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 米国最大の先物取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)。金利,株価指数,為替,商品などさまざまな先物が売買される国際取引所である。その取引システムはLinux上で稼働している。同取引所のLinuxをはじめとするオープンソース・ソフトウエア利用の経緯とメリットについて,CME GroupでLinuxを担当するVinod Kutty氏に聞いた。(聞き手は高橋 信頼=ITpro)


CME Groupではどのようなオープンソース・ソフトウエアをどれだけ利用しているのか。

CME Group アソシエイトディレクター Vinod Kutty氏
CME Group アソシエイトディレクター Vinod Kutty氏
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 Linux,ApacheやPerl,Python,Ruby,JBoss,Tomcatなどだ。OpenCMSやMediaも内部のコンテンツ管理システムとして利用している。私が所属している部署は分散コンピューティング・グループであり,LinuxやSolarisを担当している。

 CMEでは1日約1300万件,年間約20億件の取引が行われ,年間の取引額は約1200兆ドル(約11京円)になる。そのほとんどのデータはLinuxを搭載したx86サーバー上で処理されている。

 Linuxサーバーは2003年頃から導入し,現在では4000台以上が稼動している。ほとんどは内部の電子取引システムのサーバーとして使用している。Solarisサーバーは500台あり,多くはレガシー・システムだ。シカゴ・マーカンタイル取引所は今年ニューヨーク商業取引所(NYMEX)を買収したが,NYMEXではSolarisが多く使われていた。

サーバーのコストが2分の1に

オープンソース・ソフトウエアによりどれだけのコストを削減できたと考えているか。

 商用UNIXの場合,ハードウエアのベンダーは多くの場合一社だ。Linuxの場合,様々なハードウエアを選ぶことができ,最も価格性能比の高いものを選ぶことができる。Linuxに移行した最初の年,サーバー価格は平均50%下がった。

 ただし,データベースは商用のOracleを使っている。まだオープンソース・データベースでは,クラスタリング環境で我々が必要とする性能を得られるまでには至っていないと見ている。

コスト以外のメリットは。

 ベンダー・ロックインを軽減できることだ。一例を挙げれば,我々は以前パフォーマンスに関するバグを発見し,それを修正しRed Hatに送付したことがある。パッチはRed Hatからコミュニティに提供され,Linuxカーネルに取り込まれた。もし今後ほかのディストリビューションに移行したとしても,我々が修正したパッチはそのディストリビューションにも含まれているわけだ。

オープンソース・ソフトウエアを採用するにあたっての課題は何だったのか。

 当初,ソフトウエアが未成熟だったことだ。カーネルのハングアップなどが発生したこともあった。しかし,現在では十分に成熟してきている。

 技術者のトレーニングについては,多くの技術者はSolarisに習熟しており,そのスキルがLinuxでも利用できた。ただしパッケージ管理などについてはトレーニングを行った。

 またいくつかのアプリケーションはまだLinuxをサポートしていない。そのため,移行できないサーバーがある。

コミュニティへの参加は企業にとって大きな意義

コミュニティへの参加は企業にとってどのような意味があるのか。

 私は2008年のKernel Sumitに招かれた。Kernel Summitは1年に1回,Linus Torvalds氏ら主要なカーネル開発者が集まるイベントだ。招待性のイベントであり,ただ一人のエンドユーザーが私だった。

 私は(Linus Torvalds氏がフェローとして所属するLinux普及推進団体)The Linux Foundationのユーザー・カウンシルの議長でもある。

 ユーザーは技術をテストする品質管理者の役目も果たしている。我々がLinux自体を改善することができれば,他のユーザーもそのメリットを享受できる。それだけでなく,自社が他のディストリビューション・ベンダーに移行したとしてもそのメリットを享受することができる。

 Wikipediaのように,我々は共有の財産をモデレートし改善することができる。企業によるLinuxコミュニティへの参加は,我々の将来にとって非常に重要だ。