PR
[後編]「ユーザー企業とITベンダーはウィン・ウィンの関係になれるはず」

>>前編 

経営者はITそのものについては、どの程度理解すべきでしょうか。

 私はITのことは頭ではわかっていても体ではわかってないところがあります。反対かな。体ではわかるけど頭ではわかってない(笑)。

 実際にプログラムを開発したことはないし、プロジェクトリーダーの経験もありません。ですが会社は一人の力で動かすものではない。全幅の信頼を寄せることができるCIOなりCIO軍団がしっかりした形で存在すれば、技術的な部分までをすべて押さえている必要はないと思います。

ユーザー企業の発注者としての力が低下しているとの指摘があります。JUAS会長としてどう認識していますか。

 これはJUASが抱える喫緊の課題です。今まではシステム開発を発注する際、要求仕様を明確にしないままITベンダーに「よろしく頼む」とお願いしていた感が否めません。完成してから「自分が期待していたものと違う」と言い出してトラブルになるのです。

発注力の強化は喫緊の課題

 ITベンダーが契約欲しさに無理な納期で受注したり、自らの開発力を超えた受注をしたりして、プロジェクトが破綻することも多いと感じています。

 ユーザー企業の対策としては要求仕様を明確にした上で、ソフトウエアの品質評価基準に基づいて「このレベルのソフトを作ってほしい」と要求し、完成物をきちんと評価することが必要です。システムの規模に対する開発期間やバグのリスクを正しく見積もっておくことも欠かせません。

 ITベンダーも単体テストなど途中の工程のテストを強化して手戻りを減らす必要があると思います。

ITベンダーとうまく付き合うために、ユーザー企業はどのような点に注意すべきですか。

石原 邦夫 (いしはら・くにお)氏
写真:中島 正之

 まずシステム開発はユーザー企業とITベンダーの共同作業と考えることです。従来のようにユーザー企業が納期と予算を決めて、要件が膨らんだときの追加作業はITベンダーに押しつけているようでは、ソフトウエア産業を不幸にするだけです。

 結果的にユーザー企業にも跳ね返ってきます。IT業界の人気が落ちて優秀な人材が入ってこなくなるほか、業界の健全な発展を妨げるからです。

 ユーザー企業がITに頼りすぎて完ぺき主義を求めると、システムの規模が膨らみます。そうならないためには、要件を一定範囲に抑える、業務プロセスとシステムをシンプルにするという発想が必要ではないでしょうか。

 これはITベンダーの負担を減らすだけでなく、ユーザー企業にとってもプラスに働きます。というのも企業経営はスピードが命。規模を抑えられれば早く作れるからです。IT投資の抑制にもつながります。

 ユーザー企業とITベンダーのメリットは一致します。両者はウィン・ウィンの関係になれるはずです。

JUASの課題は何ですか。

 情報発信力の強化ですね。残念ながらIT投資動向の調査結果を本棚に入れっぱなしという企業は結構多いと思います。それでは調査する意味がありません。

 ユーザー企業同士の交流も促していきたい。フォーラムなどを通じて、お互いのベストプラクティスなり、ワーストプラクティスでもいいですけど、情報交換の場、もっと言えば愚痴をこぼす場を設けたいと考えています。

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)会長
東京海上日動火災保険 取締役会長

石原 邦夫 (いしはら・くにお)氏
1966年3月、東京大学法学部卒業。同年4月、東京海上火災保険(現、東京海上日動火災保険)入社。90年6月、情報システム開発部長。情報システム管理部長を経て95年6月、取締役北海道本部長。2001年6月、取締役社長。02年4月、ミレアホールディングス(現、東京海上ホールディングス)取締役社長を兼務。07年6月、東京海上日動取締役会長、ミレア取締役会長。08年5月、JUAS会長に就任。1943年10月生まれの64歳。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年7月30日)