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[前編]ハイエンド競争は先行の利がある

 ユーザーニーズを細かく分析した製品を投入することで、プロセサの王者インテルにサーバー市場で苦渋を何度も味あわせてきた米AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイシズ)。しかしここにきてハイエンドサーバー市場にもインテルの勢力が伸び、ユーザーから見た差がなくなりつつある。体力のあるインテルに対して製品面でどのように差異化し、競争力強化と事業の安定を両立させていくのかを聞いた。

米国発の金融危機が全世界の様々な産業に影を落とし始めています。

 当社にとっても、厳しいものになりそうです。08年10月の時点で、当社は業績をフラットに保てるとの予測を出しました。ところが、12月に入ってから出した予測はそれよりも20%から25%程度落ち込む見通しです。特に10月から12月までの第4四半期では未曾有の下落となりました。

 2009年についてのコメントは控えたいと思います。あえて言うなら、これまでにない、予測できない状況になるのではないでしょうか。

AMDは顧客のニーズを細かく精査し、インテルにはない性能や機能を持つ製品を開発して市場をリードしてきました。しかしここ1、2年は出荷の遅れや不具合などで、顧客の期待に応えられないケースが見られます。

ダーク・マイヤー氏
写真:柳生貴也

 出荷が遅れたのはコードネームでバルセロナと呼んでいたOpteronのことですね。それはもう過去のことです。

 (2008年)11月に発表した新しいクアッドコアのサーバー向けプロセサOpteronについて紹介させてください。コードネームでShanghai(シャンハイ)と呼んでいたものです。予定よりも早く出荷を開始できました。デルやHP(ヒューレット・パッカード)が製品を発表済みで、IBMやサン・マイクロシステムズも準備をしています。

 2009年の後半にはShanghaiの6コア版を投入する予定です。これは「イスタンブール」と呼んでいるものです。次世代のプラットフォームで稼働することになります。プロセサとメモリーとのダイレクト接続やI/Oバスを改良したものです。もちろんイスタンブールは現在のプラットフォームとも互換性があります。2010年には第3世代のプラットフォームを投入したいと考えています。

Itaniumは競合にならない

インテルがHPなどと取り組むハイエンドサーバー向け64ビットプロセサ「Itanium」についてはどのように見ていますか。

 まず強調しておきたいのは、我々はOpteronによって、サーバー市場を64ビットのアーキテクチャへ移行させるのに成功したという事実です。Itaniumを搭載したサーバーの実績はニッチに過ぎません。我々の競合にはならないと思います。Itaniumと当社のOpteronは市場が異なるのです。

高性能コンピューティング(HPC)の分野で、これまでOpteronだけを使っていたクレイが、インテルのプロセサも採用しました。HPCでのAMDの一人勝ちの時代は終わったのでしょうか。

 複数ベンダーでの競争があるのはいいことです。ただしご指摘の通り、我々はHPC分野では先行しています。HPCの性能を集計しているTOP500では、Opteronを搭載したシステムが日本のトップ3を占めています。

 それは技術面で圧倒的な優位があるからです。2003年に投入したOpteronでマルチコア、そしてプロセサからチップセットを介さずにメモリーにダイレクトにアクセスするアーキテクチャなど革新的な技術を盛り込みました。コアが増えると性能は上がるが、その間での通信が多くなり、チップセットなどでのオーバーヘッドが生じます。ですが私たちの技術はそれを解消したのです。

 インテルはこうした技術を採用した製品を2009年に市場に投入します。我々が製品を投入した2003年から6年もかかっています。この点に非常に驚いてます。

2006年に買収したグラフィックスチップ・メーカーのATIテクノロジーズとの相乗効果は出ていますか。

 当社はプロセサをハイボリュームで生産し、かつハイエンドのグラフィックス技術を持つ唯一のベンダーとなりました。これが現在優位に働いています。と言うのも、今のHPCなどハイエンドで有効な解となっているからです。グラフィックスのチップを3次元のレンダリングだけでなく、一般的な用途(ゼネラルパーパス:GP)でも使うので「GPGPU」と呼んでいるものです。

 GPGPUを使うと、HPCの分野で浮動小数点数演算などの複雑なシミュレーションを高速に処理できます。CPUに比べて20倍速いというデータもあります。当社はテラFLOPSの性能を持つGPGPUの製品を世界で初めて発表し、市場をリードしています。

 CPUの処理をテクノロジーの異なるGPGPUでオフロードすることで、コストパフォーマンスを高めることができるのです。プロセッシングの用途によって演算手段を使い分ける、まさにアートと言えるものです。処理の種類によってはアプリケーション開発の生産性が極めて高まります。GPUへのマイグレーションが思ったよりも急速に進むかもしれません。

>>後編 

米AMD社長兼CEO
ダーク・マイヤー氏
米イリノイ大学でエンジニアリングを専攻、米ボストン大学で経営学修士号を取得。米インテルや米ディジタルイクイップメントでのプロセサ開発を経て、1995年AMD入社。クライアント・パソコン向けプロセサ「Athlon」の開発責任者やコンピュテーション製品グループ(CPG)の責任者などを歴任し、2004年CPG取締役副社長に就任。05年AMDマイクロプロセッサソリューションズセクター社長兼CEO、08年AMD社長兼COO(最高執行責任者)、08年7月から現職。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集部長,取材日:2008年12月11日)