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 2009年は改正省エネ法や東京都の改正環境確保条例が4月に施行されるなど,企業を取り巻く環境規制はますます強化される。こうしたなか,企業が競争力と環境への対応を両立させるにはどうすればいいのか。グリーンIT関連の調査を手がけるIDC Japan リサーチマネージャーの福冨里志氏に,企業の現状と今後の取り組みの指針について聞いた。

(聞き手は福田 崇男=日経コンピュータ高木 邦子=ITpro



IDC Japan リサーチマネージャーの福冨里志氏
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グリーンITに対する企業の取り組みの現状をどうとらえているか。

 IDCでは,グリーンITを「グリーンテクノロジ」「グリーンビジネス」「グリーンエナジー」という3つの枠組みでとらえている。グリーンテクノロジとは,サーバーやストレージ,ネットワークなどのIT機器やデータセンターの省電力化の取り組みを指す。企業のグリーンITの取り組みを見ると,このテクノロジ分野にフォーカスするところが多い。だが,それだけでは不十分だろう。

 今後はグリーンビジネス,つまりITを活用してビジネスのエネルギー効率を高めたり,環境負荷を低減する取り組みに注力していく必要がある。サプライチェーン全体の省エネや環境コンプライアンス管理などに,いかにITを活用していくかが鍵になる。

 当社が実施した調査によれば,企業におけるグリーンITの課題としては,IT機器などの省電力化に関するものは3%程度で,残りの97%はITをいかに活用してビジネスを変革するかということだった。この結果から考えても,グリーンビジネスへの取り組みがますます重要になると見ている。

 また,サステナビリティ(持続可能性)の観点から,グリーンエナジーをグリーンITの枠組みに組み入れている。企業が将来においても製品やサービスを顧客に提供し続けるためには,エネルギーを恒久的に確保できなければならない。そこで再生エネルギーの利用や蓄電技術の重要性を指摘している。

IT機器の省電力化だけではなく,企業経営の視点からグリーンITをとらえる必要があると。

 その通りだ。ビジネスを取り巻く環境は大きく変わろうとしている。2009年には,政府が主導するカーボンフットプリント制度や,東京都の改正環境確保条例がスタートする。前者は製品のライフサイクルにおけるCO2排出量を算出してラベル表示することを義務付けるもの,後者は大企業に対してCO2排出量の総量削減を義務付けるものだ。

 経営全体の視点からCO2削減に取り組むことをカーボンマネジメントという。強調しておきたいのは,今後のビジネスにおいて,カーボンマネジメントが競争力の源泉になるということだ。これは国内だけではなく,グローバルでも同様の流れがある。

カーボンマネジメントの取り組みは,何から始めればいいか。

 ビジネスプロセスの各フェーズで,どれくらいの環境負荷がかかっているのかを「見える化」し,それを基に経営の意思決定を支援する仕組みを作ることだ。この場合,ITが威力を発揮する。しかもそのシステム自体が,競合他社に比べてコスト優位性を持たなければならない。コストをかけられない企業は,SaaSやクラウドコンピューティングを活用することが一つの選択肢になるだろう。

企業競争力の源泉となるのがカーボンマネジメントで,それを支えるのが強力なITインフラというわけだ。データセンターを再編する企業が増えているが,環境対策という視点でのポイントは何か。

 当社が実施したデータセンターのグリーン化に関する調査を見ると,日本はアジア・パシフィックの他の国々に比べて機器の設置効率や冷却効率が低く,これを高めることが課題になっている。とくに日本の古いデータセンターの中には,建物の耐床荷重や電力供給量が小さいところが多いため,こうした場所でも設備効率を高めるソリューションが求められている。

 IT機器の更新サイクルは4.5年~5年。それに対してデータセンターの建物や設備(ファシリティ)の更新サイクルは20年近いものもある。IT機器とファシリティを同時に更新する機会は限られている。そのうえで自社のデータセンターやサーバー室の環境対応をどうするかについて,5年,10年,20年先を見据えた戦略を立てる必要がある。

 ポイントは,いかに運用効率の高いデータセンターにするか。つまりITリソースと冷却設備とを,動的,自律的,統合的に運用管理できる仕組みを構築する必要がある。

 実際のところ,データセンターにおいて経済性と環境対策とを両立する鍵は「冷却」にある。まずはデータセンターの冷却コスト,熱分布,エアフローの現状を把握することだろう。IT部門とファシリティ部門で情報を共有しながら,戦略を策定することが重要である。