![[前編]顧客の視点で脱データベースを模索](tit_interview.jpg)
「データベース一辺倒からビジネスの幅を広げる」。日本IBM常務を辞して、6月1日付で日本オラクル社長に就いた遠藤隆雄氏の使命は明確だ。米本社の買収攻勢で手に入れたミドルウエアや業務アプリケーションの売り上げ拡大を急ぐ。「製品の機能を説明するのではなく、顧客の視点で業務改革への貢献度や投資効果を説明せよ」と社内に檄を飛ばす。
日本オラクルに転じて1カ月余りたちました。外から見ていたときと印象は変わりましたか。
思っていた通り、力のある会社ですね。製品軸もソリューション軸もしっかりしているし、優秀な人材もたくさんいる。
「オラクルが好き」で入社した人が多いのも感動しました。社員が会社を好きでないと、いい仕事はできませんからね。その人たちが高いモチベーションで仕事をし、成長する環境を作るのが私の役目です。
業務アプリで巻き返し
パートナー企業や顧客の反応はいかがですか。
お客様やパートナー企業を訪問してわかったのですが、オラクルに対する外部の見方は様々です。
富士通やNECといったメーカー系のパートナー企業は、当社のデータベースソフトをOEM的に販売しています。関係が密接な半面、領域に広がりがない。当社は様々な製品を持っています。でも、ソリューション系やコンサルティング系の一部パートナーを除けば、どうしても取引の範囲が限られていたわけです。
お客様も同じような反応でした。ほとんどはデータベースソフトのお客様なんですね。データベース中心にお客様の層が広がるのはありがたいのですが、それがなかなか他のミドルウエア製品や業務アプリケーションに発展していかない。

オラクルは多種多様な製品を持っています。データベースは今後も当社の中核事業ですが、これからはビジネスの幅をもう少し広げていきたいというのが率直な感想です。
グローバルではオラクルの業務アプリケーション事業はSAPとほぼ拮抗しています。でも日本では完全に後れを取っている。
外にいたときも「オラクルはいったい何をやっているのか」と思っていましたよ。SAPジャパンは一生懸命、売り込みに来るけど、日本オラクルは何かノンビリしているなぁと(笑)。
でも今は当事者ですから、笑い事ではすまされない。SAPに大差を付けられている現状には大変不満です。データベース以外の製品をもう少し積極的に売り込もうと、社内でねじを巻いています。
そのためには単に製品の機能をお客様に説明するだけでは不十分。当社の製品を使っていただくと、お客様の経営をどう改革できますとか、投資に対してこれだけのリターンがありますといった説明をしないと業務アプリケーションは売れません。
経営や投資回収の視点での説明が、これまでは足りなかったですね。お客様の経営課題に対して、当社はどういうソリューションを提供できるのか――。シナリオを練り直します。
コンサルティング機能を強化するのですか。
もちろんやりますよ。今、中期経営計画をまとめているところですので正確な数字は差し控えますが、そう遠くないうちにコンサルタントを1000人規模へと倍増させたい。
コンサルティングの部隊には、営業活動にもう少し関与するようお願いしています。ライセンス契約をいただいてからコンサルティングに入るのではなく、契約前の段階から当社製品を使った経営改革や業務改革のあり方を提案してもらう。そうすればもっとお客様視点の提案ができるはずです。
当社は数多くの技術者を抱えています。でも上流から経営のコンサルティングができる人材はまだ十分にそろっていません。自社で育成する一方で、外部の力をうまく借りられればと考えています。
特に会計事務所系のコンサルティング会社との連携は強化したい。これまでSAP製品だけを担いでいたところに、当社の業務アプリケーションを扱っていただけるようお話ししている最中です。
コンサルティング会社の目的は早く、安く、確実にソリューションを構築して、お客様の経営に貢献すること。ERP(統合基幹業務システム)パッケージがSAP製だろうと、オラクル製だろうと正直どちらでもいいはずです。
だからこそお客様にオラクル製品を選んでいただけるよう、社内のコンサルティング部隊が活動します。当社しか提供できない経営上の価値をお客様に直接伝えます。
>>後編
遠藤 隆雄 氏 (えんどう・たかお)氏
(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年7月8日)