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[後編]大手通信事業者の真似はしない,ベンチャー向けにサービスを開発

ほかのサービスよりも,遅延が少なくスループットを高められている。

 HardEtherは距離が短いので,遅延の値を予測できそれを保証できる。ほかの通信事業者の広域イーサネットは,ホームページを見る限りでは全国で何ミリ秒という遅延保証しかなく,距離が短くても変わらない。

 HardEtherでは,遅延の保証値は3倍に設定している。本来は3分の1でよいが,測定機材内で発生する遅延があるためだ。遅延が発生するのは,故障しているところがあるから。イーサネットのレイヤーで遅延が起きる要素は,急にパケットがたまるとかぐらいしかない。もっとも,それは共用網の場合で,専用網だと出ないはず。光の速度を考えると,遅延はそれほど大きくならないはずだ。

 スループットでは,ファイバの距離を40キロメートルにしてテストしたり,減衰器を入れるなど現地で調査をして,800Mビット/秒以上は出ると分かったので値を設定した。

 イーサネットの仕様では,物理レイヤーだと最大1250Mビット/秒。1514オクテットのパケットを隙間なく流すと,どんな場合でも1000Mビット/秒近くは出るはずだ。800Mビット/秒の根拠は測定用のノート・パソコンのイーサネット・カードやCPU性能で検証できる最大速度だったからだ。

現在はポイント・ツー・ポイントのサービスだが,マルチポイントは考えないか。

 今は予定してない。たくさんの事務所をつなぎたいユーザーは,大手事業者のサービスを受けた方が良い。

 我々がサポートするのは,インターネット相互接続点(IX)とデータ・センターをつなぎたいとか,ファイバをとにかく安く調達したいユーザーだ。

会社を設立して5年だが,今後はどういうビジネスに向かうのか。

登 大遊(のぼり・だいゆう)氏
写真:丸毛 透

 安定し出したのは,2005年12月にPacketiX VPN 2.0を製品化して,継続的に売れるようになってから。PacketiX VPNのユーザー数は3000件程度で,ライセンス数は4万件。営業利益は去年は4000万円となった。そのうち1000万円程度を研究開発に回して,光ファイバ・サービスを研究した。

 ここで見えてきたのは,ユーザーが2種類いること。1種類目は拠点間とか,データ・センターとか,2拠点をレイヤー2でつなぎたいというユーザー。もう1種類が,会社のパソコンにリモートアクセスしたいユーザーだ。そこで拠点をつなぐのは,HardEtherやBフレッツを使ったサービスで,リモートアクセスは,Desktop VPNやPacketiX VPN 3.0でカバーしようと考えた。

 通信サービスは,5年,10年と提供し続けないといけないものと考えている。今まで作ってきたサービスを,できるだけ長い間ユーザーが安定して使えるよう維持するよう,社会のインフラを提供している自覚を持って専念していきたい。

これからサービス・エリアを広げないのか。その場合は,他社を使うのか。

 エリアを広げる候補地はあるが,すぐにはやらない。東京~大阪は将来的には可能だが,ファイバを借りているTOKAIと競合する。そもそもベンチャーのユーザーには,東京~大阪をつなぐ発想はあまりない。

 ソフトイーサはレイヤー2に特化しており,レイヤー3以上のルーティングを伴う接続やトランジットを組み合わせて提供する意図はない。インターネット接続事業は,筑波のベンチャー向けのサービスを検討中だが,東京でやるわけではない。

NTTのNGN(次世代ネットワーク)をどう見ているか。

 Bフレッツのフレッツ・ドットネットは,IPv6通信ができた画期的なサービスだった。しかしNGNのフレッツ 光ネクストだと,それに相当する拠点間のIPv6通信が提供されていない。そこで総務省に意見書を提出し,回答を受け取った。

 仕様を落とした背景は分からないが,サービスの差異があることをユーザーにきちんと説明せずに,光ネクストを薦めているのは問題だと思う。

ソフトイーサ 代表取締役 会長
登 大遊(のぼり・だいゆう)氏
1984年11月生まれ。兵庫県尼崎市出身。高校在学中に日本初となるFOMA用メモリー編集ソフト「PLUS for FOMA」を開発。2003年4月に筑波大学第三学群情報学類入学。同年,情報処理推進機構(IPA)の2003年度未踏ソフトウェア創造事業未踏ユース部門の採択を受け,VPNソフト「SoftEther」の開発に着手。同大学に在籍のままソフトイーサを設立した。同社で「PacketiX VPN」の開発を統括し,2005年末に製品化。2006年に代表取締役会長に就任。2007年から光ファイバを用いた通信に関する実験・研究に着手。2008年12月に「HardEther」の提供を始め,同サービスの統括を担当。趣味はプログラミング,読書,映画鑑賞。ロボットスーツで有名なCYBERDYNE(サイバーダイン)情報通信担当顧問を兼務。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2009年1月19日)