PR
[後編]2010年の組織問題はお客様視点で検討すべき

社長への就任以来,海外展開を大きな柱に掲げている。

 日本企業のグローバル化が進み,世界中に拠点を構える企業が増えている。グローバル・ネットワークの構築はもちろん,地域個別のソリューションに対するニーズが高まっている。一方,国内では少子高齢化が進んでおり,日本の市場だけで十分とはいかなくなりつつある。収入や事業領域の拡大という点でグローバル化は避けて通れない。

 そこで国内のトータル・ソリューションをベースに海外展開を進めている。ただし我々だけでは,できることに限界がある。M&A(合併・買収)を含めた提携を考えていくことになる。

 海外展開はネットワークやソリューションの提供だけにとどまらない。我々が得意とするNGNや光の技術を海外に普及させていくことも考えている。また新しいサービスをグローバルで展開することで優れたコンテンツを入手したり,端末やプラットフォームを共同で開発・調達したりといったグローバル化もある。グローバル・ビジネスの売り上げは2010年度に約4000億円を目指す。

今後は携帯と固定の連携をはじめ,通信と放送の融合など業界の枠組みを越えた取り組みも増えていくことが予想される。現状では規制の制約があるが,どう考えているか。

三浦 惺(みうら・さとし)氏
写真:的野 弘路

 通信業界は今後,サービスの融合が進んでいく。これは世界の動きを見ても同じ。こうした流れのなか,我々には公正競争の確保という条件が課せられている。競合他社に比べてハンデがあるのは事実。とはいえ「競合他社が提供しているのに我々はできない」あるいは「ユーザーの要望に十分応えられない」といったことがあってはならない。この克服に向けてグループで最大限努力していく。もちろん規制の範囲内で考えなければならないが,どこまで取り組めるか。その上で実現できないとなれば別の手段を考えていく。

2006年の「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」の結果,NTTの組織問題について2010年に検討する予定となっている。検討に先立ってNTT自身があるべき姿を世に問うべきではないか。

 2010年にどのような議論が展開されるのかはまだ分からないが,我々としては考えを持っておかなければならない。基本的には技術やサービスの流れ,国際的な状況も踏まえて組織問題を議論することが重要と考えている。

 単純な組織論だけを議論しても良い結果にはつながらない。技術やサービスが今後どうなっていくか。その方向性を十分議論したうえで,お客様視点に立ってあるべき姿を検討すべきだ。

市場の成熟化やオープン化で通信の一般化(コモディティ化)が進み,競争の舞台は上位のコンテンツやサービスにシフトしつつある。通信事業者は今後,どういう存在になっていくのか。

 我々は新・中期経営戦略で「サービス創造グループ」を掲げたが,通信インフラの重要性がなくなるわけではない。災害対策やセキュリティなどを含め,今後も重要な役割として残る。

 ただ,逆にそれだけでは通信事業者として成り立たないのも事実。設備を敷設すれば儲かる時代は終わった。インフラはもちろん,認証や課金といったプラットフォーム,その上のコンテンツを組み合わせてユーザーに便利で良いサービスをいかに安く提供できるかが重要になる。

 とはいえ,我々だけですべてを提供できるわけではない。不得意な分野にまでわざわざ進出するつもりはなく,パートナと協業していくことになる。競争と協業の両面があり,その結果,良いサービスが生まれる。通信事業者はその一端を担うことになる。

NTT 代表取締役社長
三浦 惺(みうら・さとし)氏
1944年生まれ。広島県出身。67年に東京大学法学部を卒業し,日本電信電話公社(現NTT)に入社。96年に取締役人事労働部長,99年1月に常務取締役東日本会社移行本部副本部長などを経て,同年7月に東日本電信電話(NTT東日本)の代表取締役副社長に就任。2002年6月にNTT東日本の代表取締役社長。2005年6月にNTT代表取締役副社長中期経営戦略推進室長,2007年6月に現職のNTT代表取締役社長に就任した。趣味は旅行,ウォーキング,山登り。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年12月16日)