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将来は必要な情報が自動的に届く,日本でいち早く実現

>>前編 

Android端末の提供予定は。1年以内に提供すると,発表会で宣言していたが。

 Android端末を調達してJATE(電気通信端末機器審査協会)とTELEC(テレコムエンジニアリングセンター)の認証を受ければすぐに提供できる。

 メーカーにはAndroid端末を開発すれば当社に接続できると積極的に働きかける。ただし当社がその端末をすべて仕入れて販売するとは限らない。

ある程度の台数を調達して,試しに日本市場に投入してみるということか。

 そうではない。Android端末ではアプリケーションを自由にダウンロードでき,インターネットもフルに活用できる。いわば“コンピュータ業界の端末”と言える。一方,携帯電話事業者が提供してきた端末はこうしたオープン性を制限した“通信業界の端末”である。

 Androidのようなオープンな端末は携帯電話事業者には受け入れ難い。iモードやEZweb,Yahoo!ケータイといったプラットフォーム・サービスをユーザーが利用しなくなってしまうからだ。仮に携帯電話事業者がAndroid端末を投入するとしても,端末の選択肢や用途は限定されるだろう。

 だが,我々はそうはしない。様々なプレーヤが多種多様なAndroid端末を自由に投入できる環境を提供することを考えている。世界中の端末,アプリケーションを利用して独自の付加価値を打ち出したサービスを提供することが可能で,我々がそれを支援する。もちろん当社のリソースだけでは限界があるが,日本にとって必要なことなので積極的に取り組む。

Android端末は日本でブレークすると考えているのか。

 コンピュータ業界の端末はこれまで,いろいろな面で携帯電話事業者の反発を受けていた。先ほどの既存ビジネスとの競合のほかにも無線技術の難しさがある。しかし,現在は無線技術のノウハウをチップセットとして入手できるようになった。メーカーは端末にチップセットを差し込むだけで開発できる。このため,コンピュータ業界の端末を,もはや締め出せない状況になっている。

三田 聖二(さんだ・せいじ)氏
写真:的野 弘路

 Android端末が一気にブレークするかどうかは分からないが,皆それを期待している。日本の場合はユーザーに魅力がある機能がどれだけそろうか。日本語化の問題も出てくるだろう。それでもまずはコンピュータ業界のオープンな端末を世界に広げていくことが重要。当社としては,NTTドコモのネットワークでAndroid端末を使えることが一番の売りになる。

携帯電話を取り巻く環境は,今後どうなると見ているか。

 移動体通信は今後ますます重要になっていく。コンピュータ業界は今,通信がなかったら成長できない状況に向かって進んでいる。単なるデータを情報にするには,それを消化する人間が必要。そのためにはデータを運ぶ手段が必要で,通信が不可欠になる。

 この状況で次に何が起こるかというと,移動体通信を活用した次世代インターネットへのシフトが始まる。ユーザーが意識することなく,エージェントを介して必要なときに必要な場所で必要な情報が送られてくる世界だ。

 現在はユーザーが能動的に情報を取りに行く必要があるが,未来はスケジュールや株価情報などが自動的に届くようになる。この実現のために必要な最大の機能が移動体通信になる。同様な概念にあるのがクラウド・コンピューティングで,コンピュータ業界の立場からこれを表現したものと言える。

 だが,この世界は移動体通信が固定通信と同様に開放され,コンピュータ業界を招かなければ実現できない。そのための扉を開いて,世界に先駆けて日本でいち早く展開しようというのが当社の考えになる。インターネットのパラダイム・シフトは米国を中心に起こった。次世代インターネットは日本から起こしたい。そうすれば今のインターネットの10倍や100倍といった大きな経済効果を期待できる。

米グーグルがまさにその世界を狙っているように見えるが。

 グーグルがその力を持っているとしても,世界中で利用してもらえるだけの支配力はない。広く一般的に利用してもらうにはオープンにするしかない。Android端末がまさにそうだ。もちろんグーグルに多少有利に働くことはあるかもしれない。ただ,本当にオープンであらゆるプレーヤが自由に参入できるのであれば,グーグルにすべてを持っていかれることはない。

 実は,次世代インターネットの実現に最も近いのは日本。グーグルのエリック・シュミット会長兼CEO(最高経営責任者)は700MHz帯周波数のオークションに参加する条件として(1)Open Applications,(2)Open Devices,(3)Open Services,(4)Open Networks──の4点の実現を米連邦通信委員会(FCC)に要望したが,米国では(3)と(4)は受け入れられなかった。

 ところが日本ではこの4点すべてが整っている。グーグルが要望する端末からネットワークまですべてオープンな環境が日本には既にあるわけだ。我々は今,この環境を生かして足固めをしている最中だ。

日本通信 代表取締役社長
三田 聖二(さんだ・せいじ)氏
1949年6月10日生まれ。石川県出身。73年5月カナダ国鉄に入社。79年3月米コンレイル鉄道に入社。82年12月米ロングアイランド鉄道副社長。84年4月米ハーバード大学経営大学院上級マネージメントプログラムを修了,同年11月に米シティバンク エヌ・エイ副社長。87年7月に米メリルリンチ証券プロダクトオペレーション副社長。89年11月に米モトローラの副社長とモトローラの常務取締役移動電話事業部事業部長に就任。94年7月に米アップルコンピュータ副社長に転じ,アップルコンピュータ代表取締役を兼務。96年5月に日本通信を設立した。2005年4月には大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場。2005年11月にMVNO協議会会長,2008年1月にアイルランド政府次世代ネットワーク国際諮問会議委員に就任した。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年9月16日)