![[後編]サービス強化し経営に貢献する会社に](tit_interview.jpg)
>>前編
オラクル独自の価値とは何ですか。
例えば、米本社が昨年4月に買収した旧ハイペリオン・ソリューションズの製品です。ハイペリオンのビジネスインテリジェンス(BI)ソフトと当社のERPを組み合わせれば、これからのグローバル連結経営の時代に向けて非常に優秀なソリューションを提供できます。連結レベルで全世界のグループ会社の経営状況を逐次監視して、早め、早めに手を打てるようになります。
日本企業もどんどん海外に出ていますが、今は現地法人が何をやっているか正確に把握できていないところが少なくない。だから決算を締めてみると、3カ月前の予測から売り上げが大きく下がるなんてことが起こる。
要するに状況が見えていないわけですよ。ハイペリオンを使えば、こうした事態を改善できます。
実は私がオラクルへの転職を決めたのは、ハイペリオン買収がきっかけでした。お客様の経営者の目線でERPに足りない機能を考え、そのために必要なソフト会社を買収する眼力があるなら、ERPビジネスでも巻き返せるはずと考えました。
中核のデータベースソフト事業は売り上げが伸び悩んでいます。
確かに市場シェアがここまで高くなると、売り上げを伸ばすのは簡単ではない。でもまだ拡大の余地はあると思っています。
当社のデータベースソフトには、オプション製品がたくさんあります。データベースそのものの出荷本数はそれほど増えないかもしれませんが、管理ソフトやクラスタリングソフトを含めたトータルな価値を提供できれば、売り上げはきっと伸ばせるはずです。
パートナーとの情報共有を活性化
今まではパートナー企業を含めて、オプション製品の魅力をきちんと説明できていなかった。はっきりいって説明不足でした。
パートナーとの情報共有を活性化するよう早速指示を出しました。主要パートナー10~20社との間で3カ月に1度のペースで会議を開き、お互いの持っている製品やソリューションについて議論しようと考えています。単に「売ってください、お願いします」ではなく、もっと深く情報や戦略を共有するのが狙いです。
景気が後退局面に入るなか、IT投資の先行きにも暗雲が立ちこめています。

おっしゃる通りです。先行きは必ずしも楽観できません。
ただ、欧米に比べると日本企業のIT投資はさほど多くない。それが今の日本企業の競争力を弱めている部分もある。ですからIT投資がいったん冷え込んでも、すぐに回復するはずです。
ITは金食い虫と考える経営トップが少なくないことはわかっています。でも、それはIT投資のリターン(効果)が見えなかったり、低いからではないでしょうか。
「IT部門のおかげでここまで企業は成長しているんだ」と経営トップが実感できるようになれば、日本企業のIT投資はもっと増えるはずです。
日本オラクルをIT部門に貢献する会社から、経営に貢献する会社に変えていきます。そのためにコンサルティング機能を強化しますし、ソリューションの提供力を高めます。
ソリューションやコンサルティングを強化すると、これまでのソフト販売主体のときより利益率が悪化しませんか。
サービスの利益率はソフト販売よりも低いでしょう。アプリケーションのビジネスも今までのデータベースと比べて少し悪化すると思います。
ただ、多額の利益を得ているからそれにしがみつくというのは、企業の一方的な論理。やはり市場の論理に従って、市場が向いているほうに我々も進まざるを得ません。
利益率が下がっても、絶対額は積み増しますよ。もちろん売り上げも伸ばします。買収製品を生かして事業の幅を広げ、日本オラクルの収益構造を新しい段階に持っていきます。
SaaSやクラウドコンピューティングの台頭は、オラクルのビジネスにどう影響しますか。
日本IBM時代に担当したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、ITに加えて業務代行サービスを一気通貫で提供するビジネスモデルでした。これはSaaSの延長線上にあります。私の考える究極のITサービスの姿です。
BPOを提供するための基盤として、オラクルは非常に有利な立場にあると思っています。当社の製品はすべてSOA(サービス指向アーキテクチャ)に沿って、相互に組み合わせたり連携できます。お客様の業務に合わせて柔軟にシステムを変更できます。この特性がBPOに最適です。
SOAのプラットフォームと業務アプリケーションが、これからのお客様のイノベーションを支えるインフラです。就任してからずっと申し上げているのですが、なかなかわかっていただけない。どうすれば具体的なイメージを持っていただけるのか、もう少しわかりやすいメッセージを出そうと思案している最中です。
遠藤 隆雄 氏 (えんどう・たかお)氏
(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年7月8日)