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 世界中の通信事業者やISP(インターネット接続事業者)が直面しているジレンマがある。それは,加入者はもっと広い帯域を望みながら,同時により低い料金を要求していることだ。通信事業者やISPはそのような課題にどのように取り組めばよいのだろうか。アルカテル・ルーセントのアジアパシフィック地域IP事業のCTO,アレックス・ジニン氏に話を聞いた。

(聞き手は高橋 健太郎=日経コミュニケーション



今,通信事業者やISPといったサービス・プロバイダが直面している課題は。

写真●アルカテル・ルーセント アジア・パシフィック地域 IP事業部門 CTOのアレックス・ジニン氏
写真●アルカテル・ルーセント アジア・パシフィック地域 IP事業部門 CTOのアレックス・ジニン氏
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 サービス・プロバイダが抱えている問題は,加入者はもっと多くの帯域を欲しているが,その一方料金を払いたくないということだ。なぜそのような事態に陥っている背景には,インターネット上のアプリケーションの発展がある。

 10年前,インターネットで使われるアプリケーションのほとんどは,Webのブラウジングやメールのやり取りだけだった。それに対して,今日のトラフィックは,YouTubeやiTunesをはじめとしたリアルタイム映像のダウンロードがより多くの部分を占めるようになった。

 このためサービス・プロバイダは,自社のネットワークに加入者をとどまらせるには,キャパシティを増大させていく必要がある。その結果,ネットワークの設備の増強にコストがかかる。しかし,その分を料金に転嫁していくと,やはりほかの事業者に乗り換えられてしまう。

なぜそのような事態に陥ってしまうのか。

 根本の原因は,インターネット経済にネットワークのインフラを提供しているサービス・プロバイダが入り込めていないことにある。今のインターネット経済は,サービス・プロバイダがトラフィックの要求を満たすためのコストに見合った収益を上げる仕組みになっていない。

 現状では,サービス・プロバイダの対応の仕方は,VoIPやIPTVといったより価値の高いサービスを投入するというものだ。もちろんそうしたサービスもそれなりのビジネス・チャンスにはなるだろう。しかし,サービス・プロバイダはインターネット経済からもっと高い利益を得られるようなところを探す必要がある。

具体的には,どのような対処が必要なのか。

 一つは,サービス・プロバイダが,インターネットでどのようなアプリケーションが使われているのか分析できる能力を備えること。特定のアプリケーションの情報を得ることによって,より適切にトラフィックを制御し,ネットワークの増強プランを立てられるようになる。

図1●加入者やアプリケーションを意識した帯域管理が必須に<br>ジニン氏が「MPLS JAPAN 2008」で講演したときに使ったプレゼンテーション資料の一部。
図1●加入者やアプリケーションを意識した帯域管理が必須に
ジニン氏が「MPLS JAPAN 2008」で講演したときに使ったプレゼンテーション資料の一部。
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 例えば,サービス・プロバイダが追加料金に合意したユーザーだけにリアルタイムのビデオにQoSを提供する(図1)。こうしたアプローチは,無制御のまま帯域を増やすだけよりは優れていると言える。今のP2Pアプリケーションは,一度に百個ものコネクションを確立し,どんなに帯域を提供してもそれを消費してしまう能力を備えているからだ。