![[後編]「いずれすべてがクラウドに移行」,私はそう信じている](tit_interview.jpg)
Windows AzureはDVDで売らない
Windows Azureのソフトウエア本体を、ユーザー企業やパートナーに提供する用意はありますか。
Window AzureをDVDに格納した製品としても販売するのか、あるいはサービスとしてのみ提供するのか、まだ決めていません。おそらくDVDに納めた製品として提供することはないと思います。
マイクロソフトは現在、データセンターの建造を急ピッチで進めています。日本におけるデータセンター投資についてどう考えていますか。
マイクロソフトはすでに日本にデータセンターを所有していますし、今後も拡張します。
しかし我々が世の中すべてのデータセンターを運用できるわけではありません。パートナーのデータセンターも必要ですし、プライベートクラウドも必要です。そういった他社のデータセンターにもWindows Azureが展開されるようになるでしょう。

バルマーさんは2007年、「10年後には、企業が自前で運用するサーバーはなくなる」と発言されました。今はそうならないと考えているのですか。
二つのことを指摘させてください。一つは、我々には常にパートナーが必要だということです。1社だけですべての機能、すべてのサービスを提供することは不可能です。
もう一つは、プライベートクラウドを求め続ける組織もあるということです。例えば国防総省のような組織が、第三者のデータセンターを利用することはあり得ません。
「いずれすべてがクラウドに移行する」というコンセプトは依然として信じていますが、どのように実現されるかは、より現実的にみています。
5億ドル(450億円)を投じて建造中のシカゴデータセンターでは、コンテナ型を採用したそうですね。
シカゴは汎用のデータセンターではなく、Web検索に特化した施設です。世間はグーグルがクラウドを完全に理解していると思いがちですが、(グーグルが得意な)Web検索はデータに対する読み出しが極端に多く、書き込みが少ないという特殊なアプリケーションです。我々もシカゴではWeb検索という特殊なアプリケーションに特化して、規模を追求しやすいコンテナ型データセンターを採用しました。
消費者向けの電子メールサービスも、データセンターの規模が重要です。しかしWindows Azureのような汎用プラットフォームで重要なのは、規模だけではありません。例えばジオレプリケーション、つまりデータやプロセッシングを地理的に離れたデータセンターに分散させることも、Windows Azureでは重要になります。
サービス収入がソフトウエアのライセンス収入を上回るのは、何年後ぐらいだとみていますか。
予測は難しいと思います。また注目すべきなのは収入ではなく利益かもしれません。パッケージソフトウエアの粗利益率が100%に近いのに対して、サービスはそうではありません。データセンターを運用する分、利益率は低くなります。
PDCではクライアントOSの新バージョン「Windows 7」も発表しました。日本企業のなかには、Windows Vistaをスキップする動きが出ています。Windows 7の詳しい情報を出せば出すほど、その傾向が強まりませんか。
我々は、お客様に対して透明性(製品の出荷計画などを事前に詳しく伝えること)を持って接するべきだと考えています。お客様にとって良いことが我々にとっても良いことだという信念があるからです。
スティーブ・バルマー氏
(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集部長)