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米IBMのDaniel Sabbah氏
米IBMのDaniel Sabbah氏

 米IBMが米Rational Softwareを買収して6年。その間,Rationalブランドの製品や方法論はソフトウエアの開発生産性や品質を個人レベルからチーム,さらに組織としての向上を狙うべく大きく変貌を遂げている。そのための新たなプラットフォームが日本で2009年3月から投入を始めた「Jazz」だ。ラショナル事業を統括するDaniel Sabbah氏に狙いを聞いた。(聞き手は,田中 淳=ITpro)

Jazzの日本での出荷と経済危機のタイミングが重なった。

 経済危機は世界各国で大きな影響を与えている。米国の企業ではコスト削減の圧力が顕著だ。労働コストの削減に加えて,1ドル単位で支出を管理しようとしている。

 Jazzはこうした時期だからこそ,威力を発揮すると考えている。まず,効率化を促進するのに役立つ。要求分析から設計,開発,検証,提供に至るソフトウエア・デリバリの一連の作業を効率よく進められる。

 加えて,ソフトウエア製品やサービスをタイミングよく市場に投入する(タイム・トゥ・マーケット),製品やサービスをビジネス・ニーズに合致させる,といった役割も果たす。こうしたニーズは以前からあるが,現在のような経済危機だからこそ,余計に求められている。

なぜJazzが効率化やタイム・トゥ・マーケットに役立つのか。

 Jazzは組織的かつビジネスの視点から,ソフトウエア・デリバリの生産性を上げることを目的としたプラットフォームだからだ。

 これまでソフトウエア開発をはじめとするソフトウエア・デリバリの活動は,必ずしも「ビジネス・プロセス」として,とらえられていなかった。基本的に,個人の活動の集合とみなされていた。このため,生産性を向上するという場合も,個人の生産性に焦点を当てることが大半だった。

 Jazzは個人ではなく,組織としての生産性や品質の向上を狙っている。その際に,一連の活動をビジネス・プロセスと見なすのがポイントだ。

「パグの数」ではなく「市場参入に要する期間」が指標に

 ソフトウエア開発で生産性や品質を測るために使う指標は,「数百万行のプログラム・コードに,バグ(不具合)がいくつあるか」といったものがほとんどだ。ソフトウエア・デリバリをビジネス・プロセスとみなすと,その目標は「いかにバグのないソフトウエアを書くか」ではなく,「いかにエンドユーザーや消費者の要求を満たすか」となる。例えば,「タイム・トゥ・マーケットを適切に実現できたか」といった指標を使うわけだ。

 Jazzは,ソフトウエア・デリバリの活動をビジネス・プロセスとしてとらえ,目標と現在の状況を比較しつつ,作業を反復させながら継続的に進めるためのプラットフォームだ。各フェーズで,様々な見地を持つ人たちが必要に応じてコラボレーションできる。加えて,ビジネス・プロセスとしてとらえると原則(ルール)が適用可能になるので,作業の多くを自動化できる。

 プロセスを通じて収集した情報を基に,必要に応じて動的にレポートを作成する機能も提供する。リスクの発生を警戒するためのレポートを作成する,コンプライアンス(法令順守)に関する統計をまとめる,といったソフトウエア・デリバリにかかわるリスク・マネジメントにも役立つ。

 これらの機能がソフトウエア・デリバリの作業効率や品質の向上につながる。副次的な効果として,ソフトウエア・デリバリに関する一連の作業のトレーサビリティを確保できることもある。これまでは,こうした活動の状況を記録するには,意識的に文書を作成する必要があった。そのやり方では,どうしても情報の損失を招く。Jazzではプロセスにのっとってかなりの部分を自動化して作業を進めるので,利用者が意識せずに作業状況に関する情報を収集・蓄積できる。

 当初Jazzは,3つの製品としてリリースした(本誌注:日本では2009年3月に出荷)。プロジェクト・チームによる作業管理や構成管理,ビルド管理を支援する「Rational Team Concert」,要求定義を支援する「Rational Requirement Composer」,テスト結果を管理する「Rational Quality Manager」だ。

 これらをJazzのプラットフォームへのプラグインとして提供している。Jazzプラットフォームの仕様はオープンなので,サードパーティーがプラグインを作成することもできる。