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[前編]企業市場に進出する理由?そこに山があるからです

「進歩が停滞していた企業情報システムを再び活性化させる」。米グーグルで企業向け事業を統括するデイブ・ジロード氏は、こう豪語する。Gmailをはじめ一般消費者向けに機能や使い勝手で実績を積んだサービスで、エンタープライズ分野を本格開拓する。とは言え、そこは新規参入組。「あらゆる方策で企業の信頼を得る」と決意を見せる。

10月末にクラウド戦略を発表した米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)は、グーグルをライバルに挙げています。同社は脅威になりますか。

 もちろんマイクロソフトは巨大な存在であり、手強い競合相手であることは間違いありません。先日の開発者向け会議でも意気込みを示していたようですし、エンタープライズ分野で長年の経験を基にクラウド分野へ進出してきているのですから。

 しかし当社も企業向けのクラウド分野で強力な存在になれると信じています。当社は生まれつきのWeb住民です。Webを基盤にするクラウドコンピューティングに関しては、当社のほうが進んでいます。

グーグルの企業向け戦略の基本方針はどのようなものでしょうか。

 中心になるのは電子メールサービスの「Gmail」です。企業の社員はどのアプリケーションよりも電子メールの利用に多くの時間を費やしています。ですから当社にとって電子メール分野の攻略は非常に重要です。

 当社のサービス製品のなかでも、Gmailは当社の経験や技術の蓄積が進んだ成熟したアプリケーションです。企業向けには、Gmailを中心に文書作成や共有、スケジュール管理といったオンライン情報管理サービス「Google Apps Premier Edition」を提供しています。こうした情報管理サービスで企業の情報活用環境を改善していくのが、最も自然なアプローチです。

そもそもなぜグーグルがエンタープライズ分野に進出するのですか。

デイブ・ジロード氏
写真:丸毛 透

 そこに山があるから登るのだ、というのと同じ答えですよ(笑)。グーグルの企業ミッションに照らして言えば、職場での情報アクセス環境を改善するためです。多くの職場では情報への効率的なアクセスが阻害され、社員は非常にストレスを強いられています。例えば電子メールのメールボックスの容量は、多くの企業で100メガバイトそこそこではないでしょうか。Gmailならば一般消費者向けの無料版で7ギガバイト、企業向けの有料版では25ギガバイトを使えます。

 当社の企業ミッションはすべての情報を組織化して容易に利用可能にすることですから、何とかして企業の現状を改善したい。そういう発想でエンタープライズ分野に参入したのです。

コンシューマ分野で培った技術をベースに、企業向け事業を展開する、と。

 その通りです。コンシューマ分野で培った経験、知識を基にして機能やサービスの開発を進めていくのが、私たちのやり方です。

セールスフォース・ドットコムのような業務アプリケーション分野に進出する計画は。

 セールスフォースはパートナーとして近い関係を築いていますが、当社自身がセールスフォースやSAPに置き換わろうという考えはありません。私たちにはエンタープライズ市場のあらゆる面で競合しようなどというつもりは、全くないのです。既存のエンタープライズ市場にはない新しい分野、当社の強みを生かせる分野に焦点を当てていきたいと思っています。一般消費者向け技術を生かしたGmailなどは、その代表例です。

エンタープライズ事業の収益見通しはどうでしょう。広告事業に次ぐ柱として、どの程度の成長を期待しているのですか。

 私たちが新しい市場に参入する際、そこからどれぐらい利益が得られるかという見通しを立てることはありません。まず解決するべき課題があるかどうかが重要です。それに対してグーグルが最も優れた解決策を提供でき、そして技術があると判断すれば参入します。収益は結果としてついてくるものと考えています。

 これまでのところ広告事業では、この方針が非常にうまくいっています。エンタープライズIT市場は、広告市場の3倍の規模があります。もちろん簡単に成功するとは思いませんが、数年後には大きな収益をもたらしてくれると信じています。

米グーグル エンタープライズ部門担当社長
デイブ・ジロード氏
米ダートマス大学を卒業(エンジニアリングサイエンスとコンピュータサイエンスを専攻)、ミシガン大学でMBAを取得。アクセンチュアやブーズ・アレン・ハミルトンなどでのITコンサルティング、アップルでの製品マーケティング、映像検索技術のヴィラージュなどを経て2004年にグーグルに入社。現在はグーグルの企業向け事業の販売、マーケティング、製品開発、顧客サポートを統括する。

(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集部長,取材日:2008年11月12日)