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景気後退時だからこそ買収を続ける

M&A(合併・買収)が続くERP(統合基幹業務システム)パッケージ市場で、独SAP、米オラクルに続く世界3位に位置するのが米インフォア・グローバル・ソリューションズだ。買収を繰り返した結果、ERPパッケージ「Baan(現Infor ERP LN)」や「BPCS(現Infor ERP LX)」といった日本市場でなじみの製品を抱える。ジム・シェイパー会長兼CEOは景気後退の時期であっても「積極的に買収を続けることで、中堅製造業向け製品を強化する」と意欲を見せる。

世界的にERPパッケージ・ベンダーは統合が進んでいます。独SAP、米オラクルという2強をどうみてますか。

 確かに両社は主要な競合ですが、大きく二つの点が当社と違います。一つは、中堅企業に対するアプローチです。SAPとオラクルは大企業向けの製品やサービスを発表した後に、中堅企業向け市場に参入しました。大企業向けを中堅企業向けにした製品・サービスは、どうしても導入コストやTCO(総所有費用)が高くなります。これに対し、我々は元から中堅企業を対象とした製品・サービスを出している。

 もう一つは、我々が製造業を対象としている点です。製造業の顧客にとって必要なユニークな機能を当社はそろえているので、導入費用や期間を短くできます。他社のERPパッケージは製造業だけを対象にしているわけではないので、必要な機能を用意するためにはカスタマイズやアドオン(追加開発)ソフトが要ります。標準以外の機能を追加するとサポートが難しくなり、結果的にTCOが高くなってしまいます。

日本ではインフォアが得意とする中堅市場に数多くの国産パッケージ製品があり、競争環境は厳しいと思うのですが。

 競合製品の多い市場でだと認識しています。競合に対する優位性の一つとして、我々はグローバルに製品をサポートできる点を訴求していきたいと考えています。日本に本社を置いていても、国外に生産設備を持っている企業は多い。当社は34カ国に135拠点を持っています。日本企業の国外拠点へのサポートができる点は、第1の差異化要因になると思っています。

 二つめのポイントは、当社の製品がSOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づいているという点です。我々は「Infor Open SOA」と呼んでいます。保守契約を結んでいる顧客に対しては、SOAに基づいて連携するために必要な製品を無償で提供しています。競合企業と比較し、新しい技術に我々は投資しています。こうした点は長期的に顧客にとって大きなメリットをもたらすと考えています。

これまで数多くの企業を買収しています。景気後退が始まっていますが、まだ買収を続けますか。

 今後もチャンスが出てくれば積極的に買収を続けてきたいと考えています。景気が悪くなるというのは買収のチャンスでもあります。ソフトウエア・ベンダーの中には苦しい思いをして、時価総額が下がっている会社があります。

ジム・シェイパー氏
写真:柳生 貴也

 我々は三つの観点から買収を決定しています。まず、技術を入手するための買収です。自社で開発するよりも、買収によって統合したほうが市場に早く製品を提供できると判断するケースです。

 次に「戦略的」と位置づけているソリューションを拡大するための買収。CRM(顧客情報管理)、ウエアハウスマネジメント(倉庫管理)、SCM(サプライチェーンマネジメント)、EAM(エンタープライズ・アセット・マネジメント)といった分野が該当します。戦略的ソリューションに該当する製品は、SAPやオラクルのアプリケーションを利用している企業に対しても導入が進む分野だと考えています。

 もう一つは当社の事業戦略の「プラットフォーム」の買収です。当社が新規参入する市場で製品やサービスを持っている、当社がすでに参入している市場に、より深く進出したりスケールを拡張できるような企業です。既存の製品と分野が重なる場合もありますが、財務的に魅力のある企業は買収していきます。