PR
【後編】異文化社員で化学反応を起こす

>>前編 

BT(ビジネステクノロジ)をどうやって顧客企業に提案しますか。

 BT推進を担う組織を今年3月に設けました。グローバルにはない日本独自の組織で私が直轄します。

 さらに社員の1割に当たる200~300人の中堅社員を、BT推進を念頭に置いて意図的に異動させます。戦略的に人を動かさないと、社員の心も変わりませんから。

 当社自身をショーケースにしようともしています。世界170カ国で事業を展開する10兆円企業の事例ということで、マーク・ハード(CEO)が非常に力を入れています。先ほどのプリンタ最適化の取り組みをはじめとする社内の取り組みを積極的に顧客へフィードバックします。

日本のIT市場の成長率は2%程度。こうした厳しい市場環境で、HP全体が目指す2ケタ成長はどうやって実現するのですか。

 日本HPの売り上げは国内で6~7位。大手に比べれば、まだまだホワイトスペース(未開拓地)が大きいと楽観視しています。

 例えばアウトソーシング事業。日本IBMはサービス事業の30%くらいがアウトソーシングです。NTTデータは45 %ほど、富士通も30%くらいでしょうか。これらに比べると当社の売り上げに占めるアウトソーシングの比率ははるかに小さい。裏を返せば大きなチャンスがあるということです。

 もちろん国産大手をはじめとした競合他社と同じやり方で入ってもだめでしょう。ですから先ほどのBTを含めて知恵を絞っている最中です。

パソコンやプリンタなどのコンシューマ(一般消費者)向け事業は、日本で存在感が希薄です。

小出 伸一(こいで・しんいち)氏
写真:小久保 松直

 やはり強化していくべきと考えています。私見ですが、当社ブランドの認知度を高めてエンタープライズ事業にも良い効果をもたらすはずです。

 家庭や学校にあるパソコンがHP製品だったとしましょう。大学でもHPのパソコンを先生から薦められた。こういう人が企業に入ったときHP製品に対するイメージは、そうでない人とまったく違うはずです。

 これからはパソコン以外にもインテリジェンスを持った機器がどんどん増えていきます。そのときにコンシューマとの接点を持っておくのは、今後のエンタープライズ戦略を考えても意味があることだと思います。

小出カラーはどう打ち出しますか。

 カラーですか。先ほど申し上げたBTを推進するための営業スタイルをまずは確立したいですね。

 お客様の経営そのものに貢献するのがBTだとすれば、私のこれまでの経験が生かせるはずです。幸いにして経営層の方々とのチャネルもあります。

 当社のほうからお客様にBTを提案するスタイルに変わる必要があります。そのためには顧客企業のCIOの痛みやCEOの期待をもっと理解しないとね。常に仮説提案ができるよう、営業担当者のマインドを変革していきます。

 最終的には私と社員が同じスピード感を持つようにしていきたい。日本HPはそれができる会社だと確信しています。

 ご存じの通り、HPには「HPウェイ」という社是があります。でも今のHPはDECやコンパック、タンデムなどが合流した寄り合い所帯。私自身も入社前は「HPウェイは昔のこと。今はたすきがけ人事や派閥争いが絶えないのでは」と危惧していました。

 ところがこれは違った。今の日本HPはHPウェイを根底に、各社の異文化がうまく融合したすばらしい会社になっています。

 こうした異なる文化や遺伝子を持つ社員をもっと活性化させるため、社員同士で化学反応を起こさせたいんですよ。成長の起爆剤になるような大きな爆発力のあるエネルギーを生み出したいですね。

 化学反応を起こす「公式」をきちんと作ってそれを現場に伝えていく。それが私の役割です。

 今度は新たに2兆円規模のEDSが加わります。間違いのないガイドと公式を当てはめれば、さらにすごい爆発力が生まれるはずです。

日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員
小出 伸一(こいで・しんいち)氏
1981年3月、青山学院大学経済学部経済学科卒。同年4月、日本IBMに入社。主に金融機関向けの営業担当として頭角を現す。同社の出世コースである社長補佐や米IBMへの出向も経験。2002年、43歳で取締役に就任。中核のアウトソーシング事業や金融事業を統括。2005年4月、常務執行役として日本テレコム(現・ソフトバンクテレコム)に入社。2006年10月、代表取締役副社長COO。2007年12月から現職。1958年10月生まれの49歳。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年6月30日)