PR
ゼロスタートコミュニケーションズ 専務取締役で“炎上アナリスト”を自称する伊地知晋一氏
ゼロスタートコミュニケーションズ 専務取締役で“炎上アナリスト”を自称する伊地知晋一氏

 7月20日、毎日新聞社は英文ニュースサイト「毎日デイリーニューズ」(Mainichi Daily News)上のコーナー「WaiWai」で下劣かつ誤った記事を配信し続けてきたことに対し、新聞1面で謝罪し、中面2ページにわたって内部調査の結果を公表した。8月に入り、「毎日jp」の広告配信も復活し始めている。ただネット上で起きた「炎上」「祭り」はいまだ鎮火していない。毎日新聞社は事件の対応をどこで間違えたのか。また、企業はこの事件を通じて何を学び取ったらよいか。かつてライブドア堀江社長の逮捕時に史上最大級のブログ炎上を経験している“炎上アナリスト”、ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役の伊地知晋一氏に話を聞いた。
(聞き手は小林 直樹=日経ネットマーケティング

毎日新聞社の事件対応はどこをどう間違えたとみているか?

 今回ネット上で起こったのは、「2ちゃんねる」を中心に批判レスが殺到して個人ブログなどでも格好の話題になったということ。有名企業で不祥事があれば大なり小なり起こる「祭り」と呼ばれる現象で、ネット普及初期からよくあることだ。

 一方、批判の対象となる企業や人が運営するブログ・SNSなどに直接非難・中傷コメントが殺到することを、私は便宜上「炎上」と定義して、「祭り」と分けてとらえている。

 「炎上」の場合は、自社運営サイトが荒れる格好になるので、お詫びをするとか、コメントを削除して沈黙するとか、対処策の良し悪しはあるものの何らかの決断を迫られる。ところが「祭り」の場合は自陣が直接荒れるわけではないので、感度が鈍くなってしまう。「どうせすぐ終わるだろう」とタカをくくる。毎日新聞も恐らくそう考えたのではないか。企業広報、不祥事対応としてみると、明らかに失敗事例だ。

初動の遅れが響いた?

 今回の事件は、信ぴょう性の薄い低俗な雑誌記事を転載(一部改変)して「毎日」の冠を付けて配信し続けたということで、火種が大きすぎる。だから小火(ぼや)ではおさまらない。ただ、大火、延焼を未然に防ぐポイントはあった。そこを逃して放置してしまった。

 記事内容に対するクレームは以前からあったようだし、まとめサイトを案内・誘導するコピペが2ちゃんねる内で5月ごろからよく張られるようになった。こうした動きを社内で察知していた人はいたはずだ。

 この段階で不適切な記事であったことを率直にわびて、責任者に相応の処分を下していれば、鎮火も可能だったように思う。ところが、ここでスルーしてしまったために、ネット上の騒ぎを嗅ぎつけた「J-CASTニュース」が記事にして、それをYahoo!JAPANがトピックスで取り上げるという最強の情報波及ルートによって、“悪事”がネットユーザーに広く知られることになった。こうなってから後悔しても後の祭りだ。

“祭られやすい企業”というのはあるか?

 祭られやすい素地というのはやはりある。同じことをしでかしても、無名より有名な方が企業も人も叩かれやすい。特に他者に厳しい姿勢を示す企業・人は、それがそのまま跳ね返ってくる。不祥事を起こした企業をとことん問い詰めるマスコミはその典型だ。

 中でも毎日新聞は、2007年に連載した「ネット君臨」で2ちゃんねるの書き込みや炎上を取り上げては「ネットの負の側面」として批判する記事を書いてきたため、“発火点”はほかのメディアと比べても格段に低くなっていた。カンタンに火が点きやすい状態のところで事件が起きた。