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ユーザーが100万社を超えたというGoogle Appsを中核に,米Googleが企業向けクラウド・サービスに本腰を入れている。来日したデイブ・ジロード エンタープライズ部門担当社長に,Googleの考えるエンタープライズ戦略や,有力企業との連携の可能性などについて聞いた。(聞き手は吉田 琢也=ITpro)

米Google エンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジロード氏
米Google エンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジロード氏

エンタープライズ部門の責任者として,現状の事業を評価してほしい。100点満点で何点か?

 Googleにとってエンタープライズは新しい領域の事業であり,歴史も浅いので,一口に何点と評価するのは難しい。いま言えるのは,既に利益が出ており,成長のスピードが非常に速いということだ。今後10年とか20年といった長期的なスパンでみても,大きな期待が持てる事業だと考えている。

 なかでも,コミュニケーションやコラボレーションの機能を中核としたアプリケーション・サービスであるGoogle Appsが急成長している。2007年に事業を立ち上げてから現在までに,世界で100万社以上の企業が採用した。採用企業の増え方をみると,昨年は1日1000社のペースだったが,今年は1日3000社のペースへと加速している。今後2~3年でどれだけ増えるのか,ちょっと想像できない。

 急速な伸びの要因はいくつか考えられるが,継続的にサービスの改善に努めていることが一つ。既に採用したユーザーがほかのユーザーに利用を勧めるなど,口コミの効果も大きい。

エンタープライズ事業で後発のGoogleが成功を収めるためには,何が必要だと考えるか。

 企業のクラウド・コンピューティングを担うサービスとして,生産性向上やコラボレーション強化に貢献できるような機能を提供し続けることだ。企業規模は問わない。中堅・中小企業から大企業まで,幅広く使ってもらえるようにする。

 そのためには,サービスの使い勝手の改善や信頼性の向上に日々努めなければならない。企業内のユーザーが「ぜひ使わせてほしい」と言いたくなるようなサービスを提供することが目標だ。

 その点,品質に対する要求水準が非常に厳しい日本企業の期待にこたえることが重要だと考えている。日本企業の要求水準をクリアすれば,ほかの国でも成功できる品質を担保できると考えられるからだ。

一口に「信頼性」と言っても,システムのダウンタイム,データのセキュリティ,内部統制の整備・運用状況など,様々な要素がある。

 Googleの検索サイト(google.comやgoogle.co.jp)は,基本的にダウンタイムはゼロであり,「いつでも必ず使える」という信頼を得ている。当社のエンタープライズ事業では,これと同じレベルの可用性を,すべてのサービスに展開することを目標にする。

 単にダウンしないだけでなく,「遅延しないこと」も重要だ。そのために当社は,世界中のいろいろな地域で遅延時間を計測し,高速なサービスを維持することに注力してきた。

 企業向けサービスを提供するうえで,データの安全性を確保することは当然だ。その点,当社は既に世界最高水準のセキュリティを実現しているという自負がある。

 このほどGoogle Appsは,「SAS 70 Type II」(米国公認会計士協会が定めた,受託業務の内部統制に関する監査基準)に基づく監査を受け,データの安全性や内部統制の整備・運用体制がしっかりしていることを第三者に証明してもらった。このこともユーザー企業の信頼獲得につながるはずだ。

いくら信頼性が高いと言われても,これまで自社内でシステムを開発・運用し,クラウド・サービスを使った経験のない企業は,漠然とした不安を抱いている。

 そのような企業には,クラウド・サービスは“Everything(全面的に採用する) or Nothing(いっさい使わない)”という性格のものではない,ということを伝えたい。企業が自社内で開発・運用するシステムとうまく組み合わせて使うものと考えてほしい。

 クラウド・サービスを導入するにしても,ニーズや要件によって規模が大きかったり,小さかったりするのは当然のこと。最初は小さく導入して,ここが役に立つということが分かったら,その領域を拡大していく,というのが自然なアプローチだ。

 実際,米国でクラウド・サービスを本格的に活用している大企業は,ほぼ例外なく,段階的に適用範囲を広げるアプローチを採っている。当初は100~200人程度の小規模な組織やIT部門だけでスタートし,その成果を評価してから,1000~5000人といった規模にまで拡大していくわけだ。例えば,バイオ・テクノロジーを手がける米Genentech(ジェネンテック)は,当初は300人くらいから始めて,いまや全社員1万5000人がGoogleのサービスを利用している。