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ユーザーの書き込みに対価を払うクチコミマーケティングについては、どう考えているか。

田中 実(たなか・みのる)氏
撮影:山田 愼二

 コミュニティ自体をお金にするつもりが無いところが、他事業者とは違うのだと思う。我々のコミュニティは、サンクチュアリ(聖地)といったものであり、そこで企業とタイアップしてバズ(クチコミ)を起こすことは考えられない。価格.comには、ポイントも報酬もないところでたくさん書いている人がいる。「俺たちのおかげでこの会社は持っている」という気概を持っている人が多い。そうした中で、バズを起こしても短期的にはお金になるが、中長期で見ると「何だ、広告だったのか」となり、コミュニティは廃れていく。コミュニティは中立性を持つべきだ。

 ただし、クチコミをお金に換えていないということではない。我々の収入源は、ほぼすべてが広告ともいえる。(送客時の成果報酬などのほか)サイト内で検索すると、クチコミページにも検索連動型広告は出てくる。PRの枠もあり、そこには広告が入る。つまり、混ざった形では出さないということだ。

企業のマーケッターにとって価格.comとは。

 媒体価値は、「ボリューム×CVR(コンバージョン率)」で表せる。ほかのサイトではニュースを見に来たり、天気予報を見に来たりと、利用者にコマースに関係ない人が含まれている。価格.comの利用者には、買いたいという気持ちが極めて高い人が多い。例えば、家電メーカーのWebサイトへの送客ランキングを見ると、「Yahoo! JAPAN」「Google」と我々がほぼ並ぶ。ユニークユーザー数が少ないにもかかわらず両者と拮抗(きっこう)しているのは、CVRが非常に高いということ。こうしたことを企業にもっと説明していく必要があると考えている。

 我々はROS(リターン・オン・サーバー)と言っているが、サーバー1台当たりの「稼ぎ出す価値」が非常に高い。価格.comには、明確な目的があって書く・見るという人が来る。利用者の“濃さ”が違う。

今後の課題は。

 利用者の数を考えると、まだ売り上げ、利益の規模が小さい。5月にグループ全体のサイト利用者数が2300万人を超えたが、月間の売上高は7億円程度。いくら何でも少ないと思う。現状では広告を売る営業マンが極端に少なく、子会社を含めた社員200人の1割にも満たない。ただ、プル型の広告販売が可能な検索連動型広告などでトラフィックを自然にお金に換えられるようになったことが追い風といえる。

 今後しばらくは、(送客などの)集客サポートに力を入れる。集客が増えると商品検索も増え、その結果、検索連動型広告などによる広告収入も増える。

 また、ケータイサイトのページビュー(PV)が伸びている。「価格.comモバイル」でも月間PVが7000万になったが、食べログ.comなどの地域情報に絡むようなサービスの方が、もっと急激に伸びている。エリア限定のメディアにすれば、収益のポテンシャルも高まる。地域ごとのレストラン、美容院、病院などの広告ニーズも取り込めると考えている。

 2009年3月期の売り上げ90億円、経常利益29億円という目標を達成するために、2009年3月にはカカクコムグループ全体の利用者数を月間3000万人まで引き上げたい。その点で努力が足りないと思うのは、まだ価格.comや食べログ.comといった名前を知らない人が多いということ。認知度を上げるだけでも、利用者は増やせる。今後はそこに力を入れていく。

カカクコム 代表取締役社長 
田中 実 (たなか・みのる)氏
1962年兵庫県生まれ。86年東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業後、三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。ヒューストン支店コーポレートファイナンスVP、台北支店日経課長などを経て、2001年にデジタルガレージ入社。02年カカクコム取締役に就任。取締役副社長などを経て、06年6月から現職。

(聞き手は,渡辺 博則=日経ネットマーケティング編集長,取材日:2008年6月30日)