

 グローバル企業をサポートするには4種の神器がいる。ネットワークとデータ・センター,そしてSI(システム・インテグレーション)と保守力だ。これらがそろって初めてユーザーに満足してもらえる。

 グローバルで見るとまだデータ・センターが足りないと認識している。国内では毎年200億円くらいの投資をしているが,グローバルでは不十分だ。

 SIに関してはアジアならNECと提携して,SAPの構築サービスを提供している。米国でも,ある小さなSI企業と組んでいる。

 グローバルのビジネスはまだ不十分だと思っているが,英国にあるテレマークという会社が実施した「国際データ通信サービスのグローバル顧客満足度調査」では日本からはNTTコムだけが選ばれて,総合第1位の評価を得た。

和才 博美(わさい・ひろみ)氏
写真:柳生 貴也

事業の展開の中で,海外企業を買収することはあり得るのか。

 NTTコムとしてはグローバル・カバレッジ,特にサービス・カバレッジを広げたい。その際,場合によってはM&Aを実施することもあるだろう。私の関心はどちらかというと(通信インフラ系の事業者よりも)SI系とホスティング系だ。この分野は直近の課題となっており,パワー不足を感じている。

先日,「マネージド・クオリティー・オペレーション」を発表したが,この狙いは何か。

 高信頼保守に力を入れるということだ。回線が切れたり,システムが故障したときにどのような対応ができるか,あるいは最初から切れない,故障しないネットワークをどうやって作るかは,最終的には保守力がものをいう。

 ネットワークはコモディティ化していると言われるが,私は全然そうは思わない。それどころか企業の神経系としての重要性が増している。

 メーカーでは,オペレーションはグローバルに展開していて,工場単位でそれぞれが部材を分担・融通し合っている。こういう状況でネットワークが切れると,グローバル・オペレーションに支障を来す。一つの工場で発生した障害がきっかけで,全世界の生産がストップする。

 このような中では,ネットワークが切れたり故障してもすぐに回復させる力こそがユーザーからの高い評価につながる。ここが我々の付加価値であり,さらに強化したい部分だ。

 現在ネットワークの料金が下がる傾向にある。その中で,ユーザーが「最後はやっぱりNTTコムにお願いしたい」と言ってくださるのは,我々が高い保守力を持つからだ。これこそがNTTコムのサービスを他と差異化する重要な要素になっている。

トラフィックが急増する中で,OCNへの投資はどうか。

 それはもう大変な投資をしている。インターネット接続事業は収入が一定なのに費用がかかり,なかなか苦しい状況にある。

 ユーザーは24時間ずっとネットを使っている人がいる一方で,同じ料金なのにほとんど使っていない人もいる。これでは不公平だ。

 大量に使っているユーザーには,電力会社がやっている「30アンペアがいくら」という契約料金を導入するなどして,使った分の料金を支払ってもらう考え方もあるだろう。

 先日,業界団体が「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」を発表した。今までOCNでは帯域制御をやってこなかったが,こういうガイドラインがきちんと示されるのであれば,帯域制御も考えたい。

NTTコミュニケーションズ
代表取締役社長

和才 博美(わさい・ひろみ)氏
1946年,大分県生まれ。69年3月に九州大学工学部電子科を卒業。同年4月に日本電信電話公社(現 NTT)に入社。その後,技術系だけでなく企画や人事,国際業務を幅広く経験。2002年6月にNTT持ち株会社代表取締役副社長。2004年6月に NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長。2005年6月から現職。趣味は読書とゴルフ。週末は愛犬との散策を欠かさない。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年5月16日)