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【前編】音声の収入減は避けられない,ソリューションとIP系事業を加速

長距離・国際通信からインターネット接続サービスの「OCN」,ポータル・サイトの「goo」まで,幅広いサービスを手がけるNTTコミュニケーションズ(NTTコム)グループ。音声系サービスの減収に直面するものの,それを「Arcstar IP-VPN」などのIP系WANサービスとソリューション事業で埋め合わせる。同社の和才博美社長に,NTTコム・グループの今後の方向性について聞いた。

NTT持ち株会社は5月の決算発表の場で「サービス創造グループ」を目指すという新・中期経営戦略を打ち出した。NTTコムはその中でどのような役割を担うのか。

 国内ではNGN(次世代ネットワーク)が一つの大きな事業になるだろう。我々は以前からインターネット接続サービスやポータル・サイトの「goo」など,上位レイヤー型の事業を展開してきたが,今後はNGNのメリットを生かす新しいサービスも提供したい。

 NGN はフレッツ網の単純な置き換えにはならない。今後,我々が提供するIP-VPNや広域イーサネットといった法人向け通信サービスの一部を,NGNが取り込んでいく。まだ残っている専用線やフレーム・リレーといったいわゆる“レガシー回線”も,いずれ早い時期にNGNに巻き取れればよいと思っている。

2007年度の決算ではソリューションやIP系通信サービスの事業は伸びたが,音声系は低下している。

 音声系は苦しい。これからNTT東西の「ひかり電話」などのユーザーが増えると,NTTコムの収入は減っていく。ひかり電話ではNTTコムに全くトラフィックが流れてこないからだ。

 もっとも,我々は電話サービスはそうなっていくと覚悟して事業をやってきた。音声系の減収を補うためには,ソリューションとIP系の事業をもっと加速させる必要がある。

 2008年度の事業計画では,ソリューションとIP系を頑張りたいのだが,計画通りにNTT東西のひかり電話が売れていくと,NTTコムは500億~600億円の収益減になる。2008年度は増収は難しいと考えている。

やや弱気な予測に見えるが。

 NTT東西が出しているひかり電話の計画から考えるとこうなる。それから「Skype」のなどソフトの台頭もある。加えて,レガシーの専用線の落ち込みも当然ある。

 ただし一つ説明すると,グループ決算にはNTTコム単体の収益しか出していない。実はこれに加えてNTTぷららやNTTPCコミュニケーションズといったNTTコム・グループの数字がある。NTTコム・グループ全体としての連結ベースで見れば,そこまで収益は落ち込まないだろう。できるだけ増収増益を確保できるようにしたい。

ソリューション事業の強化はどのように進めてきたのか。

和才 博美(わさい・ひろみ)氏
写真:柳生 貴也

 音声系の落ち込みを予測して,3~4年前から力を入れてきた。具体的には,コンサルタント営業と呼ぶものだ。この分野では,ネットワークやシステム回りを含めて,ユーザーのニーズを的確につかみ,提案を出していくことがポイントになる。

 人員も強化した。NTT東西から1200人に移籍してもらった。その半分くらいはシステム・エンジニア(SE)だ。NTTコムの商材を勉強してもらうのに少し時間はかかったが,1200人が増えたことでいろいろな“深掘り”ができるようになった。

 既存のユーザーはもちろん,これまでコンタクトを取れなかった新規のユーザーへも対応できるようになった。これがソリューションの売り上げが増えた理由の一つだと思う。

 今後は,浜松町の新オフィスに法人部門を集約した効果も出るだろう。そこには4000人がいて,SEも一緒に入っている。生産性が今までよりも高まると期待している。

 上位レイヤー型のサービスも大切だ。例えば最近は「Biz Communicator」を始めた。これはシン・クライアントのサービスで,海外からでもオフィスにある自分のパソコンを呼び出せるものだ。こういう新しいサービスをどんどん出していきたい。

子会社のNTTレゾナントがポータル・サイトのgooを提供している。「Yahoo! JAPAN」や「Google」と比べてgooの独自性は何か。

 あいまい検索を含めて,日本語検索が非常に優秀なところだ。ユーザーが望む情報を推定して,本当に欲しい情報を的確に表示できる。

 私はいつも言っているのだが,これからはコンシェルジュ型のサービスが必要だ。朝,目を覚ましてパソコンを入れると,もうそこにはIT関係の重大ニュースがばっと映像付きで出ているといったサービスが望まれる。個人にとっての検索エンジンと呼べるものだ。

 そのようなサービスを作っていきたい。こうなると検索エンジンが個々のユーザーを理解して,インプットに応じてどういうアウトプットを出すかを競い合うようになるだろう。

>>後編 

NTTコミュニケーションズ
代表取締役社長

和才 博美(わさい・ひろみ)氏
1946年,大分県生まれ。69年3月に九州大学工学部電子科を卒業。同年4月に日本電信電話公社(現 NTT)に入社。その後,技術系だけでなく企画や人事,国際業務を幅広く経験。2002年6月にNTT持ち株会社代表取締役副社長。2004年6月に NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長。2005年6月から現職。趣味は読書とゴルフ。週末は愛犬との散策を欠かさない。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年5月19日)