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[前編]強みはアルゴリズム,今後はログサービスに期待

携帯電話やパソコン向けの経路検索サービス「NAVITIME」を提供するナビタイムジャパン。2008年9月には,通信機能付きの小型カーナビゲーション・システム(カーナビ)市場への参入を表明した。背景には,近年の通信インフラ事情の変化があるという。同社の技術の特徴や,今後のビジネス戦略について大西啓介社長に聞いた。

ナビタイムジャパンの事業の概要を教えて欲しい。

 現在は携帯電話,パソコン向けに経路検索サービス「NAVITIME」を提供している。地図検索や簡単な乗り換え検索などができる無料サービスと,高機能な有料サービスを合わせると,月間のユニーク・ユーザーは約900万人だ。そのうち,携帯電話から月間200~300円程度の有料サービスを利用するユーザーが250万人程度になる。

他の経路検索に比べてNAVITIMEの強みは何か。

 一つは当社の経路検索アルゴリズムだ。「駅から駅まで」の乗り換えルートを案内するサービスはほかにもあるが,「ある地点から別の地点まで」の経路を,鉄道だけでなく,航空機,自動車,徒歩まであらゆる移動手段を考慮してシームレスにナビゲーションできるサービスはNAVITIMEだけだろう。

 NAVITIMEのアルゴリズムは,自動車や徒歩を組み合わせた道路のデータ,時刻表を基にした電車や航空機など乗り物のデータといった,複数のデータベースを基に最適経路を表示する。

 例えば,出発地の周辺に駅が複数ある場合,ダイヤによっては最寄駅より1分遠い駅から乗った方が,目的地までのトータルの移動時間が短くなることがある。NAVITIMEでは複雑なアルゴリズムを使って,こうしたポイントをきちんと検索結果に反映できる。

大西 啓介(おおにし・けいすけ)氏
写真:山田 愼二

 もう一つは,移動中のユーザーが感じる“不安”を先回りしてどんどん解決するための機能を組み込んでいることだろう。例えばホームで電車に乗る位置から駅の出口まで,最も早く目的地に着ける経路を表示する。

今後のNAVITIMEのサービス展開は。

 まず飛行機のチケットの予約,購入のように,ユーザーの移動に伴って必要な「予約ビジネス」が考えられる。

 もう一つはユーザーの検索履歴や移動履歴などのログを使ったサービスだ。例えば当社では,携帯電話搭載のGPS(global positioning system)の測位履歴を利用したサービスを提供している。過去のGPS測位や検索履歴をユーザーごとに記録して後から確認したり,蓄積した記録からユーザーの平均徒歩速度を計算してNAVITIMEのルート検索結果に反映したりできる。

 ログ・データを共有して利用するサービスもあるだろう。ログ・データとは言っても,当社では今のところ個人情報は扱っていない。通信事業者側で,個人情報や電話番号と無作為なIDをひも付けた情報を持っている。ユーザーが位置情報などをリクエストした場合,当社にはIDだけが送られてくる。

 それでもNAVITIMEユーザー全体の無名のデータの集まりから,「どの時間帯に,どの場所に,このくらいの人が来ている」ということは分かる。他のユーザーがよく検索している場所やある地点から半径2km以内の人気スポットを探すことが可能だ。

 日本で2007年春以降に発売の携帯電話には,「緊急通報時に発信者の位置を通知する」ことが義務化された。そのため,国内ではGPS搭載携帯が急速に普及しつつある。GPS搭載携帯は現状で約3000万台,総務省の概算では4年後に約9000万台になる見通しだ。これだけGPSが普及すれば,ログ・データをマーケティングにも活用できるかもしれない。

 全くユーザー属性が分からないと今後,こうしたログ・データ関連サービスを展開するのは難しい。そのため,新たにサービスを展開する際に,改めてユーザーから許諾を取って,属性情報を提供してもらうことはあり得る。

>>後編 

ナビタイムジャパン 代表取締役社長
大西 啓介(おおにし・けいすけ)氏
上智大学大学院理工学研究科 電気電子工学博士後期課程修了。1993年に大学院を卒業後,祖父が創業した大西熱学に入社。環境試験装置のアルゴリズムやソフトウエア開発に携わる。1996年,大学の後輩だった菊池新氏(現・副社長兼CTO)と共に,社内ベンチャーとして経路検索エンジン・ビジネスを立ち上げる。1998年,モバイル向け経路探索地図描画に関するアルゴリズムと,独自データ・フォーマットを開発。電車,飛行機,自動車,徒歩まで多様な移動手段に対応した世界初のトータル・ナビゲーションを完成。2000年3月に大西熱学から独立し,ナビタイムジャパンを設立。社長兼CEOに就任。2007年に東京大学客員教授に。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年10月20日)