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サーバー事業は中小を狙う、IBMとの約束だ

米IBMが売却したパソコン事業を2005年に継承した米レノボ・グループ。もともとは中国ローカルのパソコンメーカーだったが、事業合併後に米国に本社を移転するなどグローバル展開を進め、世界的なパソコンメーカーへと成長してきた。08年10月にはサーバー事業にも参入、総合コンピュータメーカーを目標に事業拡大を狙う。同社のウィリアム・J・アメリオ社長兼CEO(最高経営責任者)は「IBMとの役割分担でサーバー事業を成長させる」と意気込む。

サーバー事業に参入しました。本気度合いは、どの程度ですか。

 とても高いですよ。シェアなどの具体的な数字は(占いに使う)水晶玉でもない限り、分かりません。それでも業界全体の成長スピードよりも速いペースで伸ばしていくことを、最大の目標としています。

 サーバー事業については米IBMと大きな合意をしています。中国以外の地域では、サーバー事業を中小企業向けを中心に展開する、というものです。中国では中小企業向けに限らず、中堅企業向けから大企業向けのHPCクラスタまで、広範囲にサーバー事業を展開しています。

 中国以外の地域ではIBMとレノボで一つの会社のように見えるはずです。IBMはハイエンドのハードウエアとソフトウエアサービスを、レノボはクライアントパソコンや中小企業向けのサーバーを提供します。互いに役割分担して事業展開するわけです。

中小企業の要件は熟知している

中小企業向けサーバー市場には、デルやヒューレット・パッカード、NECなどライバルが多く存在します。サーバー事業でのレノボの強みは何ですか。

 一つはユーザーのニーズに合ったラインアップをそろえていることです。我々は長年にわたり、ノートパソコン「ThinkPad」の販売を通じて中小企業と付き合ってきました。この経験を通じて、中小企業の要件や課題を熟知しています。

 当社のサーバー製品にはこうしたニーズを反映させています。中小企業との親和性はとても高いはずです。システム管理ツールも好評で、一つの強みになっています。

 二つめは信頼性と品質です。これは業界全体で認めてもらっていると考えています。我々はThinkPadやデスクトップパソコン「ThinkCetre」で、信頼性と品質の向上に向けて努力し続けてきました。ここで培った経験をサーバーにも反映しています。

 品質と信頼性の向上を先導する中核拠点が日本の大和事業所です。日本市場における品質や品質管理を追求しようとする姿勢は、ほかに類を見ません。レノボの日本チームにはそれを担える優秀な人材がいます。その考え方は、世界各地に伝わっています。

 私がCEOに就任することになった際に、最も気にしていたのが品質でした。就任当初は、毎月の品質レビューを徹底しました。しかしその後、レノボの遺伝子には「高い品質の製品を必ず出す」という考えが刻み込まれていることに、徐々に気付くようになりました。今では四半期ごとのレビューで十分だと考えています。

デルも中国市場に攻勢をかける構えです。レノボの“お膝元”をどう守りますか。

ウィリアム・J・アメリオ氏
写真:柳生 貴也

 中国市場には確固たる牙城があります。流通網一つ取ってもそうです。1万1000の拠点でなんらかの形で我々の製品を購入できます。

 とはいえ、牙城を維持していくには今後も革新的な製品をきちんと出し、流通網を維持していく努力が必要でしょう。優れたエンジニアリングに基づく製品を、きちんとしたサービスと組み合わせて提供することを徹底していきます。

 中国社会に溶け込んでいるのも、我々の強みです。(2008年の)春先に四川省で大地震がありましたが、あの時も即座にレノボのチームは震災現場に急行して、輸血をしたり復興作業に携わりました。社員一人ひとりの募金で数百万ドル単位の献金もしました。こうした会社としての貢献を、消費者は忘れないでくれていると思います。

中国での強さに比べると、日本でのレノボは知名度の面でもまだ弱いと思います。どう変えていきますか。

 会社としての認知度は高まっていると思います。認知度調査でもかつては50%でしたが、今では80%に上がっています。

 ただ市場シェアはまだまだです。それを克服するための新製品を出していきます。販売店との関係も強化していく必要があると考えています。

「大嵐」は避けられなかった

2008年7~9月期の業績を見ると、携帯電話端末事業を除く総売上高は前年同期とほぼ横ばいの43億ドル、純利益は同77.7%減の2300万ドルでした。業績悪化の原因は?

 三つの悪い事象が重なったゆえの「パーフェクトストーム」(すさまじい大嵐)を避けられなかったからです。これまでは状況が悪化しても、成長分で相殺できてきた。今回は三つの事業が同時に起こったために業績悪化となってしまいました。

 一つは急成長を続けていた中国市場がスローダウンしたことです。レノボ製品の総出荷台数の52%は中国市場でのものです。しかし7~9月期には中国市場の成長が初めて世界平均の成長を下回りました。中国市場の浮沈は我々に大きな影響を与えます。それが業績に表れました。

 二つめは法人市場の需要が鈍ったことです。我々の事業はIBMから継承したこともあり、法人売り上げの比率が高い。個人需要は伸びていたのですが、景気悪化の影響で法人需要が急激に下がりました。

 三つめはネットブックの台頭です。安い価格帯の製品が普及し始め、ノートブックパソコン市場でのシェアを早いペースで広げています。これに対する調整も実施しました。

2008年春に携帯電話端末事業を売却しました。パソコン事業とのシナジーはなかったのでしょうか。

 売却した携帯電話端末事業は中国市場だけのビジネスで、グローバルには展開していませんでした。加えて、全社的な戦略でパソコン、ワークステーション、サーバーに集中することになりました。中国市場に特化した携帯電話端末に気を取られていては全体戦略を達成できない、と判断して事業を売却しました。

 だからといって、携帯電話に近い端末を今後いっさい出さないというわけではありません。スマートフォンのような端末が出てくるかもしれないし、携帯電話とノートパソコンの中間にある端末を出す可能性があるかもしれません。

米レノボ・グループ 社長兼CEO
ウィリアム・J・アメリオ氏
米リーハイ大学卒業後、米IBM入社。PC事業などを担当しスタンフォード大学にて経営学修士取得。主要IT企業で上級管理職および業務統括責任者を歴任。IBMのPC事業では世界全体のビジネスを統括するジェネラルマネジャとして優れた手腕を振るうなど、豊富な経験をもつ。2005年12月より現職。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集部長,取材日:2008年12月4日)