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 間近に迫るIPv4アドレス枯渇に際して,IPv6対応の必要性が叫ばれている。具体的なIPv6対応のうち,最も重要な要素の一つが家庭用ルーターのIPv6化である。現在,IPv6によるインターネット接続機能を持つ家庭用ルーターの仕様について,IPv6普及・高度化推進協議会(IPv6協議会)の「IPv6家庭用ルーターSWG」(SWG:サブ・ワーキング・グループ)でガイドラインの検討が進められている。SWGのChiarとCo-Chairに話を聞いた。

(聞き手は高橋 健太郎=日経コミュニケーション


「IPv6家庭用ルーターSWG」はどのような経緯で設立されたのでしょうか。

IPv6協議会 IPv6家庭用ルーターSWGのChairとCo-Chair 左から,印南鉄也Co-Chair(ソフトバンクBB ネットワーク本部 ネットワーク統括部 次世代ネットワーク推進部 担当課長),北口善明Chair(インテック・ネットコア ネットワークプラットフォーム研究開発グループ 研究員),中川あきらCo-Chair(KDDI IP統合技術本部 IP ネットワーク部 統括グループ 課長補佐)。
IPv6協議会 IPv6家庭用ルーターSWGのChairとCo-Chair
左から,印南鉄也Co-Chair(ソフトバンクBB ネットワーク本部 ネットワーク統括部 次世代ネットワーク推進部 担当課長),北口善明Chair(インテック・ネットコア ネットワークプラットフォーム研究開発グループ 研究員),中川あきらCo-Chair(KDDI IP統合技術本部 IP ネットワーク部 統括グループ 課長補佐)。

中川 IPv4アドレスが枯渇しつつあり,IPv6に対応する必要があります。そのためには家庭用ルーターのIPv6対応が必須になります。ただ,海外ではそうしたルーターの仕様検討が進んでいますが,国内では動きがありませんでした。何らかの動きが国内でも必要ということで設立されたのが,このSWGです。

 ホーム・ゲートウエイ(HGW)や家庭用ルーターは,メーカーがそれぞれの戦略に基づいて,各メーカーが仕様を考え,作っていくのが本来の在り方です。しかし,今IPv6化の動きは全くと言っていいほど進んでいないので,メーカー1社だけでは対応が難しいでしょう。そこで,業界内で最低限の共通仕様を整理しましょう,ガイドラインを作りましょうというのが,SWGの目的です。

 ガイドライン自体は強制力を持つものではなく,ガイドラインに準拠して作りたいメーカーは参考にすればよいというスタンスです。また,そのガイドラインを参考にした上で,戦略的な機能を独自に追加してもいいわけです。

印南 私がソフトバンク,中川さんがKDDI,藤崎さん(編集部注:藤崎智宏氏,今回の取材には欠席)がNTTから参加しています。もともと通信事業者の考えはどうなのかという意見交換会があって,それがSWGの前身となりました。

 こうした仕様は通信事業者の考えだけで作れるものではありません。インテック・ネットコアから多くの協力を得ました。とくに荒野さん(編集部注:IPv6普及・高度化推進協議会 常務理事,インテック・ネットコア代表取締役社長の荒野高志氏)が,IPv6協議会の方で議論の幅を広げてみてはどうかと提案し,その結果,IPv4/IPv6共存WGの下で,SWGとして活動することになりました。

中川 SWGの前身の集まりが2008年7月にありました。正式発足は同年9月です。2009年3月末にはガイドラインを出して終了する予定です。

テーマを絞って必要最小限の共通機能を抽出する

具体的には,どのような点について検討が進められているのでしょうか。

北口 まず議論の前提条件があります。IPv6のインターネット接続サービスを提供する際に必要なホーム・ゲートウエイの機能というのが,検討対象となっています。

 議論の途中では,IPv4上でトンネルを作る機能などもテーマに挙がりましたが,それらについては議論しないことにしました。今回の議論の対象は,エンドユーザーに対して純粋なIPv6サービスが出てきたときに必要な機能に絞っています。

中川 HGWのすべての機能を取り上げるのは大変です。SIPの機能とか,IP電話を使う機能とか,最近の製品にはいろいろ入っているからです。今回は,それらはなしにしましょう,ルーターの機能に絞りましょうということにしました。そういう背景から,SWGの名称では,「HGW」ではなく,家庭用ルーターということにしました。

NAT機能の検討はしていないのでしょうか。例えば今,「IPv6マルチプレフィックス問題」で話題になっていますが,実際のサービスでは必要になる機能だと思います。

北口 最初の議論の中では,NTTのNGNとインターネット接続事業者(ISP)の間のプロバイダ接続方法としてどういうものがあるかを検討課題として考えていました。しかし,マルチプレフィックス問題にいきなり取り組むのではなく,まずはそれ以外の部分を整理しようということで,今回は議題の対象からはずしています。

 単純に,家庭がIPv6に接続可能となったときに,どんなサイズのアドレスを割り当てるのか,そのためにはDHCP(dynamic host configuration protocol)を使うのか,といった方式の良い点と悪い点を整理しているところです。

印南 ただ,実際にNTTの「フレッツ 光ネクスト」が世の中で進んでいることは知っていますので,日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)とは情報交換しております。

少なくとも,今回のSWGでは対象外ということでしょうか。今回のSWGは3月末に終了する予定ですが,それ以降は継続して議論する可能性はないのでしょうか。

印南 先の話はしづらいのですが,少なくとも期限を切らないと,いつ終わるのか分かりませんので,とりあえず3月末にマイルストーンを区切って,そこまでにできることをまず終えましょうということにしています。最初のターゲットとしては3月末で終了しますが,もしかしたら4月以降,修正した違うターゲットで続けるかもしれません。

複数の方式が出て,一つに絞れない場合はどうするのでしょうか。

中川 仕様の共通部分を抽出して,もし共通部分でないと判断したなら,仕様から除外した理由を並記しようと考えています。今回の議論では,「最低限持っていなくてはならない機能」という共通認識を合わせたいというところがあります。

北口 あれもこれもと全部の機能を入れ始めると収集がつかなくなります。それに,その仕様に従ってメーカーがルーター製品を作った場合,すごく高いものができてしまいます。

印南 RFCでいうところの「MAY」「MUST」「SHOULD」といった区分けを付けようとしています。