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クロスメディアの時代,ソリューション力で勝負

電通が「クロスメディアを核としたソリューション力の向上」などの目標を掲げ、既存マス媒体にインターネットを加えた、広告主企業へのクロスメディア提案を強化している。ネットマーケティング分野を担当するインタラクティブ・コミュニケーション局長の高島氏(7月1日付でインキュベーション室長に就任)に、今後の事業戦略、取り組みについて聞いた。

企業の宣伝・販促活動におけるネットの位置付けはどう変化しているか。

 インターネットは、利用者数が非常に伸びて人口普及率は68.5%、接触時間のシェアも11.7%とテレビの73.5%に次ぐ第2位となった。ネット広告の市場規模も、2007年の「日本の広告費」(電通調べ)では6003億円と雑誌を抜いて第3位。もはやインターネットはクライアントにとっても、宣伝活動にとっても無くてはならないものになっている。

 役割の観点で言うと、インターネットは情報を伝えるというメディア機能に加えて、消費者の反応が直接得られる双方向ということが大きな特徴。消費者同士のコミュニケーションも発生させられる。Webサイトで直接反応が得られ広告効果を把握しやすいということで、完璧ではないがアカウンタビリティ(説明責任)のあるキャンペーンができている。

活用の焦点はどのあたりに移っているか。

 インターネットでは、リーチの拡大とともにリッチ広告の表現力の向上やクチコミ効果によって、自動車など耐久消費財的なものを扱うスポンサーの出稿が増えた。さらに、特にケータイで一般消費財のスポンサーが増えている。また、最近はリッチ広告で、テレビCMとの相乗効果やブランディング効果の高いものが出てきた。リーチ的にはマス媒体ほどではないが、接触した後の効果はかなり高い。リッチメディアは我々が得意とするところ、伸びる土壌なので、積極的に手掛けていきたいと考えている。

 いずれにしても、ケータイを含めた大くくりで言うと、まさにネット抜きには考えられない状況。マス媒体だけのプランニングを持っていっても、クライアントは「何これは?」という感じになる。当然、我々もクロスメディアということを言っているが、クライアントから言われているのが現状といえる。

ブログなどのCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の普及で、企業と消費者の関係はどう変わると見ているか。

 クライアントからは、クチコミの活用を相談されることが多くなった。消費者の状況が変わっているのは間違いない。この変化に対してどう対応していけばよいのか、試行錯誤しているのが現状ではないか。

 ただ、CGMが広告の役割を脅かしているかというとそうでもなく、消費者は「これは消費者の情報発信、これは企業からの情報」と意識して判断しているのだと思う。広告の効きを良くするのもクチコミの評判だったりするため、そうしたことを含めて、どうやって広告を効かせるかを考えている。

 しかし、CGMは使い方が難しい。間違えると大変なことになるため、慎重にやらなければならない。まあ「ややこしい世の中になりましたね」ということであり、新しい時代に入ったといえる。

ケータイ活用の現状評価、課題は。

高島 鉄朗 氏(たかしま・てつろう)氏
撮影:山田 愼二

 ケータイの活用は発展途上といえ、3000社以上の電通のクライアントを見ても、常設のケータイサイトを持っている企業の方が少ないだろう。逆に見れば伸びしろが大きく、これから成長する分野。パソコンネットのこれまでの伸び率とそれほど変わらずに、それが遅れてやってきているという感じだ。

 また、これまでパソコンネットでは自動車や金融商品などの説明が必要なものはWebサイトに誘導し、そこで詳しい情報を提供するというやり方があった。詳しい説明のいらない一般消費財などに弱い面があったが、そこでケータイが非常に活用され始めた。パソコンとケータイで、それぞれ役割分担、使い方が違うといったようになっている。

 テレビとのダブルウインドウということでも、パソコンよりケータイの方が強い。特に10代はケータイになる。ただ、ケータイを活用するということになかなか実感が持てない企業も多いため、セミナーなどの地道な啓蒙(けいもう)活動は必要になる。

クロスメディア対応に向けた電通の体制は。

 わが社には(テレビ、新聞などの)メディア、営業やクリエーティブなどのセクションがある。営業がプロデューサーの役割を果たし、さまざまな相談に我々がすべて答えられる体制をとっている。クロスメディアのソリューションをパターン化するのは難しい。企業やブランドによって問題もさまざまで、解決策も異なる。個別の案件に応じて各セクションと連携して現場で柔軟に動いている。

 その都度、ベストのキャンペーンを設計するにはどうしたらいいのか。企業の状況に応じて、カスタマイズしながら提案している。セクション間の領域というものを取り払ってどんどん動いている。そこが電通の強さともいえる。

ネット分野の強化では、ネット広告代理店のオプトと資本・業務提携。2008年5月に発表した経営方針では、ネットメディア市場における広告シェア20%の早期達成を目標に掲げた。

 オプトとの提携が本格的に動き出したのは4月から。20人くらいがオプトから出向し、電通の担当者と一緒になってお得意先を回ったりしている。こうしたクライアント対応では、ネットの知識がある人材が必要になる。それをゼロから育てていくには時間がかかる。そこでオプトと提携した。

 また、これまで電通はSEM(検索エンジンマーケティング)の分野が弱かった。その分野を強化する狙いがあった。オプトは「ADPLAN」などの効果測定関連の優れたテクノロジーも持っている。

 ネットメディア市場におけるシェアは今、15%を少し切っている。20%の早期達成に向けては、SEM分野の強化でオプトに期待している。提案力が相当上がるので、無理な数字ではないだろう。

クロスメディアのソリューション力の強化に向けては、IT系企業などと競合する面もあると思うが。

 クロスメディアに対応できるのは、我々のような総合広告会社しかないと思う。その点では、これから先あまり不安な部分はない。トータルなハンドリングは、広告代理店に任せていただきたいということ。逆に言えば、そういうときに頼られる企業であり、最適なサービスを提供できることが求められる。そうしたサービスが提供できるように今、動いている。クロスメディア対応に必要な、SP(セールスプロモーション)やメディアプランなどさまざまな業務を経験した人材や、それを経験できる部署・場があることがわが社の強み。こうして最適なクロスメディアのキャンペーンが実現可能になる。

(聞き手は,渡辺 博則=日経ネットマーケティング編集長,取材日:2008年5月21日)

電通 インタラクティブ・コミュニケーション局長
(インタビュー当時)

高島 鉄朗 氏(たかしま・てつろう)氏
1956年生まれ。79年早稲田大学第一文学部人文学科卒業後、電通入社。ラジオテレビ局などを経て、97年にマルチチャネル・ビジネスセンター衛星事業部長。99年衛星メディア局BS・CSメディア部長、2004年衛星メディア局次長、05年10月インタラクティブ・コミュニケーション局次長、06年5月に同局長に就任。07年7月からはインキュベーション室長を務めている。