PR

“外国人社長”から見た誇るべきニッポン,変えるべきニッポン 前編―ビル・ゲイツの助言「日本を理解せずにITは理解できない」を胸に マイクロソフト代表執行役社長 兼 米Microsoft副社長 ダレン・ヒューストン氏

コンシューマ技術は日本から世界へ。そしてエンタープライズITは米国から日本へ――。こうした技術の流れは,過去も現在も変わっていない。果たして未来はどうか。コンシューマ技術とエンタープライズITの融合が進む中,米国は日本をどう見ているのか。常に話題の中心にいる米Microsoft。その日本法人社長に就任して1年が経過したダレン・ヒューストン氏。日本を冷静に分析できる立場にある同氏に,日本のITの現状をどう見るか聞いた。

(聞き手=ITpro発行人 浅見 直樹,構成=ITpro 高下 義弘,写真=栗原 克己)


マイクロソフト日本法人の社長として来日してから,約1年が経過しました。経営者の視点から見て,日本と米国の違いをどうとらえていますか。

 米国では,ITプロフェッショナルの眼に輝きがあります。その理由は,彼あるいは彼女らITプロフェッショナルに任される業務が先進的かつ戦略的だからでしょう。米国企業は,IT化がかなり進んでいます。自分が手がけたシステムが会社の発展を支えているのですから,エキサイティングですよね。

 私が見る限り,日本企業では,眼に輝きのあるITプロフェッショナルは残念ながら少数派のようです。ITプロフェッショナルがやりがいを感じているかどうかが,IT業界やITを支える産業の行く末を大きく左右します。日本は,この状況を変えられるかどうかの重要なターニング・ポイントに差しかかっていると言えるでしょう。

 日本企業だからITプロフェッショナルは活躍できない,ということはありません。日系のグローバル・カンパニーに勤める(米国の)ITプロフェッショナルの眼は輝いていますから。だから,日本のITプロフェッショナルも変われるはずです。

日本のデジタル・ワークスタイルは米国の5年遅れ

 私は最近,「デジタル・ライフスタイル」と「デジタル・ワークスタイル」の話をしています。それぞれ,ITを駆使した新しい生活や仕事のやり方を示した言葉です。

 日本はデジタル・ライフスタイルについてはかなり進んでいます。分野によって差異はありますが,米国よりも3年は進んでいると言って良いでしょう。ところが,デジタル・ワークスタイルは違います。米国のほうが,日本より5年は進んでいるのではないでしょうか。いまだに日本はベーシック・レベルにとどまっています。米国もまだ理想の領域には至っていませんが,少なくともアドバンスト(進歩した)・レベルに移行しつつあることは確かです。

 私は社長に就任してから,日本企業の実態をつかむために日本の地方都市を訪問しました。そして,たくさんの顧客企業や,(マイクロソフトの製品を使ってビジネスをしている)パートナー企業の経営者にお会いしました。みなさんは「ライフスタイルのデジタル化は進んでいるものの,仕事環境のデジタル化は遅れている」と口を揃えておっしゃっていました。

 そして皮肉にも,デジタルに一番近い場所にいるはずであるITプロフェッショナルが,その恩恵にあずかっていません。その仕事は,お世辞にもデジタル・ワークスタイルとは言い難いのです。エンドユーザーのパソコンを再設定するために週末に出社したり,エンドユーザーが直接データに触れないように抽出作業を代行したり,メインフレームから必要なデータを抽出するのに1週間かかることから,結果的にお客様を怒らせてしまったりと,非生産的な作業に費やされています。結局,戦略を考えるための時間がなくなり,日々発生する問題の火消しに追われています。

 ITをうまく使えば,数千台ものパソコンをネットワーク経由で一元管理したり,各システムのファイルを縦横に検索して必要なデータを直ちにまとめ上げたりと,ワークスタイルをアドバンスト・レベルに持っていくことができます。そうすれば,ITプロフェッショナルはもちろん,多くの職業人はもっと素晴らしい仕事をこなせるようになるでしょう。

ダレン・ヒューストン氏

米国では,IT技術者は人気のある職業でしょうか。日本の大学では,全体的に情報関連の学科の人気が下がっています。就職先の希望状況を見ても,IT関連の職種はあまり人気が高くないようです。

 米国でも近年,コンピュータ・サイエンスを専攻する学生数が減っていることは確かです。ただ,それを取り巻く環境が日本と米国とではまったく違います。

 当社の調査によると,「米国では日本よりもITプロフェッショナルの地位は高い」という結果が出ています。米企業のCIO(情報統括責任者)はボードメンバー(経営の意思決定層)としてきちんと位置づけられ,しかるべく権限と責任を持ってIT戦略の立案と遂行に携わっています。見かけ上はコンピュータ・サイエンスを専攻する学生数が減ってきていても,土台さえしっかりしていれば,そう危険視することはないと思います。