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 業務アプリケーションを,どこからでも,どのような端末からでも利用できるようにする。このためのミドルウエア製品群を提供し続けている企業が,米Citrix Systemsである。画面情報端末とアプリケーション仮想化で事業を始め,現在では仮想マシン・ソフトのXenを手中に収め,仮想化のレイヤーを拡充している。来日した同社営業部門トップに,仮想化製品とユーザーの動向について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


米Citrix SystemsでSales and Services部門のSenior Vice Presidentを務めるAl J.Monserrat氏
米Citrix SystemsでSales and Services部門のSenior Vice Presidentを務めるAl J.Monserrat氏
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製品の拡充動向とビジョンを教えてほしい。

 現在の企業をとりまく状況として,企業ユーザーと業務アプリケーションの距離が離れてしまい,利用しにくい環境になっている点が挙げられる。ユーザー側では,グローバル化,オフショア化,テレワーク,モバイル,グリーンITなどの流れによって,アプリケーションが置かれた場所から物理的に遠くなった。一方で,データ・セキュリティやコンプライアンスなどの視点により,アプリケーション側もまた,ユーザーから遠ざかった。

 当社は,こうした背景の下,ユーザーとアプリケーションを技術によってつなぐことに注力している。これを最善のかたちでやろうとすると,仮想化ということになる。そして,アプリケーションをユーザーの手元に効果的に届けるためには,以下の3つの仮想化のすべてが必要になる。すなわち,アプリケーション仮想化,サーバー仮想化,デスクトップ仮想化である。当社はすべての製品をそろえている。

新たなコンピューティング・スタイルの動向はあるか。

 2008年前半に,BYOC(Bring Your Own Computer,私有パソコンの持ち込み)と呼ぶコンセプトを提唱し,実際に当社内で導入した。BYOCにより,企業はクライアントPCなどのエンドポイントのハードウエア・デバイスを購入する必要がなくなる。なぜなら,情報システム部門はエンドユーザーに対して,管理された仮想マシンを配布するだけでよいからだ。

 BYOCの下では,企業は従業員にパソコン購入資金を提供するだけでよい。資金を手渡されたエンドユーザーは,DELLでもHPでもAppleでも,自分が気に入ったクライアントPCを自由に買う。このため,エンドユーザーの満足度が高まる。一方,会社としても,資産としてバランスシートに載らないため,コスト削減になる。3年間分のメンテナンス費用も,最初に与えた資金の中からユーザーが自主的に捻出すればよい。何より,ハードウエアの運用管理が要らなくなるのが大きい。

 当社はBYOCを半年前から実施しているが,このほかにも,知っているだけで2~3社の採用事例がある。個人所有PCで仮想マシンを動作させると聞くと,企業によってはセキュリティや処理性能に不安を感じる向きもあるだろう。実は,こうした不安を解消するための技術として,クライアントPC向けの新しい仮想化技術「Project Independence」(コード名)を開発した。

Project Independenceとは何か。

 まず,個人所有PCを業務に使うための方法として,現在でも,3つのやり方が存在する。1つは,アプリケーション仮想化だ。「XenApp」を用いて,シンクライアントなどからアプリケーションを遠隔操作する。2つ目は,デスクトップ仮想化だ。「XenDesktop」を用いて,データセンター側のデスクトップOSを遠隔操作する。3つ目は,クライアントOSの上でType II型のハイパーバイザ(仮想マシン・ソフト)を動作させ,仮想マシンを実行する方法だ。

 今回,新たに始めようとしているProject Independenceとは,クライアントPC上で動作するType I型(ベアメタル型)のハイパーバイザだ。Windows XP/VistaやMacOSといったクライアントOSの上ではなく,クライアントPCのハードウエア・デバイスの上で直接動作するハイパーバイザとなる。CPU/チップ・ベンダーの米Intelと共同で開発しており,IntelのvProテクノロジーが備えるハードウエア仮想化支援技術を用いたものになる。チップ・レベルで実装され,クライアントPCに最初から組み込まれた形で登場するだろう。2009年末頃をめどに最初のリリースを発表したい

 Project Independenceによって,クライアントPCのハードウエア上で,まったく異なる別々の仮想マシンを,以前よりも安全かつ高性能に,独立したかたちで動作させられる。これにより,個人所有のPCを使いつつ,会社用の仮想マシンと個人用の仮想マシンを共存させる運用が可能になる。会社からは,個人所有PCであることをまったく意識することなく,従来通りのエンタープライズ用PCとみなして管理できる。

昨今の不況はIT投資やITの利用形態に影響を与えているか。

 コスト意識が高まっていることは確かだ。ここで一つ提言したいのは,ITコストの削減よりも,生産性の向上を追求すべきである,ということだ。

 企業全体の予算に占めるITの予算は,わずか10%程度でしかない。つまり,IT予算を25%削減したとしても,企業全体から見たら2.5%の削減にしかならない。一方で,人件費などのように企業の売り上げにかかわる部分の予算は,企業予算全体の50%を占めている。つまり,労働生産性を10%上げるだけで,企業全体の効率を5%高められる。IT予算を25%も減らしても,生産性を10%高める効果にはかなわないのである。