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 スウェーデンのエリクソンと並び,世界の大手通信機器ベンダーであるフィンランドのノキアシーメンスネットワークス。同社は3.9世代の携帯電話方式であるLTE(long term evolution)の分野で主導権を握っており,3GPPにおける標準化や製品開発面で市場をリードしている。日本市場についても,パナソニックモバイルコミュニケーションズ(関連記事)や富士通(関連記事)と提携し,NTTドコモ向けにLTE製品を提供する計画である。

 同社でリサーチ,テクノロジー&プラットフォーム 無線アクセス,技術部門長を務め,HSPA(high speed packetaccess)やLTEに関する著作もあるハリ・ホルマ氏に,LTEの最新動向を聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション


ノキアシーメンスネットワークス リサーチ,テクノロジー&プラットフォーム 無線アクセス,技術部門長 ハリ・ホルマ氏
ノキアシーメンスネットワークス リサーチ,テクノロジー&プラットフォーム 無線アクセス,技術部門長 ハリ・ホルマ氏
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LTEの商用化はいつごろになるのか。

 2010年の後半になるのではないか。3GPPにおけるLTEの標準化は2009年3月までかかる。これまでの技術を見ていると,標準化がすべて完了してから商用化まで約1年半かかっている。その計算を当てはめれば,LTEの商用化は2010年後半以降になる。

3GPPにおけるLTEの標準化は,当初は2008年12月に完了すると言われていた。2009年3月にずれ込むのはどのあたりの部分か。

 まずLTEの基本的なスペックについては,3GPPにて2007年末に承認されている。その後は,軽微な変更のリクエストを受けつけるフェーズに入っている。2009年3月にかけて残るのは,既存の通信方式とのバックワード・コンパチビリティを決める部分などだ。例えばLTEとHSPAのハンドオーバーといった仕様になる。3月までにその部分も含めて仕様の詳細が固まる予定だ。

どの地域で最初にLTEの商用化がスタートすると考えているのか。

 携帯電話事業者各社はなかなかスケジュールを公にしない。しかし日米欧問わず大手の携帯電話事業者は,早い段階でLTEを導入するだろう。日本においてはNTTドコモが真っ先に始めると思う。米国ではベライゾン・ワイヤレスだ。CDMA2000方式の発展が事実上無くなっているので,早い段階でLTEを導入するだろう。欧州では,北欧の携帯電話事業者であるテリアソネラが2010年のうちに移行すると発表している。

無線アクセスを高速化する手段としては,LTE以外にHSPA EvolutionやDC-HSDPAといった技術がある(関連記事)。携帯電話事業者は様々なアプローチを取れると思うが,世界的にはどんなトレンドになると考えるか。

 まずHSPA Evolutionなどの既存のHSPAを発展させた技術は,LTEと比べると消費電力を抑えられるメリットがある。バッテリーサイズが限られている通常の携帯電話端末に向いている。それに対してLTEは,当初は電力消費量が高い。USBモデムなどの形態でノート・パソコン向けに使う形が向いている。

 携帯電話事業者は,当面はHSPAとLTEを並行して運用するだろう。都市部などトラフィックが集中するエリアにLTEを導入し,それ以外の部分ではHSPAが残る。エリアによって使い分ける形も出てくるのではないか。

携帯電話事業者にとって見ると,データ通信で定額制が当たり前になっているため,LTEなどを取り入れてもARPU(1契約当たりの平均収入)の向上につながらない。新たなネットワークへの投資意欲がわきづらい状況ではないか。

 以前と比べて携帯電話事業者は,新たなネットワークへの投資を抑えられるようになってきている。W-CDMAやHSPA向けの現行基地局をソフトウエアで変更するだけで,LTEに対応するような製品をノキアシーメンスでも出荷しているからだ。さらに増え続けるデータ・トラフィックを処理する上で,LTEは最もコスト効率の良い手段と言える。

LTEの製品開発において,ベンダー間の差別化となるポイントはどこか。

 LTEが利用する多元接続方式であるOFDMA(orthogonal frequency division multiple access)は,各ユーザーが利用するリソースを複数のサブキャリアに対して柔軟に割り当てられる。各ユーザーのリソースを割り当てるスケジューリングの部分は標準化には含まれておらず,いかに高速に効率良く割り当てられるかがベンダーの腕の見せどころとなる。

 またいかに投資を抑えられるかという点で,既存のシステム向けの基地局をソフトウエアの変更でLTE対応にできる部分も差別化のポイントだ。いずれの面でも,ノキアシーメンスネットワークは他社と比べて強みを持っている。