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[前編]フェムトセルの世界的な普及を目指す,固定通信事業者も興味

携帯電話事業者が家庭などに設置する小型の基地局「フェムトセル」の商用サービスが世界各地で始まりつつある。この動きをサポートしているのが,通信事業者や通信機器ベンダー,家電メーカーが参加する業界団体のフェムト・フォーラムだ。フェムトセルの現在の状況と今後の可能性について,同フォーラム議長のサイモン・サウンダース氏に聞いた。

フェムト・フォーラムの活動内容を教えてほしい。

 フェムトセルの世界的な普及を目的に,大きく三つの分野で活動している。

 まず一番目がフェムトセルのコンセプトを,携帯電話事業者や一般ユーザーにプロモートすることだ。フェムトセルは新しい技術なので,一般ユーザーはもちろん,携帯電話事業者がまだ知らないケースがある。

 二番目の分野は,標準化を推進すること。我々自身が標準化を決めるのではなく,3GPPや3GPP2,ブロードバンド・フォーラムといった既存の標準化団体に,フェムトセルの標準化を推進するように働きかける。

 最後は,フェムトセルの巨大なエコシステムを作ることだ。フェムトセルの実現には半導体やソフトウエア,管理システム,ゲートウエイなど多くの要素が必要になる。

 三つの分野の活動は,それぞれ順調に進んでている。例えば2008年12月には3GPPで,フェムトセルの最初の標準が固まった(編集部注:インタビューの後,3GPPが最初のフェムトセル標準を公開したと発表した)。標準化作業開始からわずか9カ月で完了しており,記録的なスピードと言える。

 携帯電話ネットワークを構築するうえで事業者が採用するベンダーは,1社か2社程度が普通だ。しかしフェムトセルでは事業者は,5~10社の機器を採用し,一般ユーザーが機能やサイズや形によってフェムトセルを選べるようにしたいと考えている。このような体制は,相互運用性を担保した標準が固まって初めて可能になる。またベンダーは市場が小さな段階でも,世界の広い地域の事業者に販売することで,リスクを回避できる。

3GPPで固まった標準の中身は,具体的にはどのようなものか。

サイモン・サウンダース 氏
写真:的野 弘路

 W-CDMAでフェムトセルを使う際のネットワーク・アーキテクチャだ。コア・ネットワークの前にゲートウエイを設置し,フェムトセルとつなぐ形が一つの標準に決まった。2008年にこの作業を始めた当時は,ベンダーごとに15種類もの接続方法があった。これでは採用する携帯電話事業者にとってあまりにも多すぎる。少なくとも2~3タイプの接続方法にしたいという意見が寄せられていた。

 今回の標準のもう一つの重要な側面は,フェムトセル自身がマネージメント機能を持つように規定した点だ。これによってフェムトセルと屋外の基地局の干渉を回避し,屋内のユーザーに質の高いサービスを提供できるようになった。

現在のフェムト・フォーラムの加入団体数は。

 全部で105の団体が加盟している。そのうち通信事業者は42社で,合計すると約13億加入者に達する。地域は全世界にまたがり,採用技術は2Gから,W-CDMAやCDMA2000などの3G,そしてWiMAXまでと幅広い。

 フェムトセルはモバイルの技術であるため,通常は携帯電話事業者がサービスを提供する。しかし最近では固定通信事業者も興味を持ち始めている。例えば英BTやCATV事業者の米コムキャストがフェムトセルを活用して,自社のサービスとモバイル・サービスを組み合わせる形を検討している。

通信事業者以外にはどんな企業が参加しているのか。

 半導体メーカーから家電メーカーまで幅広い分野の企業が参加している。最近,その両者を代表する企業が,新たにフェムト・フォーラムに加入した。

 半導体分野では米クアルコム,家電の分野ではソニーだ。これはフェムトセルの可能性が,様々な分野の企業に浸透してきた証だろう。

フェムト・フォーラム 議長
サイモン・サウンダース氏
実業界と学界の両エリアでワイヤレス・コミュニケーションの専門家としてキャリアを積む。英ブルネル大学にて1988年に理学士,1991年に博士号を取得。ブルネル大学でマイクロ波関連の研究員を勤める一方で,英フィリップス・テレコムで公共保安用デジタル移動通信システムであるTETRA技術の標準化などを担当。1995年には米モトローラのGSM研究グループに勤務する。現在,英サリー大学の客員教授,フェムト・フォーラムの初代議長を務める。2007年には英国の規制当局Ofcomの周波数関連の顧問委員に就任したほか,英BBCや英O2,英BTなど幅広い企業のコンサルタントも勤めている。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2009年3月23日)