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[前編]地に足をつけ日本の顧客に貢献する

9カ月という短期間で社長が交代したSAPジャパン。新社長には日本BEAシステムズ、アドビシステムズ日本法人などの社長を歴任したギャレット・イルグ氏が就任した。イルグ氏は「システムインテグレータの存在といった日本市場の特性を生かしながらパートナとの関係を強化し、顧客満足度を向上していきたい」と日本重視の姿勢を見せる。

「SAPジャパンの社長に」と打診された時の感想は。

 とても驚きました。SAPジャパンは非常に大きな会社で製品の幅も広い。アドビシステムズには2年半近くいたので正直、複雑な思いもありました。

 それでも引き受けることに決めたのは、エンタープライズの分野にもっと深くかかわりたいと考えたからです。アドビもこの分野に進出し始めていますが、エンタープライズの世界により深く入っていける会社にポテンシャルを感じていました。

 これまでデスクトップアプリケーションが中心のアドビ、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくミドルウエアのBEAシステムズといったソフトウエア会社で仕事をしてきました。SAPで働くことは、こうした経験の頂点に位置すると考えています。

わずか9カ月での社長交代です。ユーザー企業は不安に思いませんか。

 社長に就任してから何人もの顧客企業の経営層に会いました。おしなべて反応は悪くありません。顧客のほうから社長交代について話が出たことはないのですが、こちらからあえて話すように努めました。

日本にいるのは自らの意思

 SAP本社が私に要求しているのは日本の顧客、そして日本市場に責任を持つことです。顧客企業の経営層と話す際に、この点を伝えるのは非常に重要だと考えています。

 私はSAPジャパンに入社したのであり、SAPの他の拠点から送り込まれたわけではありません。SAPジャパンの社長を務めた後、別の仕事で他のSAPの拠点に戻ることもない。

ギャレット・イルグ 氏
写真:加藤 康

 私は日本で育ちました。今、日本にいるのは自分の意思であり、地に足をつけ長期的に日本で仕事をしていきます。この点は日本の顧客にとって良いニュースだと自負しています。日本企業に貢献したいし、日本で経営者として成功していきたいと考えています。

社長に就任して1カ月半がたちます。何から手をつけますか。

 まずはパートナとの関係をより強固にしたいと思います。単なる提携だけでなく、様々な機会を生かしていきたい。顧客企業の満足を追求するため、共同で新たなソリューションや技術を提供していきます。システムインテグレータに対しても、SAP製品を基盤として生かしてもらえる支援をしていくつもりです。

 最も注目しているのは自社でSAPの製品や技術を利用しているパートナです。我々は「Go-To-Marketパートナ」と呼んでいます。顧客はパートナに対し、パートナ自身が使っている製品や技術を薦めてほしいと望むものです。当社製品も例外ではありません。SAP製品を説明するうえで、実際に利用している経験が必要だと考えています。

 この考え方は私の経験からきています。アドビにいたとき、SAP製品を業務のプラットフォームとして利用していました。一部の業務だけでなく複数の領域や部門をまたぐ基盤として利用すれば、より安く速く、そしてより良いネットワークを築くことができることを学びました。

日本独自の組織で顧客満足を追求

 もう一つ、力を入れているのは顧客対応です。社外から見ていたときにも、当社の顧客対応はそれなりにうまくいっていると感じていました。

 一方で、当社は技術の会社という側面が強いと思います。顧客企業のビジネスやソフトウエアについて、もっと理解を深めていく必要がある。今後、どういった技術が必要になるかを見極めていくのも大切です。

具体的な施策は。

 新たに「カスタマ・サティスファクション・インプルーブメント・オフィス(CSIO)」と呼ぶ組織を立ち上げました。営業、総務、経営陣、カスタマサービスなど社内の様々な人たちや部署を取り込み、全社一丸となって顧客満足度の向上に取り組んでいくのが狙いです。すでにグローバルのカスタマサービスの組織があり、成功を収めています。ですが日本市場ではさらに新しい組織が必要だと判断しました。

 日本の顧客は満足度の基準が高い。通常のプロセスでは顧客の要望に応えられない場合に、CSIOが対応します。顧客との積極的な対話が狙いです。顧客にコンタクトをとって、SAPに対する意見や改善すべき点を聴き、さらに顧客との関係を深めたいと思います。

SAPジャパンにはユーザー会「JSUG(SAPジャパン・ユーザー・グループ)」もあります。

 JSUGは非常に重要です。入社最初の3日間でまず行ったのはJSUGとのミーティングでした。JSUGは業種業態を問わずいろいろな顧客が集まっている団体です。JSUGと対話することで様々な意見を聞ける貴重な場です。SAP本社やSAPジャパンの経営幹部だけでなく、全社的にJSUGともっとコミュニケーションを深めていきたいと考えています。

 特に力を入れたいのは、JSUGに対して製品を利用するメリットや当社の考えを確実にフィードバックすることです。JSUGに限らず欧州、米国をはじめ各国にあるユーザー会とも一緒に活動していきたいと思います。

ほかの注力分野は。

 社員が自らキャリアを描きつつ成長できるプログラムの提供を考えています。例えば、職種をまたいだ人事異動を推進していきたい。外資系企業の場合、部署間の異動はあまりありません。

 技術を重視する企業は中途採用や第2新卒を採用するケースが多いのですが、当社は新卒の社員も積極的に採用していきます。10月の1週目に来年4月入社予定の大学生25人に会いました。新入社員に対し、3~6カ月の研修を用意しています。研修を通じて新入社員がSAPで明るい将来を築いてくれればと願っています。

>>後編 

SAPジャパン 代表取締役社長
ギャレット・イルグ 氏
米ニューハンプシャー大学卒業後、1984年三菱電機入社。ロイター、ダウ・ジョーンズ、ウォルト・ディズニー、コロンビア・ピクチャーズを経て、99年から日本BEAシステムズ社長。2002年から米BEAシステムズ シニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域代表、05年からアドビシステムズ代表取締役社長。08年9月15日にSAPジャパン代表取締役社長就任。11歳で日本に移って以来、日本に深くかかわる。61年米国生まれの47歳。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2008年10月14日)