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奨学金は“オールジャパン”への投資

NTTデータは、筑波大、九州大が推薦した学生に対して、1学年2人、経団連経由で月額20万円の奨学金を出すそうですね。狙いは何ですか。

山下 徹氏

 学生に勉強だけに専念してもらうためです。今回は、筑波大と九州大に拠出することに決まりましたが、経団連としては両大学の学部卒業生のためだけに奨学金を出しているというつもりはありません。筑波大と九州大のIT大学院には、他の地域からも学生が来ることになるでしょう。この2拠点に全国から“オールジャパン”の優秀な学生を集め、勉強に専念してもらうのです。

 そのときにアルバイトをしないですむよう、奨学金を使ってもらいたいのです。筑波と九州に行って勉強をできる環境をつくってやれば、「よし、行って勉強しよう」とモチベーションを高めていけるかもしれない。

 1クラスの人数は20人です。今年度はIT大学院立ち上げの前に大学院の入試があったため、ほとんどが筑波と九州の学生ですが、ゆくゆくはクラスの半数が全国から集まるようにしたい。日本中から純粋に勉強したい人材が、志の高い人間が集まってくるようにしたいのです。その結果、両校が日本の高度IT人材教育のメッカになれば、東大からも東工大からも、慶應や早稲田からも、高専の専攻科からも学生が来てくれるでしょう。そういうふうに全国から、筑波か九州のIT大学院に集まってきてほしい。そのためには旅費と下宿代を出そう、ということなんですよ。

 月20万円の奨学金を受けた学生には、当社への入社義務を課しません。社内でもずいぶん議論しましたが、私が「IT大学院のカリキュラムは、当社への人材集めといった狭い目的じゃないんだ」と話しました。日本のソフト技術全体を育てること、その先にユーザーもベンダーも成長していけることを目指しているんだ、そのためのカリキュラムなんだ、と。

継続的な「カイゼン」が欠かせない

山下 徹氏

IT大学院をよりよい内容にしていくために、今後の取り組みが重要ですね。

 その通りです。まだ課題はあります。その1つが教員の問題です。例えば筑波大学へは、NTTデータ、日立製作所、日本IBM、新日鉄ソリューションズから1人ずつ講師を派遣しています。でも教えられる人は限られています。高いITスキルを持ち、実務経験を積んでいて、なおかつ教育する情熱がある。当社も探すのに苦労しました。

 避けられない問題として給与もあります。こうしたスキルの持ち主であれば、給与も高い。しかし大学側にはそれほどは払ってもらえない。こうした面と、官学の人材ローテーションの仕方について、今後、両者が歩み寄って改善していく必要があります。

 ただ、この2年ほどを振り返ると、私は高度IT人材の育成に向けた議論の中身が、アップグレードした印象を持っています。以前は我々も大学の実態について誤解していただろうし、大学の先生方も産業界は勝手なことばっかり言うなと思っていたことでしょう。

 それが産業界と大学の先生の間の誤解が解けてきて、コミュニケーションが非常によくなってきた。壁のこっち側とあっち側で文句を言い合っているのではなく、直接話をするようになりました。これが一番の成果ではないでしょうか。

 こうした相互理解を土台にして、これからも継続的なカイゼンが欠かせません。一つひとつは小さいかもしれないけれども、それを飽きずに、積み重ねていく。まだちょっとカイゼンのパワーが足りないとか、いろいろなお互いの不満はあるけど、これが日本の風土にも合っているのではないでしょうか。

山下 徹(やました とおる)
NTTデータ 副社長
山下 徹氏 1971年東京工業大学理工学部卒業、同年日本電信電話公社に入社。1988年のNTTデータ通信株式会社(当時)分社以降、開発本部企画部長、産業営業本部長、ビジネス開発事業本部長、経営企画部長などを歴任し、2005年より現職。2007年6月22日付で代表取締役社長に就任予定。日本経団連高度情報通信人材育成部会長、情報サービス産業協会(JISA)副会長を務める。主な監修・著作は、「高度IT人材育成への提言(2007年)」、「危機対応社会のインテリジェンス戦略(2006年)」、「世界のペイメントカード(2004年)」、「これからのITマネジメント戦略(1999年)」