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顧客満足度が最重要指標 信頼されれば営業効率も高まる

2008年5月にシグマクシスを設立し、代表取締役CEO(最高経営責任者)に就いた。日本IBMで副社長、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(PwCコンサルティング)、日本テレコムなどでトップを務めたIT業界屈指の論客の転身は話題を呼んだ。その倉重氏が売り上げや利益よりも経営者として重要視するのが、顧客満足度である。

倉重さんにとって、顧客満足度はどのくらい重要なものですか。

 当社で経営に当たって重視する指標は四つあります。売り上げ、利益、品質、顧客満足度です。優先順位はこの逆です。つまり、顧客満足度が一番高くなります。

こう考えられるようになったきっかけは?

 昔から重要だとは考えていました。公言するようになったのは、PwCコンサルティングに転職してからですね。PwCコンサルティングの事業はすべて人間が提供するものです。顧客満足度が低いと、いつか発注されなくなります。

顧客の満足度が高まれば、営業効率も良くなるとのお考えをお持ちだと聞きました。

 グッドデリバリーがベストセールスにつながる、ということです。顧客満足度が高いサービスを提供していると、営業にあまり労力をかける必要がなくなります。同じ顧客がまた発注してくれますから。

 この会社はまだ設立したばかりですから、PwCコンサルティングで経験したことをお話しします。当時は10件の見込み案件を見つけたら、そのうちの6.5件は契約できていました。

顧客満足度も高かったのですか。

 NSI(Net Satisfaction Index)という指標を使った調査を実施していたのですが、100点満点で85点ありました。75点あれば、ほぼお客様に満足していただいている状態ですから、これよりも良かったことになります。

それは最初からですか。

 最初は高くはありませんよ。少しずつ改善していったのです。

どのようにして顧客満足度を改善したのですか。

 NSIを調べるときには15項目くらいの質問があるわけです。1個ずつ質問して、お客さんに答えを書いてもらいます。低いところはなぜだったかを確認するのです。

 お客さんの意見を聞いて反省し、変えていくことを繰り返すなかで、だんだん顧客満足度が高くなる。お客さんに学ぶということです。

継続的にお付き合いする顧客の場合は、日常の商談の中で顧客の満足度を確認できませんか。

 担当者が個人として尋ねることはできるでしょう。ですが、一定のルールに基づいて質問し、結果を記録に残すことで、統計的に分析することが可能になります。

 これで、会社全体で学べるようになるんですよ。

NSIなどの調査を継続する以外に、顧客満足度を上げる方法は?

倉重 英樹(くらしげ ひでき)氏
写真:柳生 貴也

 もう一つは、成功報酬制度の導入です。

 基本的に成果報酬で契約する場合には、損益計算書か貸借対照表のどこかの数字を変えるということで合意して、契約するわけです。コスト削減についての契約を結んでいるとすると、実際にお客さんがいくら削減できるかが分かります。お客さんはこの金額が大きいほうがいい。

 成功報酬の金額は、コスト削減分の金額の何パーセントで決定しますから、当社にとっても、削減できる金額は多いほうがいいのです。これで、お客さんと目標を共有することができます。

 目標を共有化すると、お客さんとの間で一つのプロジェクトチームができます。両方の知恵と経験がこの中に入ってくるんですよ。知恵と経験が融合し始めるから、価値創造につながる。価値を創造するのは楽しいことです。だから顧客満足度が高まるんです。

「満足度インセンティブ」という経営手法も実施されています。

 これはプロジェクトが終わった際の顧客満足度が一定の値を超えると、契約金額を10%増やし、一定以下だと10%減らす契約手法のことです。

 まず大事なのは、売り上げ全体から見れば10%ですが、プロジェクト全体の利益率が売り上げの10%だとすると、顧客満足度によって利益が2倍増するという事実です。これでプロジェクトメンバーが、お客さんの満足度を初めから強烈に意識することになるんです。

意識すると何が良いのですか。

 サービスは提供している人のモチベーションが下がったら品質に影響します。満足度を意識してモチベーションが上がったほうが、いいものを提供できるでしょう。

 物品を買う場合と違って、安く調達すればいいというものではないのです。サービスを買うのなら、うまい買い方を考えるべきなんですよ。

 日本人はこれまで、あまり有料でサービスを買ったことがないのです。だから物品と同じ考え方で、強くコストダウンを要求してしまいがちです。ユーザー、ベンダーを問わず、サービスの買い方を勉強すべきではないですか。

 提供側のモチベーションを上げる方法や、素晴らしい労働環境を提供することも考えたほうがいい。コラボレーションの強化もそうです。

2008年5月にシグマクシスを設立されて、半年強が過ぎました。

 本当にゼロからのスタートでした。半年間で160人が在籍するようになって、ビジネスプロセス、人事制度や研修制度を含めたコンプライアンスの体制も、全部出来上がったわけです。結構な“ロケットスタート”が実現できたのではないですか。

事業の状況はどうですか。

 現時点で、数十の案件を受注しています。まだ大株主である三菱商事グループに関係するものが多いですかね。

「ICTを活用して企業価値創造を支援するビジネス・コンサルティング・サービス」が、シグマクシスの事業領域です。システム開発も手掛けるのですか。

 当社は自らのことを「アグリゲーター」と言っています。時代に合わせて、自分で持っていた方がいい能力はありますが、基本的には外部の力を活用します。

ほぼすべてのビジネスで成功報酬契約を結べそうですか。

 まだまだ。成功報酬型の契約を本格的に展開するためには、最低300人は従業員をそろえないと無理です。来年の3月には300人にしたいので、来年度から具体的なプロジェクトが動くようにするつもりです。

PwCコンサルティングやIBMは、ソリューションの提供に関して独自の方法論を持っていますし、いろいろな情報が世界中から集まります。シグマクシスは完全に独立した企業です。ハンディを感じませんか。

 方法論はもう出来上がりましたよ。10月から利用しています。

 確かに当社にはデータベースもありません。だけど今は、インターネットで探したほうが早いんですよ。

 データベースを持っているかどうかは、あまり関係なくなっています。検索エンジンを使いこなしてデータベースにアクセスするリテラシーのほうが重要です。

景気が悪くなってきます。どのようにお考えですか。

 景気の問題は、まだ底が見えてないわけですよ。こういう状態のときに、事業をどう展開すべきかを考えても、あまり意味はありません。

 むしろ今は、会社がどうあるべきかについて、経営者がじっくりと検討する時期です。

 ダイバーシティーマネジメントや、成果主義人事制度などテーマはいくらでもあります。ビジネスインテリジェンスと呼ばれる管理系システムの在り方も重要です。連結経営の体制が、本当に構築できている会社はまだないんです。

 いつでも当社は(変革を)お手伝いしますよ。

シグマクシス 代表取締役CEO
倉重 英樹(くらしげ ひでき)氏
1942年生まれ。66年に早稲田大学を卒業、同年日本IBM入社。93年取締役副社長。同年、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント代表取締役会長。2004年日本テレコム代表取締役社長。06年RHJIインダストリアル・パートナーズ・アジア代表取締役社長。07年RHJインターナショナル・ジャパン代表取締役会長(現職)。08年、シグマクシス代表取締役CEO。

(聞き手は,中村 建助=日経ソリューションビジネス編集長,取材日:2008年11月12日)