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 ストレージの世界で流行している最新技術が,シン・プロビジョニングである。物理ディスク容量を超えるボリューム容量を設定可能にするものだ。この技術に早期に取り組んだベンダーが,米3PAR。同社は2008年9月10日,さらなるディスクの節約につながる要素技術を備えた後継機「Tクラス」2製品を発表した。同社が考えるポスト・シン・プロビジョニングの姿について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro



米3PARでMarketing担当副社長(VP)を務めるCraig Nunes氏(写真左)と,日本法人の3PAR代表取締役社長の加藤賢造氏(右)
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新機種の注目すべき点は何か。

 新機種「3PAR InServ Tクラス」の最大のポイントは,データを縮小させる“シン”機能を,ソフトウエアではなく新型のASIC(特定用途向けのIC)上に実装した点である。シン機能をシリコンに組み込んだという意味で,我々は「Thin Built In」と呼んでいる。この機能を搭載した新型ASICが,Tクラスに搭載したGen3 ASIC(第三世代のASIC)である。

 Gen3 ASICは,性能の向上にも寄与している。各種データ処理やRAID 5処理といった機能はそのままに,DMA(Direct Memory Access)エンジンを2個から9個に増やした。CPUを介さずにディスクからメモリーへデータ転送する能力が向上し,ノード間クラスタリング接続時の性能を高めた。最大で8台までというノード数に変更はないが,クラスタ構成時の処理性能が上がっている。

 ASICの高速化やバックプレーンの高速化などにより,性能は現行機種「Sクラス」の2.25倍になった。SPC-1ベンチマーク試験において,米IBMのSystem p5 595サーバーとの組み合わせで,1秒あたり平均22万4989.65回のI/O処理を達成した。

ASICにシン機能を搭載したThin Built Inについて詳細を聞かせてほしい。

 「Zero Detection」(ゼロ検出)機能をソフトウエアではなくシリコンで実現している。この機能は,ディスクに書かれたデータのうち,データが書かれていない部分(スペースやnull)や,ゼロ・データで埋められている部分を検出する。さまざまなアプリケーションに応用がきくだろう。

 ASICに組み込んだゼロ検出機能を利用するアプリケーション・ソフトは,まだ出荷していない。だが,2つのアプリケーションへの応用を考えている。

 1つは,近々に出荷を予定しているソフトだが,シン・プロビジョニングを適用していない“Fat”ボリュームを,シン・プロビジョニングを適用した“Thin”ボリュームへマイグレーションするツールだ。このツールによって,シン・プロビジョニングの採用が加速するだろう。

 もう1つのアプリケーションは,出荷時期が未定だが,現状のシン・プロビジョニングとは異なる,さらなるデータの“Thin”化を実現するものだ。例えば,データベース・サーバーなどが書き込む実データにゼロ・データで埋められた部分があると,そのゼロ・データを圧縮し,実データ量を削減する。実際には圧縮されているものの,アプリケーションからは大容量の実データが存在しているように見える。シン・プロビジョニングにおいては,データ圧縮によって実データが減ると,ボリュームに割り当てる物理ディスクの量を減らすことができる,というわけだ。